できることならスティードで Intermission1 「がまし」/加藤シゲアキ (読書感想文)

単行本発売にあたり
書き下ろされた
"旅する"掌編小説3編のひとつめ。

「がまし」
というタイトルを見て
どんな話か想像つきますか?

私はぜんぜん想像つきませんでした。(笑)
しかし
私の頭の中に出てきてたのは
沖縄の「ガマ」。

ガマは沖縄の方言で
自然にできた横穴の洞窟のこと。
石灰岩で形成された鍾乳洞。

小説を読み進めていくと
「鍾乳洞」の言葉も出てきて
偶然なのか意図的なのか
気になるところ。

この鍾乳洞という言葉が出てきたところ
私の中で惹かれるものがあった。

『この異様な光景に目を奪われていた。
 人々が無造作に南京錠をかけた
 積み重ねが、鍾乳洞のように、
 計算では形作ることのできないものを
 生み出していた。』

長い年月をかけて
形作られた
自然の作品が
地球上にはたくさんある。
意図せず形作られたものは
意図して形作ることができないものが
多いのではないかと思うので
その奇蹟を文章から
感じたみたいです。

『旅は意外な方がいいじゃない』
という言葉も
旅の良さを知ってる人の言葉に
感じられたのでした。
起こった出来事は
幸先悪い出来事だったのだけど。

要所要所に
ことばあそびのような部分があって
日本語の奥深さも感じた小説でした。

タイトルの『がまし』が
どういう意味なのかは
やっぱり内緒にしておこうと思います。

できることならスティードで
の、スティードは
バイクの名前なんですが
登場人物の夫婦が
海外旅行で乗る車が
イギリスのバイクメーカーが
作った車なんですよね。
旅とバイクをうまく絡めた
掌編小説でした。

あと史実を少し絡めていて
この後にあるエッセイとも
関連していて
別の話だけれども
全体通してみてみると
どこか繋がっている感覚もありそうです。
南京錠もその要素のひとつでした。

ひと通り読んだあとで
読み返してみるのも
面白そうだなと思いました。


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