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パーマをかけるかかけないかの綱引き

パーマをかけようか、1ヵ月ほど迷っている。

先月、美容院に行ったとき、転職活動をするために髪を暗く染め直して、量を減らしてもらった。

いつもの美容師さんに、ボリュームがなくてすぐに髪がぺったりしてしまうのが悩みだと相談したら、パーマをかけたらフワッとしますよ、とのこと。それはそうなんだけどね、うーんと腕を組んだ。

初めてパーマをかけたのは、高校2年生の頃。従順な学生だったけれど、どうしてもパーマをかけてみたくて、校則をやぶってパーマをかけた。友人たちには大好評。先生にはぷつぷつ咎められたけれど、やりたいことを叶えられたことは大きな喜びに変わった。

髪質が柔らかい猫っ毛なので、結局は1週間くらいで元のまっすぐな髪に戻ってしまって、特別にみえていた世界も普段と変わらない日常にもどってしまったのだけど。

「たぶん、パーマをかけてもすぐに取れてしまうと思います。今の髪型も気に入っているし、深刻に悩んでいるわけじゃないので。」手元にある雑誌に目を落とし、ぼそっと答える。

でも!と、はさみを動かす手をとめて、鏡越しに目を合わせた美容師さんは言った。
「昔と比べて技術は進んでいて、ダメージも少ないです。やりたいと思ったならやってみるのもアリだと思います!」力強いまなざしのなかに、情熱の火がみえる。この人は髪を切ることで、誰かを鼓舞してきたのかもしれない。

思わず「はい、やります」と答えそうになったけれど、高校生の私が「信じられないよ」と、ぐっと引き留める。新しい私を見てみたい気持ちと信用できない心とが綱引きをして、勝負がつかないまま日が経過する。

パーマをかけただけですべてがバラ色に変わるわけではないけれど、ドミノが倒れるように小さなひとつの変化が違う世界を見せてくれるはず。わくわくする心がいまは強く綱を引っ張っている。