YOU saved a DJ life.(仮)
1.
暑い夏の真昼、僕はいつものようにたくさんのレコードが入っている黒いケースの中から、すぐにターンテーブルに乗せやすいようにそこからさらに何枚かを斜めに立てたその中から、一枚のレコードを感覚で選び、ジャケットに書いてある曲順を見る。それからレコードの真ん中、ラベルを見て表裏を確認すると、レコードを左側のターンテーブルに置く。目を近づけて、凝らしてよく見ると見える、レコードの外側の端から三番目の溝、溝といっても黒い色以外はつるつるとした部分に、針を落とす。それからターンテーブルのスタートボタンを押す。回りはじめるレコード。ヘッドフォンのなかで、鳴りはじめるイントロ。首にかけたヘッドフォンの左側だけを左手で上げて左耳にあて、曲が間違ってないかを確認する。曲がいまの雰囲気に見合っているかを改めて確認する。それからミキサーのイコライザーで少しだけ高音、ハイのつまみ、中音、ミドルのつまみ、低音、ロウのつまみをいじっていく。なんとなくの感覚で少しだけ。そのまま今度は回っているレコードを右手で逆回転させる。無音の場所になるまで。ヘッドフォンが無音になるまで。そこで右手の中指と一指し指でレコードを止めておく。先に急ごうとする歌を、強く待たせる。スタートボタンはストップボタンでもある。左手の人差し指で一度ストップボタンを押し、ヘッドフォンを首に戻す。そして客席をようやく見る。遠くには太陽の放つ強い光が眩しく見える。それから緑の木々のもとに並んで建てられた白いテント、そこで売られているビールやフードを買うために並んでいる人たち。その手前の段になっている客席のベンチ、そこで思い思いに過ごしている人たち。昨日、僕に「あなたの選曲が好きになりました。明日も楽しみにしています」そういってペットボトルのお茶を渡してくれた都内から1時間かけてきたおじさんが、笑顔で手を振ってくれている。僕は彼を見つけると、会釈する。一番手前、スタンディングゾーン、次のライブを目の前で見ようと立って待つ人たち。僕はいちばん前の柵に手をかけて寄りかかりながら、音に合わせて少し身体を揺らしながら、僕を見上げている君を見る。それから視線を手元に戻し、いまかかっている曲が小さくなっていくのに合わせて、ミキサーのフェーダーを右手親指と人差し指で真ん中に振る。感覚、この場面でしかあり得ない音の隙間で、僕は左手の一指し指でさっき準備したターンテーブルのスタートボタンを押す。ミキサーのフェーダーを右手親指と人差し指で左側に振る。まるで人生を太陽が祝福しているかのような、シンセサイザーの音が会場に大きく鳴りはじめる。僕はイコライザーを少しだけ弄りながら、もう一度太陽の射す会場を見る。誰かを見るわけでもなく、誰かを見る。少しの時間、その誰かを見ている。
*友人がさっきDJについての小説を読んでみたいなあ、と呟いたので、とりあえず書き始めてみました。続くのか、終わるのか、まったくわかりません。推敲もしません。誤字脱字等あれば、書き終えたら、直します。とりあえずのイントロってことで。読んでいただき、ありがとうございます。初めてパソコンで書いてます。なかなか楽しくなってきた。
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