見出し画像

ヤなことそっとミュートの楽曲 個人的ベスト15

 音楽好きの知人との会話で「どんなグループであれ、捨て曲なし、全曲良曲なんてことはない」という話をした記憶があります。どれだけ好きでも、趣味に合わない曲、平凡で聴きどころのない曲がいくらかはあるものだと。
 果たして、捨て曲なし、全曲良曲のグループはあるものか。僕の場合、それにもっとも近いのが「ヤなことそっとミュート」なのです。アイドルもバンドもソロアーティストもボカロも、全部ひっくるめて、ヤナミューが一番。全曲好き。
 はじめは、個人的に好きな曲ベスト10を語るつもりでした。しかし、いざ書き出してみると、とても10曲では収まらない。15曲でもまったく収まってはいないんですが、これ以上長くなっても仕方ないので、泣く泣く切りました。
 順番はランク付けではありません。思いついた順。では以下、オタクの暑苦しい語りにお付き合いください。

「カナデルハ」
 まず一曲挙げろと言われれば、これ。初めてヤナミューを見たライブ映像にて「この曲やべえ!」となったのが、ヤナミューにはまるきっかけだったのですから。バンドのカバー曲だということは後に知りました。原曲も聞きましたが、自分としては断然ヤナミューヴァージョン。イントロが鳴った瞬間「まずい! モッシュ来る!」となります。中央あたりにいれば避けようはありませんが「もういいや!」とモッシュに身をゆだねることの心地よさと言ったら。不穏な発言だ、と分かったうえで書きますが、ラストライブ、「カナデルハ」で前方に突撃しない自信はありません。個人的に(特になでしこさんの)「観客全員ブッ〇す!」という殺意すら感じさせるパフォーマンスがヤナミューの好きなところですが、それがもっとも感じられる曲でしょう。

「Lily」
 ヤなことそっとミュートの出世曲であり、代表曲でもあることに異論のある人はいないでしょう。ハイテンポなロックでありながら、漂うその繊細さはヤナミューならでは。前奏の美しさは屈指。間奏のギターソロはライブではなかなか再現ができていませんでしたが、途中から原曲に拘らずギタリストの個性を爆発させることで原曲以上の迫力を生み出しているように思います(馬場庫太郎さんありがとう)。加えて、MVの美しさも歴代屈指。また、「まにまにまにまに、まにちゃーん!」のコールも大好き。ラストライブ、コールしない自信は以下略。

「ラング」
 ヤなことそっとミュートで好きな曲を三曲選べ、と言われたら、先の二曲に加え僕は「ラング」を選ぶでしょう。美しいメロディー、ソリッドなギター、そして、ヤナミューにしか出せないであろう儚さが同居した――こういう表現は大袈裟で好みではありませんが――神曲、と言いたくなる一曲。音源で聞いたときも衝撃でしたが、圧巻はフィロソフィーのダンスとのツーマンで披露したバンドセットでした。そのカッコよさ、迫力に度肝を抜かれ、その日の特典会では、言おうとしていたことをすべてすっ飛ばし「ラングやばい、とにかくラングすごかった」を連呼したものです。

「Just Breathe」
 とにかくカッコいい。繊細さと爆音とハイスピードが一体となった曲。個人的に「もっともヤなことそっとミュートらしい曲はどれか」と問われれば、この曲を挙げるかもしれません。ヤナミュー的王道ロック。初めて公式によってライブ映像がアップされた三曲のうちのひとつ、という点もそう思わせる要因のひとつでしょう。二番サビ前のイエッタイガー、なでしこさんの「ただひたすら」、ラスサビ前のドラムロールなど聞きどころもたっぷり。文句なしの良曲。

「天気雨と世界のバラード」
 ハイテンポな曲で叫んだりパワーバラードでしかめ顔を作ったり、とシリアスな表情になることが多いヤナミューの楽曲の中で、数少ない「笑顔多め」の曲です。個人的には「ヤナミューなりのアイドル曲」であろうと。他に「orange」「GHOST WORLD」なども笑顔多めですが、どれもアクセントとしていい味を出していて、とても好き。特に「天気雨と世界のバラード」の多幸感は最上。また、梅田クアトロでのバンドセットで聞いたとき「こういう曲だったのか!」と慄いた曲でもあります。音の厚み、メリハリが素晴らしい一曲。ラストライブで、僕は案外「天気雨と世界のバラード」で泣くのかもしれません。

「Done」
 ヤなことそっとミュートのライブで最後に締めとして聞きたい曲はどれか。まず「No Known」か「Done」かで二分されることでしょう。「No Known」を落とすなんてありえないと思いながらも、どっちがより好きかと問われれば僕は「Done」派なんです。ライブも終わりで、半ばヘロヘロになりながら間宮まにが絞り出す「届きそうなトゥモロー」からウォウォウォーの大合唱は、汗と涙とヤナミューへの愛が交じり合った最高のフロア。大好きな曲です。

「No Regret」
 「BUBBLE」ツアーでヤナミューを知った僕にとって「Any」や「No Regret」が「はじめて体験するヤナミューの新曲」でした。まさにヤナミューらしい快速、音重のロックチューン。しかし僕個人としてはこの曲は「南一花曲」です。それまでは低音ハモでヤナミューの歌を下支えする存在であった南一花さんが、初めてサビでそのカッコいい歌声をぶっ放した曲。彼女の歌唱の進化は、後に「フィラメント」のサビにもつながります。南一花の魅力を開花させてくれた曲として、非常に思い入れの深い一曲です。

