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マジパン思い出話第十二回 六人時代へ、そして上京

 実は僕は、この三周年ワンマンライブのチケットを買っていませんでした。五月に上京することが決まっていて、引っ越し費用で金銭的余裕がなかったこと、オタ活は上京してからゆっくりすればいいと思っていたことが理由です。
 しかし、どうにも胸騒ぎが止みませんでした。特になにかを予測していたわけではありません。しかし、自分はその場に居合わせるべき、という気がしてなりませんでした。
 結局、ワンマン当日の高速バスに飛び乗り、当日券でライブを見ることとなります(昼の決起集会は間に合いませんでした)。当日券は売り切れずに残っているのか、交通事故等でバスが遅れないか、やきもきしながらバスに乗っていたのをよく覚えています。
 会場に着き、なんとかチケットは購入できたものの、会場はパンパン。ライブは期待通りの出来で、まさに四人時代の集大成とも言えるパフォーマンスでした。特に印象に残ったのは「ハルイロ」でのピンクサイリウムです。このころはまだ定着しておらず、ファンによるTwitterでの呼びかけで自然発生的にピンクに染まったと記憶しています。

 そして、アンコール。会場の照明が落ち、映像が流れ始めました。四人が走っていく映像とともに、ワンマンへの意気込み、ファンへの感謝などをメンバー一人一人が語ります。
 その最後、再び四人が走る後姿の映像になります。映像の横の部分の、隠しになっていたところが見えてきました。
(四人のあとを誰かが追いかけている!)
 会場は大きくざわつきます。
(新メンバーだ!!)

 どよめきが収まらぬ中、Tシャツ姿のメンバーがステージに現れ、「Melty Kiss」のイントロが流れます。四人じゃない、六人だ! やっぱり新メンバーだ! 正直、当日券ですのでフロアのかなり後方にいたため、ステージの様子はよく分かりませんでした。というより、驚きと混乱でよく覚えていない、というのが正直なところです。
 「Melty Kiss」が終わり、お揃いのTシャツ姿の新メンバー二人は挨拶をします。こうして「3rd Anniversary One Man Live〜新しい靴で、大好きなキミのもとへ〜」にて、吉澤悠華、吉田優良里の二人が、マジカル・パンチラインの新メンバーとして加わったのでした。

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 ライブ終了後は、特典会がありました。新メンバーの二人は、握手会のみ。当日券で入ったためすでにグッズは売り切れており、握手二周しか選択肢がありませんでした。このときの二人の印象は、吉田さんは最年少の元気で明るいちびっ子、吉澤さんは、色白でふわふわ系のおしとやかな女の子、という感じでした(このころはまだ「おしとやか」に見えていたのです)。
 この日、合わせてよみうりランドらんらんホールでの無銭ライブ、6月に六人体制でのニューシングルリリース、7月には初の東阪ツアーも発表されました。会場では、新聞の号外風の新メンバー加入のお知らせが配られます。そこには、新メンバーの挨拶とともに、四人のオリジナルメンバーからの言葉も書かれていました。中でも胸を打ったのは、清水さんのコメントでしょう。「今一番選んではいけない選択は、足を止めること」本当に素敵な言葉だと思います。
 また、Kマネからの挨拶も掲載されていました。印象に残っているのは「賛否両論あるのは分かっている」という言葉でした。
 そう、やはり、賛否はあったのです。佐藤さんが卒業したとき「この四人でやっていく」と決めたではないか。四人でのあの苦闘の日々はなんだったのか。新メンバーが入るというのは、どのグループでも賛否あるものでしょう。しかし、特にマジパンはそれが強かったように思います。それだけ、五人時代、四人時代に思いいれの強いファンが多かった、ということでしょう。

 どういう経緯で新メンバーが入ったのか。メンバーはそれをどう思っていたのか。ここから先は、完全に推測でしかないと断ったうえで、少し語ってみようと思います。
 あくまで自分の考えですが、前稿で触れた解散ドッキリのあと、すぐに新メンバー加入の話は出ていたのではないでしょうか。でなければ、オーディションをして、メンバーを決めて、一曲だけとはいえレッスンをして、2月のお披露目に間に合わないからです。
 おそらく、発案者はドリーミュージックでしょう(沖口さんも「初めてお話を聞いたときは戸惑った」と書いていることから、メンバー発の話でないことは分かります)。自分たちが新たにプロデュースを引き受けるにあたり、新しい色を出したい、勢いをつけたい、そのために新メンバーを入れるというのは妥当な考えです。
 ただ、ときおりアイドル番組等で見られるような、大人が勝手に決めた、メンバーにも秘密にした加入ではないのも明らかでしょう。なぜなら、メンバー自身が「みんなで話し合い、納得したうえで決めた」と語っているからです。大人の都合の押し付けではなく、メンバーの話を聞き決めてくれたことには、感謝しかありません。
 ただ、当たり前のことですが、全員がすっきり納得して決めたわけではない、とも思っています。再度「推測でしかない」と断ったうえで書きますが、もっとも納得していなかったのは浅野さんではないでしょうか。とはいえ、彼女の性格からすれば無理もないことです。よく言えば一途、悪く言えば頑固、五人、そして四人のマジパンに、もっとも拘りを持っていたのは彼女でしょうから。特に最初のころは、新メンバー二人と少し距離があるように見えました。小山さんは、よくも悪くも切り替えの早いタイプで「決まったからにはそれを受け入れて頑張ろう」と考えているようでした。沖口さんは、おそらく浅野さんと同じぐらい割り切れない思いを抱えつつ、最年長者としての冷静な考えで「新メンバーを受け入れ頑張っていく」と決意していたように思います。
 そういう意味で、もっとも新メンバーに対し心を砕いていたのは、清水さんでしょう。四人の中で唯一の長女であるという面もあったのかもしれません。先ほどの動画でも、新メンバーに積極的に声をかけていました。後に二人が「ひまわりチルドレン」と呼ばれるようになったのも自然な流れでしょう。彼女が一番、オリジナルメンバーと新メンバー、ファンと新メンバーの間の融和を心がけていたように思います。浅野さんとの距離が縮まり、二人がグループに馴染み、ファンが二人を受け入れるのに、清水さんが果たした役割は非常に大きなものがあったのではないでしょうか。

