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四国大戦~プロローグ2~

 七年後、常陸の国。
 腕白大師は金剛杖を突いて田んぼ道を歩いていた。擦り切れた法衣が、旅の長さを物語っている。
 頭にかぶった傘をずらして、澄み渡った青空を見やる。夏の青空だ。見ているだけで全身に生気が満ち満ちてくる。蝶が舞い、ウサギが道を横切り、子供がそれを追いかける。現世これ修行の場と言うが、現世がこれだけ素晴らしいのなら極楽浄土はどれほど美しいのだろうか。
 腕白大地が先へ進むと、今まさに田植えの最先端を走る農民たちが見えてきた。腕白大師はその内の一人に声をかける。
「これ、ちと忙しいところすまないね」
「へぇ、何でしょうお坊様」
「ここらに、ジョン・田中という人はいないかね」
 純朴な農民の青年は、共に田植えをする仲間へ向かって声を放った。
「ジョン! お前にお坊様が来てるだよ!」
 頬冠をした農民の一人が、腕白大師の下に進み出た。
「久しぶりだな、ジョン」
 農民が無言で頬冠を外した。その下には、間違いない。七年前、共に戦場をかけ巡った、あの狼の目をした僧侶がいた。髪は伸び、髭が生えているが、その眼は変わらなかった。
「涼しいところで話そう」
 腕白大師が樫の木の木陰を指した。ジョンは何も言わず、腕白大師に付いていく。「やれやれ、お前がこんなところで農民の真似事とはな。いったいどうして?」
 ジョンは何も言わない。
「まさか、言葉を忘れたというわけではないだろう?」
「何の用です?」
 ぶっきらぼうな返答だった。
「質問には答えないか。まぁ、いい」
 腕白大師は改めてジョンへ向き直る。
「ジョン・田中。君に新しい任務だ。破壊僧としてのな」
「俺はもう僧侶じゃない」
 ジョンは首を横に振った。
「太政官にライセンスを返上した」
「これのことかね?」
 腕白大師は懐からライセンスを取り出した。
「君のライセンスは、私が預かっていた」
「捨てて下さい、俺にはもう必要のないものだ」
 ジョンは後ろを向く。
「私度僧(無免許の僧侶)にでもなるつもりかね」
「俺は二度と僧侶をやるつもりはない!」
 激昂してジョンは振り向いた。遠くで農民が驚いて、二人の方を見る。
「俺は衆生を救うために出家した! しかし現実はどうだ? 僧侶は国家命令で、国家のためにしか祈祷しない。保元の乱で焼け出された人々に、俺たちは何をした? 何もしなかった!」
「時代が悪かったんだ」
「時代が悪かった? 今は良いとでもいうのか? あんたの給料は誰が支払う? 今度は俺に何をやらせるつもりだ?」
「ジョン、頼む。今回だけだ」
「六波羅合戦でもそう言った!」
 ジョンは腕白大師の襟を掴んで、木に叩き付けた。
「このまま大人しく京へ、帰れ」
 腕白大師の襟を放し、ジョンは田植えへ戻る。大師は襟元を正して、ひとまずはその場を去った。

 次に腕白大師が向かったのは、近くの村だった。今まさにジョンが田植えをしている農民たちの村である。
 腕白大師は、一軒の家を訪れた。
「ごめん下さい」
 そう言うと、玄関から足腰の弱そうな老婆が出迎えた。
「へぇ、お坊様。いったいどのようなご用件でっしゃろ」
 腕白大師は傘を取って、一礼した。
「私は腕白大師、入滅したゼロは、私の部隊の隊員でした」

 老婆は腕白大師を家の中へ上げた。居間には死んだゼロの位牌が小さな机の上に置かれ、供養されていた。貧しい農民の家には仏壇などというものは存在しない。しかし、毎日丁寧に供養された位牌に腕白大師は高い徳を感じた。
「お経を上げさせてもらってもよいですかな?」
 腕白大師がたずねると「ええ、お願いしますです」と老婆は快く応じた。
 昼過ぎから経を唱えて、終わる頃には夕方になっていた。
「ただいま」
 家に誰かが帰って来た。若い男の声だった。
「おっかさん、お客さんかい?」
「そうよ、お坊さんが来て下さったのよ」
「お坊さん?」
 居間に入って来たのはジョンだった。ジョンは腕白大師を一睨みすると「飯の用意をするよ」と言って、台所の方へ引っ込んでしまった。
「彼は?」と、腕白大師が訊ねると「死んだ息子と同じ部隊だったんですってねぇ。ゼロの分まで孝行するって言って、居付いちまったんでさぁ。今では実の息子のように可愛がっておりますけん」