「Stain」
 ヤなことそっとミュートにおいてもっとも美しいバラードはどれか。一番に思いつくのは「Stain」です。常に真っ白な衣装、真っ白なマイク、真っ白な心で歌うヤなことそっとミュートの、背景すら雪で真っ白にしたような一曲。それを汚す一点の赤。振付すら余分である完璧な一曲です。メンバーが口をそろえて「大変だった」というMVですが、その甲斐あって、楽曲の世界観を表す素晴らしい仕上がりになっています。本当に、これがわずか数万回しか再生されていないなんて、世界のバグですよ。

「Nostalgia」
 もっとも美しいバラードとして「Stain」を挙げた瞬間「いやいや『Nostalgia』もあるだろ!」と脳内で抗議の声が上がります。好きすぎて、どちらも削れませんでした。なんといっても忘れられないのは、Zeppワンマンでの間宮まにの涙でしょう。曲中でメンバーが涙したのは、このときだけではないでしょうか。「最後と知っていれば僕は泣いただろうか」その歌詞は、ラストライブと重なります。ここで泣かない自信があるヤナミューファンは誰もいないでしょう。バンドバージョンの美しく残る余韻が忘れがたい一曲でもあります。

「HOLY GRAiL」
 強さと儚さが同居するヤなことそっとミュートにおいて、もっとも美しい儚さを感じる曲として、僕は「HOLY GRAiL」を挙げます。そして、もっとも儚さを体現するメンバーであったレナちゃんの曲である、とも。MVのイメージに引っ張られているきらいもあるでしょうが、それでも僕はこの曲を聞くとき、控えめな笑顔で世界の平和を、ファンの幸せを願うレナちゃんの顔が浮かびます。

「Morning」
 分かってるんです。「BUBBLE」から選びすぎだって。でも、外せないでしょう。好きなんですよ、メンバーと一緒に走り出す振りをするところが。間宮さんが「みんなで手拍子!」と言って全員で手拍子をするところが(細かいところですが「クラップ!」ではなく「手拍子!」である点は偏愛)。ラスサビで全員で一緒に手を振るところも欠かせない。ヤナミューのライブになくてはならない一曲です。

「Sputnik Note」
 それでもまだ「BUBBLE」から選びます。だって、大好きだから。抑えめのAメロからサビで一気に爆発するところがたまらない。「行こうと思えばどこへでも行ける」嫌なことはミュートし耳を塞ぐ少女たちのその叫びは、胸に刺さります。ステージを飛び出してどこへでも行けてしまいそうな輝きが「Sputnik Note」にはあります。

「雨の栞」
 おそらく、唯一ではないでしょうか。ヤナミューの楽曲でアコギが使われているのは。なのに、どこまでもヤナミューらしい。毛色が違う楽曲であるのにらしさを失わないというヤナミューの懐の深さが分かります。そして特筆すべきは、サビの力強さと美しさ。タイトルもぴったり。雨の日、傘を差しながらこの曲を聞いていると、エンドレスリピートでそのままどこまで歩いていけそうな気持ちになります。

「遮塔の東」
 結成から五年、常にオルタナティブな楽曲を発表し続けたヤなことそっとミュートでしかたどり着けない極北が、その積み重ねの成果が「遮塔の東」です。「美しい」とか「カッコいい」といった言葉では片づけられない、パワーバラード。ヤナミュー以外に、この曲を歌えるグループがあるとは思えない。人の好みを超越した尊さがこの曲にはあります。不満を言うなら、ただひとつ。もっとこの曲を、できればバンドセットでたくさん、聞きたかった。それ一点のみです。

「am I」
 十五番目の一曲、悩みに悩んで結局、やはり「BUBBLE」からです。なぜこの曲を選んだのか。理由は一点のみ。「梅田クアトロのバンドセットライブで聞いた『am I』がえげつなさすぎで忘れられないから」です。音源だけの評価なら、入らなかったかもしれません。しかしこの曲は、とにかくバンドセットがやばい。原曲よりスピードを落とし、ねちっこく重低音を絡ませるその迫力は唯一無二。どんなロックバンドのパワーバラードにも負けません。本当に、最高のバンドヴァージョンのアレンジでした。僕は一生、あの衝撃を忘れないでしょう。

 以上、15曲。「orenge」も「燃えるパシフロラ」も「No Known」も「ルーブルの空」も「クローサー」も「Reflection」も「AWAKE」も「Any」も「Blue」も「レイライン」も「ライカライロ」も「Sing It Out」も「フィラメント」も「Passenger」も入らないなんてありえねえだろ、と思うんですが、入らないんだから仕方ない。本当に、好きな曲だらけ。
 特に「BUBBLE」は好きな曲しかなくて、そのまま全曲ランクインさせても不満がないぐらい。反対に「Beyond The Blue」はあまり入れられませんでしたが、これは仕方がないのかな、とも。曲の良し悪しというより、個人的な思い入れなので。やはり、ライブで何度も聞いた曲ほど思い入れが強くなるもの。加えて言うなら、ヤナミューのライブの思い出はモッシュやコールと分かちがたく結びついています。それらに制限ができて以降の曲は、なかなか入らなかった。逆に言えば、存分に暴れられる環境でもっと「Beyond The Blue」の曲を聞きたかった、ということでもあります。
 僕は本当に、ヤなことそっとミュートの音楽が大好きです。ヤなことそっとミュートは、6月26日をもって現体制を終了します。その後、ヤナミューがどうなるかは分かりません。しかし、二点、まちがいないと断言できることがあります。

 ひとつ。僕は一生、ヤナミューのライブでの感動を忘れないということ。
 もうひとつ。僕は死ぬまで、ヤナミューの音楽を聴き続けるということ。

 そういう音楽と出会えたことは「幸せ」という以外の言葉では表せられません。メンバーに、運営スタッフに、楽曲制作者に、心から感謝します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?