福寿外伝ep.2 | 天使之涙

俺は白血病で亡くなった。
その夜、娘のユエちゃんが地べたから一向に動かなかった。
そこのベッドで横たわる自分と一緒だ。

福福と寿寿に連れてもらい、俗世に生きるユエちゃんの姿を見て、
自分が亡くなった時と同じような、やるせなさと悲しさが襲ってきた。
天使になって、もう何年経つのだろう?
悲しい感情など、とうに失っているはずなのに。

「バーバー、ユエちゃんのこと気がかりだよね」
寿寿は俺に声をかけた。福福はすすり泣いている。
ずっと肩にくっついて、涙で天衣が濡れ、福福の心臓の音と呼吸が伝わってくる。
ああ、久しぶりに心臓の動きと、呼吸を感じた。そういえば。
そう気づいた俺は、不意に
「福福、寿寿。守ってくれないか、俺の娘を。」

涙が出た。
最後に泣いた時はいつだったろうか。
病室で、誰もいなくなったあと、1人でいても、
涙も何も出なくなっていた。
もう、息することだけが限界だった。
それでも、残した家族、そして俺自身の人生を思うと
「生きたい」、ただそう思った。
思っていたけれど…

寿寿が、俺の膝をさすりながら
「福福と寿寿が、ユエちゃん守る。いつでも、どこでも、守る。」
福福も俺の肩で首を縦に振っている。

「福福、寿寿…ありがとう…もう、見ていられなかった。俺は見守るしかできないけれど、福福と寿寿ならもっとユエちゃんを守れるはず。俺はどんな姿になろうとも、俺の娘、家族の力になりたい」

「バーバー、十分だよ。ここニルヴァーナで安らかに過ごす。それが、俗世の人たちの願いであるし、ある意味ここのルールでもあるからね。安心して」
寿寿が答える。
福福もようやく泣き止むところ。

その時だった。

寿寿のスマホが鳴る。

「あーん、もしもしー?今、寿寿と福福取り込み中。バーバーと大事な話しているの。後にして…」
『オリンポス宮内のものだけど。元気にしてるー?』

「あれ、アテナ姉貴?超久しぶりじゃん!どうしたの??てかアテナ様って呼んだ方がコンプラ的に良さそ?」
『よしてよ〜寿寿超久しぶり!!あのね、実はね、ちょっともう決まっちゃったことであれなんだけど…』
「え、なになに」
『クピド様とプシュケ様の間にヴォルピュタスちゃんが聖誕したじゃん?』
「あー!あの今バズってる可愛い子だよね!」
『そうそう、その子のねー…教育係をね、福福と寿寿、あんたたちが担当するって、上で決まっちゃったのよねー』

「「んえええ?!?!」」
「何意味わかんない」寿寿が続ける。
『1週間前くらいに郵送でも案内送ったんだけど、まーーー見ていないよね…早めに電話するべきだった、ごめん〜!!でもね、今回アフロディテ様直々のご指名で、私も正直驚いたんだけどさ、もー断れなくて…ってもしもしー?聞いてるー?…
…』

次回に続く。


余談。
久しぶりに更新してみました。
ずっと物語はできていたんだけど、どうしても絵の方が書けなくて。
なんか落ち込んでるって感じでもないし病んでるって感じでもないのですが←、
描くのに踏ん張らないといけなかったのです。気持ち的に。でも良い機会だなって思って。

これ書いてる私はもう30手前で、気持ち的にあの時のユエちゃんみたいに
いい意味でも悪い意味でも全開じゃなくなったんですけど。
でも、日々色々あるし、その都度消化するために、いくつになっても時間をじっくりかけてあげるのは必要なのかもしれない、と、およそこの第二話の絵を描けるまでの時間、学びました。

バーバー、いつも天国でありがとう。爺爺もね。サブジーもゆっこ婆も、
そして福福と寿寿も。
OL頑張るぞ!

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