「そうですか。それは結構なことです」
 腕白大師は台所へ行き、竹筒から息を吹きかけてかまどの火を起こすジョンのそばへ来た。
「あんたもしつこいな。だが、経の礼だ。今日は泊まって行くといい。そして明日になったら、さっさと出て行ってくれ」
「ジョン、話だけでも聞いてくれ。任務を受けるか受けないかは、それから決めても遅くは無いだろう」
 ジョンは無言で竈に薪を放り込んだ。腕白大師は土間に座って、話を始めた。
「二ヵ月前、四国から朝廷へ請願が来た。寺が人を食っているそうだ」
「寺が人を?」
 腕白大師のあまりに妙な話に、思わずジョンは火を起こす手を止めた。
「機動寺院だ」腕白大師が言った。「弘法大師が建築した歩く寺院。足腰の弱い老人も参拝できるように、寺の方から信者へ向かってくる次世代型の寺だ。半年前、弘法大師が八十八カ所目の寺を建設し、本格的な運用が始まった」
「待て、弘法大師空海は三百年前の人物だろう」
「それについては私が説明しよう」
 突然、台所から第三者の声が響いた。人の声と言うより、機械によって合成された音声に聞こえる。
「誰だ!」
 ジョンが立ち上がり、周りを見回すが人の気配は無い。
「ここじゃ」
 声の出どころは、腕白大師の持つ金剛杖だった。
「なんだって? まさか」
 腕白大師がジョンへ杖を差し出し、ジョンは恐る恐るそれを受け取った。
「私は弘法大師空海」金剛杖が名乗る。
「まさか……人工知能?」
 ジョンが確かめるように腕白大師を見ると「明察!」と金剛杖は言った。
「インドの経量部が研究を進めていたと聞いてはいたが」
「死の直前、人格データを金剛杖にダウンロードしたのだ」
 金剛杖がピカピカと光りながら説明した。
「請願と同時に、この杖が都へ来なければ、私も信じなかっただろう」と、腕白大師。
「どうして寺が人を食うんだ?」
 ジョンが訊ねると、金剛杖は「それは分からない」と答える。
「何故だ? お前が建てた寺だろう?」
「記憶のダウンロードが不完全だった。死ぬ間際にバタバタしたせいだろう。直近、十年の記憶が欠落しておる」
「待て、話がおかしいぞ。弘法大師、お前はいつ死んだ?」
「肉体という意味なら半年前だ」
「ということは、あんた三百年近く生きていたのか?」
「驚くことではない。四国は時間の流れが違う。四国タイムだ」
「四国タイム?」
「話がそれたな。今はどうして寺が人を食べるのかを説明しよう」
 金剛杖から光が放たれて、寺の三次元投影画像が台所に浮かび上がった。普通の寺に蜘蛛のような足を付けたデザインをしている。
「これは一番札所霊山寺だ。私が最初に設計した機動寺院である。知っての通り、寺には基本的に信仰の対象となる本尊が存在する。霊山寺の場合、釈迦如来だな」
 投影された霊山寺の中心が赤く点滅し『シャカニョライ』と文字が表示される。金剛杖の説明は続く。
「この本尊に、住職が信仰の祈りとして念料を捧げ、それに生じる徳の力を運動エネルギーに変換して寺を起動させる」
「だったら話は簡単だ。信仰するのを止めればいい」
「話はそう簡単ではない」
 腕白大師が言った。
「機動寺院には住職が入滅し、念料不足に陥った場合の状況を考慮して緊急念料補充システムが導入されている」金剛杖が説明を続ける。「これは簡単に言うとだな、その辺の人間を捕まえてお経を読ませることで念料を補充するのだ」
「なんでそんなシステムを」
「あくまで緊急用のシステムだった!」
 金剛杖が言い訳した。
「代わりの僧が見つかるまで、信仰を繋げるためのな。それに所定の位置に着いたら、自動的に休眠状態にはいることになっていた」
「本尊のプログラムが何者かにかき替えられたのだ」
 腕白大師が口を挟む。
「機動寺院の挙動は、本尊とそれに紐づく経典によって制御されている」
「誰かが経典をハッキングしたということか?」
 ジョンが言った。
「一体誰が」
「君に依頼する仕事は二つだ、ジョン」と、腕白大師。「一つは四国で暴走している八十八の寺院を止めること、そして寺院が暴走した原因を突き止めることだ」
 腕白大師は錦織の布で表紙が閉じられた冊子をジョンに渡した。
