空白

たしかあの日は天気予報を見ていなかった。暑くなく、雨が降らなければいいと思っていた。実のところは曇りだった。
時間に遅れた僕を君は怒らなくて、笑いながらおはようって言ったんだ。謝る隙がなかった。
乾いた道路の水たまりの跡、一体誰が飲み干したんだ。
喉の奥にまとわりつく君の声はなくなっていた。
君が置いて行ったものは僕も置いてきた。というより、失くしてしまったかもしれない。

ところで、大金を叩いて買った新しい服は恋ではなかったんだ。
やっぱりうまく中身を出せないんだ。

もし僕が今、もう一度君とはじめて出会えたら、僕はどういう想いを思い出すかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?