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路上日記 その⑰ はじめてのひと ~変人・奇人・狂人ファイル~ (全文無料)

17歳から路上ライブを始めた。
昼間や夕方にやることもあったけど、大抵は夜。
夜中ともなれば、終電をなくした人、水商売の人、道を極めてる人、酔っぱらいに、怪しい人、色んな人が僕の前を通り過ぎ、時に僕の前に立ち止まった。

今日はそこで出会った人達の話をしようと思う。


その⑰ はじめてのひと

17歳で高校生だった頃の話だ。
今でも仲の良い男女混合グループで夕食を食べ、その後、解散するには寂しいという感じで歩いていると大きめの公園に辿り着いた。

そこには路上ミュージシャンがいて、僕は初めてそういった人達と話をした。
とはいっても、世は平成。別に怪しい雰囲気の男とかではない。
というか、そもそも男ですらない。20代の女性二人組だ。
この二人組は実は白衣の天使なのだが、まぁ、その話はまた別の機会にしよう。

そこで話をして一緒に歌ったりもして、路上ライブの気持ち良さを知ってしまった僕は、早速、次の日に親友と二人で路上ライブを行ったのである。
そんな、自分の意思で初めて行った路上ライブで出会ったのが、"はじめてのひと"だ。

彼女は、ひらひらとしたドレスのような服を着て、ちょっと頬を赤らめながら僕達に近づいてきた。
歳は、20代後半から30代前半といったところだろうか。
聞けば、水商売をしているらしく、綺麗な髪をして明るく振る舞っていたが、どこか疲れを感じさせる表情が時折、垣間見えた。

当時の僕らにはレパートリーが数曲しかなかった。
山崎まさよしに、Mr.Children。そんなところだ。
それでも必死に歌った。
歌い終わると彼女は「上手いね~」と褒めてくれた。

拙い僕の歌を本当に上手いと思ってくれたのかはともかく、その言葉を胸に今でも路上へ向かう僕がいる。

きっと、彼女の記憶に僕はいないだろう。
だけど、僕は今でもたまに"はじめてのひと"の事を想う。
どこかで幸せになっていればいいと心から願う。

~君は泣いてるの?それとも笑ってるの? 細い肩が震えてる~
(Mr.Children「車の中でかくれてキスをしよう」より)


今回、話してきたことは全て実話であるが、思い出しながら書いている為、細部まで正確ではないことを最後に付け加えておきたい。
そして、僕自身ももちろん奇人・変人・狂人であるが、そんな僕の話はまた別の機会に。

路上ミュージシャン hiro’

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