お母さんがいないと遊べない犬
我が家の愛犬は5歳のトイプードルで、名前を甘夏という。
名前の由来は、そこに甘夏柑があったから。
甘夏はダイソーのドーナッツ型のおもちゃが、マイブームでかなり夢中で遊ぶ。すぐにボロボロにしてしまうので、ダイソーの通販で大量購入した。
だからといって、ずーと遊んでいるわけではない。私が、床に着地したときのみ遊ぶのである。私に身を寄せながらカミカミする。思い出したように時々鼻で押して、私に投げてーと要求してくる。
最初は、これは投げて遊ぶものだろうかと疑問に思ったが、投げるとぴょんぴょん跳ねるので、喜んで追いかけていく。
楽しそうだから良しとした。
私の膝から転がして、自分で取って来たりもする。ほとんど1人じゃなくて1匹遊びである。
ならば、私がいなくても遊べばいいじゃないのと思うがそうはいかないらしい。
私が、家事やら何やらしていると、ずっと目で追いながら座るのを待っているのである。私は、常にストーカーまがいの視線に晒されている。そして、座るやいなや待ってましたーとばかりに飛んでくる。
嬉しくてくるっと回転することもある。そうして、ドーナッツを持ってくる。
これが、他の家族ではダメなのである。他の家族とも遊ぶのだが、それも私が床に座っているときに限られている。
なんと厄介な犬だろうか。
よく、ペットの指南書には留守番のときは、寂しくないようにおもちゃを用意しようと書かれているが、甘夏の場合は全く意味をなさない。
お母さんがいなくても遊べるようになるといいのに…。
お母さんである私は常日頃そう思っていた。だって想像してください。待っている可愛い犬がいると思うとついつい家事が手早になってしまうのだ。
ところが、ある日ふと思った。
私という特になんでもない存在をこんなに貴重視してくれる生命体がいてくれる。なんと嬉しいことか。
そう思うとたまらなく愛おしい。
待てよ。
こんなに私を貴重視してもらった経験、他にもあったはずだぞ。
そうそう、私は実家の両親に想いを馳せた。
両親は遠く離れた故郷で暮らしている。すでに父は、先日96、母は93の齢である。
今は、コロナで帰省できないでいるが、帰省するとめちゃくちゃ喜んでくれる。
そういう存在ってありがたいよね。
私が特に親孝行した訳でも何をしたわけでもないのに。90を過ぎてもまだ、私のために何かしてくれようとしてくれる。
ひたすら、私の幸せを願ってくれる。
私は、ただ存在しているだけなのに。
それを無条件に喜んでくれる…。
犬と両親は横並びにはできないが、愛犬を巡って、親のありがたさまで、呼び起こされた。
うん。甘夏よ、お前の存在もでかいよ。
今日も飽きるまでとことん遊びに付き合うことにしょう。
ボクが、お母さんと遊んであげてるんだけどなぁ。
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