【取材した怪談235】人はねた
文章取材:30代男性
・・・
私は釣りが趣味で、連休となれば仲の良い友人達と夜釣りを楽しんでいました。
その時も深夜1時まで友人2人とI県で夜釣りをし、その後にT県の友人宅まで移動してまた釣りをしよう、ということになりました。夜釣りからの移動は予想以上にキツく、睡魔と疲労に襲われながらもなんとか2時間程でT県に到着しました。
そこで限界を迎えた私達は、近くの公園で車を停めて朝の待ち合わせ時間まで仮眠することにしました。公園には街灯もなく、山に隣接した林の中にポツンとベンチ一つがありました。なんとなく薄気味悪い場所でしたが、そのまま寝落ちしてしまいました。
何時間も運転していた私は凄く眠いのですが、睡眠が浅く何度か目を覚ましていました。そのうち夢の中か現実かは記憶が定かな状態ではなくなりました。
気がつくと、私は寝ているはずがハンドル握って運転している状態になっており、山道国道をひたすら走行していました。
すると突然、フロントガラスの前に真っ黒いスーツと白いワイシャツを着たサラリーマン風の中年男性が飛び出して来ました。
ギャアと大声を出し、ブレーキを踏みつけてクラクションを鳴らす私。
やばい。やばい。
人はねた。
私は手と足がガグガク震えて、ハンドルに頭を抱えて脂汗と半泣き状態になってしまいました。
──やってしまった……。
運転席を降りて確認しようと、ふと助手席と後部座席に座る友達2人をみると、2人とも「???」が頭に浮かんでいるのが分かるほどキョトンとした顔をしています。
友人A「お前どうした?」
私「俺、人をはねたよ。死んでるよ絶対……」
友人A「え?! おまえ運転席で寝てただけだけど……。ここは公園の駐車場だぞ、おまえ大丈夫か?」
友人B「お前がいきなりムクっと起きてクラクションバンバン鳴らしてブレーキガンガン踏み込んでギャアギャア騒ぐから、ビックリして俺達飛び起きたんだぞ」
私「夢か? いや、ぶつかった感触あったし、現実か?」
私はそのまま放心状態になりました。
現実か夢か、正常に判断できるまで時間がかかりました。
冷静になって車を降り、外の様子を見てみると車のボンネットも凹んでいません。
ホッと胸をなでおろしたものの、ボンネットにぶつかったあの感触と音。そして真っ青な顔した中年サラリーマン姿ははっきりと覚えていました。
朝になり、友人宅に集合しました。
友人達は笑い話といった感じで、私が夜に起こした出来事をT県の友人に話をすると……その友達が真っ青でビックリした表情に変わりました。
「その公園で寝たのか……」
T県の友人の話によると、2日前にその公園で首吊り自殺があったらしいです。
しかもその自殺した人が黒いスーツで白いワイシャツを着たサラリーマン風の人らしく、私が夢でひいた男性とそっくりでした。
自殺した方の第一発見者は、その友人だったそうです。
公園は自殺の名所で、自殺者が後を絶たない場所らしいのです。
T県の友人は霊感が強いタイプで、私達に「夜釣りからの深夜ドライブで疲労困憊した疲れた心に、その方がすうっと入って来たのかもしれない。幽霊も悪さしようとした訳じゃなく、深夜の運転や夜釣りに気をつけろと警告しに来てくれたと思うよ」と話してくれました。
その後、友人達と公園へ戻りお線香と酒を供え「気をつけて遊んできます」と手を合わせました。
そして釣りに出かけると全員が爆釣して、最高の怖楽しい釣り旅となりました。
いつもはまったく釣れない場所なのに。
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