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運命の人は何処にいるの?

「やっぱうちらは運命なんよ…」

「お姉ちゃん…

いきなりどうしたん?

何の話?」

「私と海君は運命の相手だって事だよ!

うちらは運命の赤い糸で結ばれてるって事!!」

職場恋愛していた彼氏が家の都合で地元に帰り、遠距離恋愛になってからは毎日ため息をついてばかりだった姉が今日は何故か生き生きしている。

彼氏からプロポーズでもされたのだろうか?

違ったら気まずいから、とりあえず様子を伺っておこう。

「いきなり運命の赤い糸で繋がってるとか言われてもさぁ、赤い糸って見えないよね?

運命の相手だと思った根拠を説明してよ?」

ご機嫌で皿洗いをしている姉に問いかけてみると…

「もうっ、愛香ったら頭が固いんだから…

私が運命って感じたら運命なのっ!

愛香には見えないかもしれないけど…

私には見えるの!

さっきも、私が餃子を焼き始めたタイミングで海君も餃子焼いてたんだから…

しかも、同じメーカーの餃子を!

ほらっ、私たちの心が繋がってるって分かるでしょ?」

「んーっ…

私には分かんないかも…

だって、他にも同じ時間に同じメーカーの餃子焼いている人がいるかもしれないでしょ?

だったら、その人もお姉ちゃんの運命の人になっちゃうよ?」

「知らない人が餃子焼いてても、そんなのどうでもいいの!

遠く離れた場所で大好きな海君が同じ時間に同じ事をしていたのが嬉しくって、幸せで…

その幸せな気持ちを愛香と共有したかっただけなんだけど…

愛香は全然共感してくれないんだから…」

「だって仕方ないでしょ?

私はお姉ちゃんみたいに脳内お花畑じゃないんだから…

気軽に運命の相手とか思えないのよ。

海君がお姉ちゃんと同じように、一緒な時間に餃子焼いてるからって…

もう、絶対ふたりは赤い糸で結ばれた運命の相手なんだよとか無責任な事を私は言えないよ…

ただ、海君がお姉ちゃんの話を聞いて、僕たちってやっぱり繋がってるねって言ってくれるならそれでいいんじゃない?

お似合いだと思うよ、ふたりは…」

拗ねたらしく…頬をふくらませてハムスターみたいになっている姉をなだめる愛香である。

「勿論、海君は私の意見に賛成してくれたよ?

偶然じゃなくて、必然だねって…

僕たちは離れていても同じ事考えてるみたいだねって笑ってくれたよ?」

「じゃあ、いいんじゃない?

海君とお姉ちゃん…

お似合いだと思うよ?

それはそうと、餃子はどうなったの?

私の分の餃子は?」

「ごめーん!

嬉しくなって全部食べちゃった。

愛香が食べたいなら追加で焼こうか?」

「食べちゃったんでしょ?

じゃあ、餃子じゃなくていいよ。

同じ時間に餃子焼いてる誰かが運命の相手だって言い出したら、海君に悪いから…」

「ちょっと…

海君だけが私の運命の人なの!

変な事言わないでよ?

ねぇ、焼きそばでいい?

直ぐ作るから、拗ねないでよ?

愛香もさぁ、男なんて信じられないとか言わないで彼氏作れば?」

「あれ?

言ってなかった?私、彼氏いるけど…

来月から一緒に住む予定だし…」

「えっ?

聞いてない!

そんなの聞いてないよ?

同棲なんて絶対ダメーッ。

同棲すると、結婚遠のいちゃうよ?」

「お姉ちゃんがダメッて言っても、もう決まってるし…

母さんたちは賛成してくれてるから…」

「愛香がいなくなったら、私は誰に海君の話したらいいの?」

「お姉ちゃんも、海君のところに行けば?

向こうで出来る仕事探してみたら?

海君が運命の相手ならシッカリ捕まえとかないとね」

私と離れて暮らすのが嫌だとグズりながら焼きそばを炒める姉をなだめつつ、私は冷蔵庫から出したオリオンビールの缶を開けてグラスに注いでいく。

程好く冷えたビールをひとくち飲むと、姉の彼氏である海君の人の良さそうな笑顔と彼の地元である南の島の美しい星空を思い出した。

ひとりにしたら何をしでかすか分からない姉を預けられる相手は、海君しかいないのかもね。

私には、運命とかよく分からないけれど…

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