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【実話怪談24】筑波山①(茨城)

男子学生D君は、友人らと夜に茨城県の筑波山にドライブに出かけたことがある。人数が多い方が楽しいだろう、ということで、人をかき集めて計8人で車2台に分けて乗り込み、縦列して山道に向かった。

D君は後方車の運転を担当。前方車と同じ目的地をナビに設定して、車を走らせていた。前方車がすぐ目の前にいる状態だ。

山中に入り、しばらくしてから、前方車の様子が妙だった。明らかにナビの指示から外れた方角に進んでいる。

「あいつら、どこ向かってんの?」
「何もない方に向かってない?」

と、後方車では騒ぎになり始めた。前方車にクラクションを鳴らすも、気づかない様子だ。

その後ほどなくして、ようやく前方車が停車した。

D君も近くに後方車を停め、前の車に駆け寄って様子を窺った。

前方車の助手席に座っていた友人が、こう説明した。

「ナビの指示どおりに進んでたんだけど、何もない方向に誘導してるようだった。でもコイツ(運転手)は、その指示が正しいって妙に信じててな。崖に向かってるから停めろって怒鳴って無理やり停めさせた」

つまり、両方の車で同じ目的地をナビに設定したにもかかわらず、前方車のナビだけが行き先不明の目的地に勝手に変更されていたことになる。

そのうえ、前方者の運転手がナビの異常に気付かないどころか、その指示を盲信していたのも不自然に思えた。

前方車の助手席に座っていた友人が気付かず、もしあのまま進んでいたら大事故を起こしていたかもしれない。

これ以上先に進むと何が起こるか解らないから、D君ら一行は、来た道を引き返したという。

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