 そうして迎えた三月、よみうりランドらんらんホールにて「「マジカル・パンチライン大感謝祭~ともだち1000人出来るかな?無銭ライブ~」が開催されます。
 しかし、結論から先に書くと、このライブはマジカル・パンチラインにとって、非常に厳しい結果となりました。
 自分も行きたい気持ちはあったのですが、先述のとおりワンマンライブすらかなり無理をして行っている状況でしたので、断念しました。事前にネットでいろいろ情報をチェックしていたのですが、どうにも芳しい話が聞こえてきません。そもそもよみうりランドは交通の便が悪く、いくら無銭とはいえふらっと行ける距離ではありません。また、同じ日に別のアイドルグループが大きな会場でやはり無銭ライブを開くという情報もありました。さらに最悪なことに、当日は雨。
 結局、1000人入る会場を、半分すら埋めることができませんでした。
 沖口さんは、後々までこの悔しさを語っています。彼女の頑張りの原動力のうちのいくらかは、この日の悔しさが源にあるのでしょう。
 しかし、反対にポジティブなこともありました。それが、この日初披露された新曲「今日がまだ蒼くても」でした。ライブのサブタイトルとなっていたその言葉を僕は「おそらく新曲のタイトルだろう」と予想していました。と同時に「素敵な言葉だ、これは名曲なのでは」とも。
 その考えは、予想以上に大当たりだった、と言えるのではないでしょうか。マジパンの歌姫、小山リーナのボーカルを前面に押し出した、エモーショナルな一曲。前稿にて僕は「マジパンの個性はどこへ行ったのか」と書きました。ドリーミュージックへの移籍が決まって半年、ついに「新しいマジパンの個性」が活かされた楽曲こそ「今日がまだ蒼くても」である、と僕は思います。
 魔法要素はなくなりました。が、「今日がまだ蒼くても」は、マジカル・パンチラインが歌ってこそ、の曲です。メンバーの歌声やビジュアルなどの素材を、最大限生かそうというクリエイターの意図がはっきり見えました。また、ここまで述べてきたとおり波乱万丈の歴史を経てきたマジパンだからこそ「今日がまだ蒼くても」という言葉が、その歌詞が胸に染みます。
 新曲として、対バンライブで「戦える」曲を手にした。それは、グループにとって非常に大きな一歩だったのではないでしょうか。

 四月を迎え、浅野さんは高校を、吉澤さんは中学校を卒業します。そして僕が仕事の都合で東京へ引っ越したのが、五月末のことでした。
 上京して最初の現場はマジパン、と決めていました。6月2日、池袋マルイでのリリースイベント。全握ではメンバーに「上京したよ」ということを伝えようと思っていたのですが、沖口さんが体調不良で特典会にいなかったのが残念でした。南大沢でのリリイベでは「マジ☆マジ☆ランデブー」が初披露されました。先輩が作る花道を堂々と歌い上げ、元気いっぱいにパフォーマンスする吉田さんの魅力を実感した思い出のイベントでもあります。しかも奇遇なことに、ランチェキで吉田さんを引き、初めて吉田さんとツーショットを撮りました。
 6月18日、フラゲ日には懐かしのよしもと∞ホールにて、フリックオンTVの公開収録がありました。三組出演のバラエティ番組だったのですが、バラエティ的振る舞いではマジパンが図抜けていたのをよく覚えています。特に、清水さんが大活躍でした(でもたしかあれ、三回に分けて放送するはずが、三回目結局流れてませんよね??)。
 このとき、推しである浅野さんプラス、当日活躍した清水さんともツーショットを撮ることに。何気なく名乗ると「知ってるよー」との答えが! こうして、メンバーで三人目の認知を獲得することができたのでした。
 翌6月19日、リリース日はタワーレコード新宿でのリリースイベントでした。金欠もいいところだったので迷ったのですが「リリース日は行かねば!」と行くことに。今から思えば、本当に行ってよかったなと思います。過去を振り返っても、一、二のレベルで印象に残るリリースイベントでした。

 リリース日ということで、メンバーの気合もバチバチに入っていました。特に、最後に歌った「今日がまだ蒼くても」は圧巻。ここまでの歩みを見守ってきた身からすると、涙が零れそうになりました。
 涙といえば、このとき吉澤さんの目もまた潤んでいました。新メンバーにとっては、自分たちがジャケットに載った初のCDです。思うところも多くあったのでしょう。
 リリイベの締めは、池袋サンシャインシティー噴水広場でした。言わずと知れた、マジパンメジャーデビューの聖地です。この日はiPopfesで、複数のメジャーアイドルが出演していたにも関わらず、なんと一番多くのCDを売り上げたそうです! しかし、ライブも特典会も大盛り上がりでしたから、それも納得でした。

 こうして強力な楽曲を手にし、新メンバーも馴染み、パフォーマンスも日に日に充実していくマジカル・パンチラインは、東阪ツアー、そして夏フェスへと殴り込みをかけるのです。


※ついに上京し、毎週末のように現場へ行くオタクになってしまったので、この時点でのドルオタ度80%

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