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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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2020年10月の記事一覧

【実話怪談73】紳士

看護師Rさんから、病院の内科病棟で勤務していた時の体験を教えていただいた。 ・・・ 今から5年前、外科病棟から内科病棟へ異動となった時の不思議な体験です。 内科病棟で半年入院していた患者Aさんがいました。 Aさんは70代の男性で、とても紳士的でした。挨拶をしっかりして頂き、その際もニコニコしていました。またいつも労いの言葉をかけて頂き、口調もとても穏やかでした。 その方は余命宣告を受け、歩くことも食べる事もできなくなっていました。 そんなある日、夜勤業務をしていた午

【実話怪談72】サイン

看護師Rさんから、病院の外科病棟で勤務していた時の体験を教えていただいた。 ・・・ 外科病棟でも、人生の最期を迎える患者さんがたくさんいました。 ある夜勤の日です。 個室部屋で亡くなられた70代の男性患者Aさんを、先輩看護師と一緒に霊安室へお見送りしました。夜中の1時ごろです。そのすぐ後、彼が入院していた個室に、状態の悪い女性患者Bさんを移動させました。 その後、夜中2時すぎ、先輩と一緒にその個室へ見回りに行ったのですが……。暗がりのベッドに横たわっていたのは、さっき

【実話怪談71】夫の写真

看護師Rさんから、病院の外科病棟で勤務していた時の体験を教えていただいた。 ・・・ 外科病棟でも、人生の最期を迎える患者さんがたくさんいました。 今から10年前のことです。 ある日、20時を過ぎた頃、60代の女性患者Aさんの状態が急変し、すぐにご家族に電話を入れました。 その際にご家族から、こんな返答をいただきました。 「5分前に母(Aさん)から電話があって、亡くなっている父の写真を持ってきてほしいと言われました。今日は面会時間が終わっているから、明日仕事が終わった

【実話怪談70】煙鬼

今月16日に封切られた『劇場版・鬼滅の刃』というアニメーション映画が、空前絶後の大ヒットを飛ばしている。生身の人間たちが刀剣を駆使して、異形の悪鬼らを殺滅していく物語だ。ファンの私もさっそく鑑賞してきたが、脚本、演技、映像美に圧倒され続けた2時間だった。鑑賞者が全員もらえる付録本も大変読み応えがあり、製作者側の力の入れようが伺える。 今回はこの『鬼滅の刃』にちなみ、鬼に関する実話怪談をご紹介したい。 ・・・ 「鬼に襲われたことあるよ」 そう回顧するのは、飲食店経営者の

【実話怪談69】訴え

「長らく放っておいた人型の物には魂が宿っているかもしれないので、捨てる時にはご注意を」 そう戒めるのは、エステサロンを経営する女性Rさんだ。 彼女がサロンを開業するにあたり、知人が経営する美容院の2階を借りることになった。当時、2階は物置部屋として使われていたため、開業前に知人と一緒に片付けをしたそうだ。 片付け当日、ふたりでゴミの分別や掃除に勤しんだ。 物置部屋には、業務用の備品やカタログなどの資料の他、美容院に特有の物品が保管されていた。 マネキンである。 ヘアカ

【実話怪談68】嫌だ

女性Wさんのご子息は、4歳頃まで時折なにが見えていたそうだ。 「遊園地に行ったときには明らかに息子しかいないはずのスペースで誰かと楽しそうに喋っていたり、飛び込み自殺の多い踏切りでは『あのひと、ちぃでて、かわいそう』って呟いてました」 そんなWさんが、忘れられない出来事がある。 彼女の叔母のご主人(叔父)が病気で亡くなったときのこと。 息子とふたりで叔母宅まで葬儀前の弔問に赴いた。息子は叔父とは一度会ったくらいで、ほとんど覚えていないようだ。 亡き叔父が布団でお休みに

【実話怪談67】置かれていたもの

「小さい頃、あれ何だったんだろう、という話ならありますが」 20代女性Uさんが小学生低学年のとき。ある日の早朝、彼女はいつもより早く目が醒めた。二度寝しようと思い、はだけていた掛け布団の上端を両手で掴み、自分の身体にかぶせたときだった。 「胸の上に、〈手〉が置かれてました」 手首から上の片方の手(右手か左手かは不明)だけが、指を開いた状態で、掌を下にして指先を自分に向けて存在している。その手は、微動だにせずに静止しており、まさに“置いてある“という印象だった。 そのと

【実話怪談66】絶対出るマンション

X君は10代の頃、暴走族の一員だった。 ある日の夜、彼は特攻隊長のY君らと公園でたむろしていたが、話の流れでその公園の隣のマンションに肝試しに行くことになった。 メンバーの後輩Z君がそのマンションに住んでおり、「夜になるとお化けが絶対出る」という。総勢10人の集団で、特攻服を颯爽となびかせながら歩いて向かっていた。 時刻は夜1時すぎ。 マンションに向かう道すがら、X君は後輩Z君に尋ねた。 「お化けって、どんなのが出るんだよ」 「男と女の霊ッス。数年前に若い男女が最上

【実話怪談65】なきごえ

「やべぇ、やべぇ、やべぇ」 30年ほど前のある日、自宅にいた暴走族のX君に、メンバーのY君から電話がかかってきたのは夜の12時ごろだった。 「うるせぇな。何だよ」 「さ、さっき公園で、やべぇことがあってな」 Y君の言う〝やべぇこと〟は、以下の内容だった。 その夜Y君らは、とあるマンションの隣の公園にバイクを停めて皆でたむろしていた。その場には、特攻服を纏った10代のやんちゃ盛りの総勢10人が揃っていた。 その公園には3台のベンチ、滑り台、砂場が設けられており、周囲は

【実話怪談64】殺生石(栃木)

7年前の9月、都内に住む女性経営者Rさんは家族とともに栃木県の那須高原に旅行に出かけた。その際、購入して間もないデジカメを持参し、行く先々で写真を撮影していた。 その2日間の旅行の途中、彼女だけ現地の友人と合流して名所をいくつか案内してもらったそうだ。その1つに、「殺生石」(せっしょうせき)という観光スポットがあった。 殺生石とは、那須湯本温泉近くに存在する溶岩だ(見出し画像)。 その昔、九尾の狐が美女(玉藻の前:たまものまえ)に化けて権力者をたぶらかし悪行を重ねたために