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【取材した怪談話137】チったん

女性Tさんに、文章でご提供いただいた話です。

・・・

実家で飼っていた3匹の愛猫のうち、亡くなった<チったん>が私のところへ来た時のお話です。

チったんは、肺と腎臓の疾患、そして乳腺腫瘍まで患っていました。病院に週3回通院し、酸素室で1〜2時間過ごさせ、数日様子を見ていました。

チったんが亡くなる直前の夜まで、私が飲み薬を投与したりとお世話を任されていました。でも通院や薬での治療の甲斐もなく、チったんは天国へと昇って行きました。

チったんは11歳でした。人間でいうと、60歳前後でしょうか。

チったんが亡くなった翌日には、ペット霊園での火葬が決まっていたのですが、母猫であるキーたんは、動かなくなったチったんのそばにピッタリと体をくっつけて寄り添い、チったんの首元には自分の顔を乗せ、何か言いたげな、とても悲しい表情で私の顔を見つめていました。

キーたんも、明日がお別れの日って分かってるんだろうな……

そんなことを考えると、私も余計に辛く、悲しく、涙が止まりませんでした。

チったんを運ぶためのダンボールに、ふかふかのお布団を敷いてあげて、チったんが好きだったオヤツやご飯、お花やオモチャを添えて、寝かせていました。
キーたんはそこでもチったんから離れず、一緒にダンボールに入り、横たわるチったんの傍でただひたすら座っていました。

チったんのお葬式を終えて、お骨も骨壷と、可愛い骨壷袋に入れてもらい、骨になったチったんと一緒に帰宅しました。

チったんが亡くなって、2〜3週間ぐらいが経った頃でしょうか。

夜、布団で眠っていた私の足元に、モゾモゾモゾ……っと何かが勢いよく入ってきたのです。

私は何が入ってきたのかも分からず、その正体も分からずで、少しだけ恐怖を感じました。

その何かは、私の両足の間でしばらく動きを止めます。その間も私は心臓がバックンバックンと大きく動くのを感じながら、(なんだこれ、何がソコに居るんだ?)と思っていた時です。

その何かが急に、ゆっくりとモゾモゾと動いては止まり、またモゾモゾ、モゾモゾと動いては止まりを繰り返し、私の顔の方へ上がってきたのです。

いやだっ……! 来るなっ! こっちへ来るなっ!
私は恐怖で声も出ず、心の中で唱えていました。
ソレは私の顔の方へと近付いて来て、とうとう姿を現しました。

その姿を見た私は、恐怖が驚きに変わりました。そこに顔を出してきたのは……なんと、亡くなったチったんでした。

久し振りにチったんの顔を見れた私は「チったん……チったん……」と泣きながら、そのチったんの頭や顔、体全体を撫で回しました。

チったんは長毛種だったのですが、その手触りはまさにチったんそのもので、懐かしさを感じながら、チったんのふわふわで柔らかい体をこれでもかと言わんばかりに触りまくりました。

「チったん、一緒にネンネしよう?」
「チったん、ほら、ココにおいで?」
「ココにネンネしてごらん?」

寝ている私の肩の隣り辺りをトントントンと叩くと、チったんは私のその<トントン>に誘導されるように、私の隣りでゴロンと寝転がり、そのまま眠り始めました。

うっとりとした顔で、喉をゴロゴロと鳴らし、スヤスヤ眠るチったんを見て、私もまたウトウトと眠りにつきました。

どれぐらいの時間が経っていたのか分かりませんが、突然、寝ていた私の
右手の人差し指に痛みが走り、右手がグイッ、グイッっと引っ張られたのです。

上体をひねるように体を起こすと、その痛みが走る人差し指にチったんが自分の前肢の爪を引っ掛けてきました。

ニャーカッ! ニャーカッ!

変わった鳴き方をしながら、私に何かを必死に訴えてきました。

ニャーカ……? ニャーカってなんだ……?
少し寝ぼけていた私はそう思いながら、まだ眠たい目をこすりました。その間もずっと、「ニャーカっ」「ニャーカっ」っと鳴き続けるチったん。

そこで私は、ハッとなりました。
もしかしたら、チったんの骨壷が倒れたりしているのかもしれない……
急いで飛び起きて、チったんの骨壷が置いてある部屋へと急ぎました。

けれど、チったんの骨壷は普段どおりに置かれており、何の異常も見当たりませんでした。

何事もなかった光景に私は安心し、それと同時に、「あっ。チったんまだ居るかなっ」っと私は自分の部屋へと急いで戻りました。でも、そこにはもう、チったんの姿はありませんでした。

つい数分前まで居たチったん。初めは「リアルな夢だったのか…」なんて思いました。
そういえば、チったん、爪、引っ掛けてたな……
私はチったんに爪を引っ掛けられていた人差し指を見てみました。

くっきりと、猫の爪が食い込んだような痕が残っていました。

私は再びチったんの骨壷のある部屋へ行き、チったんの頭を撫でるように、
チったんの骨壷を撫でながら「何かを教えてくれようとしてたんだね。チったんからのメッセージ、ちゃんと理解出来なくてごめんね……。でも、教えに来てくれてありがとう」と、チったんにお礼を言いました。

その日を最後に、チったんが私の元へ現れることはありませんでした。

・・・

余談ですが、この出来事のあとに、ある霊媒師さんにこの話を伝えました。

「そう言ったお話はよくありますよ。その猫ちゃんは、霊感が強い猫ちゃんだったんでしょうね」とにっこり微笑みました。

「チったんは私に何を伝えたかったんでしょうか」
「すみません、その猫ちゃんが今ここには居ないので、私にも分かりません」

少し落ち込む私を見た霊媒師さんは、「でも、あなたを何かから守ろうとしてくれていたのは確かです」と言ってくれました。

そう聞いた瞬間、チったんの優しさを感じて、それと同時に、チったんからのメッセージを上手く読み取れなかった自分への悔しさで涙が溢れました。

更に余談になるのですが、その霊媒師さんに私が住んでいる地域を聞かれ、「○○です」と答えた時、霊媒師さんは「あぁ」と少し苦笑いをしながら、「あの辺は結構、ウヨウヨと居ますもんね……」と更に苦笑いをされました。

その霊媒師さんは昔、私の住んでいる家の近くまで、お祓いを頼まれて出向いたことがあったそうなんです。

「住んでいる団地にもたくさん居ますが、その裏にある病院にも気味の悪いぐらいの 集団も居ましたし、あの辺は遥か昔、合戦もあった場所なので、その合戦で亡くなられたと思われる方もたくさん視えましたね」

そんな場所に建っている私の実家は、霊道も通っていれば、「そういった類いのモノの、溜まり場にもなりやすい場所」とも言われました。何より、私自身が憑かれやすく、拾いやすい体質だ」と言われました。

今回のチったんのお話は、私の中では<心が和む霊体験>だと思っていますが、自分でも中途半端に思うこの霊感が幸か不幸なのか……。

この悩みは恐らく、これから先も解決はしないでしょうね(笑)

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