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路上日記 その㉗ ストリートドワーフ ~変人・奇人・狂人ファイル~ (全文無料)

17歳から路上ライブを始めた。
昼間や夕方にやることもあったけど、大抵は夜。
夜中ともなれば、終電をなくした人、水商売の人、道を極めてる人、酔っぱらいに、怪しい人、色んな人が僕の前を通り過ぎ、時に僕の前に立ち止まった。

今日はそこで出会った人達の話をしようと思う。


その㉗ ストリートドワーフ

ずんぐりむっくりという言葉がこれほどしっくりくる人物はそうそういないだろう。
そんな体型、そして、黒の短髪にくりっとした目の中年男性がストリートドワーフSちゃんである。
ちなみに髭は生やしていない。

最近も路上で久しぶりに会ったのだが、そもそも知り合ったのはもうどれくらい前だっただろうか。
いつの間にか知り合いになっていて、今も数年に一度は偶然会うという関係だ。

昔は常に大きなサイン帳を持ち歩き、ストリートミュージシャンやラジオDJなどのサインを集めていた。
僕も個人だったりバンドだったりと何度かサインを書いたから、今もその中で僕のサインが眠っているはずだ。

最近はSNSで友達が1000人になったなどと言っていて、タブレットPCも使いこなしていた。
時の流れを感じるなぁ、なんて思いつつ、彼の口元を見れば、何本か歯がなくなっていた。

歯があった時から、きっとSちゃんのほうが年上であるにも関わらず、ついつい敬語を忘れてしまうことがあった。
それはきっとSちゃんの愛らしいキャラクターとその懐の深さによるものだろう。

何曲か歌を聴き、近況などを少し語り、僕のCDを手にSちゃんはまたどこかへと歩いていった。
Sちゃんの歯がさらに抜け、僕の髪が抜け落ちても、変わらずに路上でまた出会いたいと願う。

ファンタジーではないこの世界で、確かなものを胸に僕らは…。

~もう帰る時間だね また明日逢えるかなぁ?~
(hiro’「また明日」より)


今回、話してきたことは全て実話であるが、思い出しながら書いている為、細部まで正確ではないことを最後に付け加えておきたい。
そして、僕自身ももちろん奇人・変人・狂人であるが、そんな僕の話はまた別の機会に。

路上ミュージシャン hiro’

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