空白

僕の安っぽい人生を、白々しい夏を、差し出した口約束を、盗まれた痛みを、思い出してしまった、駅前のちらちらとするイルミネーションすらも朧気になっていた。僕の周回軌道上にいた君は、いつのまにかそこから外れていて、僕だけが取り残されていた。ふたご座の二つある心臓はひとつにはなれず、死んでしまった君との記憶を反芻、反芻、反芻。君と出会った夏の終わりを思い出しながら、今日も他人に君を重ねて、はやく死にたいと思っている。生きる辛さすら忘れてしまった君を、僕の言葉で毒殺。どうしても、許せないんだ。

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