マガジンのカバー画像

取材した怪談

229
私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

【実話怪談63】母親の除霊方法

いわゆる霊感のある親子の話。 「ちょっとドライブ行くから、付き合って」 男性Tさんが中学1年の頃、夏の夜に母親にドライブに誘われた。 母親は大の車好きで、入手して間もない中古車を試運転したくてしょうがない様子だった。日産ブルーバード3Sという、4ドア式セダンの白色の車種である。「小遣いがもらえる」という理由から、Tさんは助手席に乗り込んだ。 都内に住んでいた彼らは、その日、千葉市内までドライブに出かけた。道中、あるファミリーレストランに寄り、その駐車場に車を停めた。夜

【実話怪談62】隣のセダン

35年前、都内在住の男性Tさんが小学4年のときの夏。 長野県の叔母の元に家族と遊びに行き、その帰り道、長野から東京へ向かう高速道路でのことだ。叔父と叔母は東京に用事があるというので、Tさんの家族は叔父の車に同乗させてもらった。 運転手は叔父、助手席には叔母、後部座席には左から祖母、Tさん、母親の順に座っていた。 時刻は24時ごろ。Tさんは後部座席で眠りこんでいたが、ふと目が覚めた。運転手の叔父以外は、みな眠っているようだ。 叔父の車は、一番左の車線を走っている。 叔父と

【実話怪談61】行列のできない占い師

20年ほど前、当時20代半ばのTさんは奥さんと東京・原宿にある占いの館を訪れた。館内には数人の占い師が各ブースに分かれて待機しており、客はそれぞれ占ってもらいたい占い師のブースに並ぶシステムだ。 「妻は人気のある占い師に鑑定してもらいたがってたけど、やっぱそういう人って長蛇の列ができてて。俺は並ぶの嫌だったから、空いてるとこでいいじゃんって言って、人が並んでない占い師さがしたの。そしたらひとり、全く行列のない占い師がいたから、そのブースにノックして入ったんだけど」 その占

【実話怪談59】じょり

実話怪談58の体験者・奈央さんの、母親が体験した話。前話とは独立したエピソードである。 父親は仕事の関係で、帰宅できるのは数日に一回程度。その日も、父親は帰宅しない日だった。 夜、寝ている母親は金縛りに遭い、目が覚めた。だがすぐに解けたため、ふたたび目を瞑って眠ろうとした。 目を閉じてしばらくすると、布団の上から誰かがゆっくりと自分に覆いかぶさってきた。 夫が帰ってきたのだろう。 予定が変更になり、帰宅したのだろう。 そして、寝ている自分を求めてきたのだろう。 彼女

【実話怪談58】ぱさり

奈央さんが小学4年のときの話。 彼女は妹と同じ部屋を共有しており、就寝時は2段ベッドの上段を使っていた。 夏の夜、寝ていると不意にぱちりと目が覚めた。 2段ベッドの脇に、黒い人影のようなものが見える。仰向けで寝ている自分の腰の横ぐらいの位置に、その人影は立っていた。 年齢や性別は判別できない。 なにより不自然なのは、2段ベッドの上段で寝ている自分から、人影の上半身が見えることだ。仮に誰かがベッド脇に立っているなら、上段の自分の位置からは頭部だけ見えるはず。立っている場所は

【実話怪談57】こっくりさん

奈央さんが小学生の頃、同級生の間で『こっくりさん』が話題になったことがある。『こっくりさん』とは、紙とペンと硬貨を用いて行う降霊術だ。 ある日の夕食時、何の気なしに母親に「お母さんは、『こっくりさん』やったことある?」と聞いてみた。 母親はその質問に答えることもなく、血相を変えて「絶対やっちゃダメだからねッ」と奈央さんに向けて怒声を浴びせた。普段は温厚な母親が急に激昂したことに、奈央さんは驚いてぽかんとした。 数秒の沈黙が流れた後。 「ごめんね、怒鳴っちゃって。小学生の

【実話怪談56】ツケがきくバー

霊に憑(つ)かれやすい体質の中西さん。彼は霊に憑かれるたびに、あるバーに客として向かう。 そのバーに行くと、自分に憑いた霊がなぜか自分から離れてバーに居つくそうだ。 自分に憑いた霊をバーに移転させることを、彼は「バーに憑ける」と呼んでいる。つまり、そのバーは彼にとって「憑けがきく」ことになる。 今や、バーは霊だらけ。 店員は、何も知らない。

【実話怪談55】寺家トンネル(富山)

「ノリで地元の心霊スポット行ったときの話なんスけど」 5年ほど前の夏の昼。X君は友人Y君と原付に2人乗りして、富山県富山市の寺家(じけ)トンネルに向かった(注:見出し写真はイメージ画像で寺家トンネルではないが、雰囲気は似ている)。 寺家トンネルというのは、県道67号線に連なる3本のトンネルの総称だ。それぞれ、1号隧道(ずいどう)、2号隧道、3号隧道という名称が付されている。 3本とも軽自動車が一台ギリギリ通れるほどの細いトンネルで、部分的に手掘り状態で内壁部が凸凹になっ