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路上日記 その㉑ ちびっこ夜王 ~変人・奇人・狂人ファイル~ (全文無料)

17歳から路上ライブを始めた。
昼間や夕方にやることもあったけど、大抵は夜。
夜中ともなれば、終電をなくした人、水商売の人、道を極めてる人、酔っぱらいに、怪しい人、色んな人が僕の前を通り過ぎ、時に僕の前に立ち止まった。

今日はそこで出会った人達の話をしようと思う。


その㉑ ちびっこ夜王

もうお馴染みのS駅で歌っていた時の話。

初めて出会った時、彼は中学生だった。
小柄で可愛い顔をした男の子だったが、どこかギラギラした空気を出していた。
短い茶色気味の髪をツンツンに立てて僕に話かけてきた彼は、天パで真っ黒な髪をした相棒を連れていた。
二人共、安全靴を履き、どこか濁った目をしていて、ここには書けないような悪さもしているらしかった。
男なら誰もが暴力に憧れる時期がある。僕自身もそうだったのでそういう時期なのかと思って接していた。

実際、その数年後に会った彼は、真っ黒に日焼けしてスーツを着て、髪は金髪に近い茶髪になっていた。
話をすると、「夜王になりたいんですよ」と言う。
「なんだか漠然としてるなぁ」とは思ったものの、ケンカに明け暮れる日々より、目標を持って生きる日々のほうがいいだろう。
「その人がその人らしくいてほしい」という考えの僕なので、「頑張って」と言って別れた。

あの日のちびっこ夜王は、新宿歌舞伎町で本物の男、本当に夜王になれているのだろうか。

夜の街が好きだ。人の欲にまみれた夜の街で、それでも自分らしく生きていきたい。

~天使のような悪魔の笑顔 この街に溢れている~
(近藤真彦「ミッドナイト・シャッフル」より)


今回、話してきたことは全て実話であるが、思い出しながら書いている為、細部まで正確ではないことを最後に付け加えておきたい。
そして、僕自身ももちろん奇人・変人・狂人であるが、そんな僕の話はまた別の機会に。

路上ミュージシャン hiro’



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