空白

たとえば君が、僕のことを好きだったとして、それでも夕焼けが綺麗だとか、今日も月が見えるだとか、流星群を見に行こうだとか、そういうことを言い出すのはきっと僕だろうから。

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陽が沈みかけている時刻、真冬、帰り道、理科の授業のことを話す中学生とすれ違い、中学校の教室、生徒玄関の明かりがまだ点っている午後五時三○分。久しぶりに外を歩いたのだ。冷たい空気、冬の匂いがして、胸がきゅっとならなかった僕の感性の落ち度に、とてつもなく悲しくなったのだ。

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寺山修司が言っていた。人生とは、詩より少し短いものらしい。だとすれば、僕の人生は、コンクリートに咲いた花くらいの、強く短く、君の目にしか止まらないものであってほしいと、思ったのだ。

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