「これは御朱印帳だ。機動寺院には自己再生能力がある。止めるには、暴走した本尊を破壊するしかない。しかし自己再生能力は本尊にも及んでいる。そこで信仰の力を一時的に御朱印という形で封印するのだ。これはそのためのものだ」
「なんで俺なんだ」と、ジョンは言う。
「君しかいない」腕白大師は力強く言った。「他の破壊僧は全員死んだ。あの戦い以降、後白河天皇は仏教の軍事利用を禁止して、破壊僧の育成を止めた。残っているのは君だけだ」
「そんなことは知らない。他を当たってくれ。僧侶を訓練して、機動寺院と戦わせればいい!」
「時間がない。破壊僧の訓練には最低、半年はかかる。だが計算ではあと一年で機動寺院は四国の人々を食いつくす!」
「これを見てくれ」
 金剛杖が新しい画像を投影した。そこには機動寺院が人間をポイ捨てする様子と、ポイ捨てされた人間が道端に累々と横たわっている様子が映っていた。ポイ捨てされた人々はみな一様にやせ細り、干からびている。
「彼らは機動寺院に捕獲され、食事も、睡眠すら与えられず死ぬまで経を唱えさせられる!」
「やめてくれ!」
 ジョンは金剛杖を腕白大師に投げ返した。それから玄関を出て、山の方へ走り去った。
「ジョン!」
 引き留めようとする腕白大師を「よせ」と、金剛杖が止めた。
「彼には考える時間が必要なのだろう。彼はきっと戻ってくる。ここは彼の家なのだからな」
 
 ジョンは山の中を走る。彼を追い立てるものは何か?
 過去だ! 血に塗れたどす黒い過去が彼を追い立てる!
 ジョンの脳裏に明滅する黒い太陽! 赤い月! 死体に集る無数のハエ! 対仏ライフルから発せらるる火薬の焼けつくような香り! 白刃にきらめく敵の血を浴びて、刹那を駆け抜けた戦場の泥道!
 夕焼けを背負ってジョンは山道を駆け上る。夕闇の影が忍び寄っていた。闇、闇、暗闇からの射貫くような視線。不意に伸びた手がジョンを掴む。幻覚だ! 振り払った手が木の枝に変わって虚空を飛んだ。
「ゼロ! 助けてくれ! ゼロ!」
 ジョンは思わず助けを叫んだ! しかしゼロはもういない。七年前のあの日、ジョンをかばってニルヴァーナしたゆえに。
 山道はやがて荒れ寺へ出た。村人からも忘れ去られた昔の寺だった。本尊は無く、打ち捨てられて荒らされ、取るべきものを取りつくされた、文字通り空っぽの伽藍洞にジョンは飛び込んだ。徳を失った寺院は、単なる廃屋と変わらない。ジョンを救いに現れる神仏は皆無であるはずだった。
 しかしこの時、奇跡が起こった! 一年に一度、この日だけ木の葉を抜け、伽藍洞の崩れかけた戸の亀裂から絶妙な角度で夕日が差し込んだ! 差し込んだ夕日は床にのたうつジョンに啓示を示した!
「こ、これは!」
 ジョンの目に映ったのは見事な天井画だった。寺が建立され、荒れ果てて百余年、暗闇の中に誰にも発見されなかった仏陀の天井画であった。ところどころ擦り切れ、色褪せてはいたものの、原色のはっきりした色彩はジョンの網膜に直撃し、昏倒せしめた。
 夢の中で、彼は八十八体の仏に囲まれていた。仏の一人が進み出て、ジョンの腹を殴った。ジョンは倒れ伏し、胃液を吐いた。仏がジョンの頭を踏みつける。鼻と口に、熱いものがこみ上げた。
 何という理不尽な暴力! 仏であろうが許せん!
 ジョンは自分の頭を踏みつける仏の足から逃れ、その悪い悪い足を掴んで足首の関節を外し、地面に倒して頭を踏みつけ、頭蓋を砕いて殺した。
 次の仏が進み出ると、ジョンはその仏を殺した。
 次の仏が進み出ると、ジョンはその仏を殺した。
 次の仏が進み出ると、ジョンはその仏を殺した。
 次の仏が進み出ると、ジョンはその仏を殺した。
 次の仏が進み出ると、ジョンはその仏を殺した。
 次の仏が進み出ると、ジョンはその仏を殺した。
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 全ての仏を殺したジョンの前に扉が現れた。その扉を潜ると、朝日がジョンの全身を貫いた。
 服がきつかった。体を見ると、大胸筋と上腕二頭筋は膨らみ、足は丸太のような迫力でもって大きく、腹筋が見事に割れていた。見えないが、背筋もきっとすごいことになっているだろう。
 ジョンは山道を下りて自分の家へ帰った。おっかさんと腕白大師は眠っていた。ジョンはナイフを持って川へ行き、水面を鏡に髪を短く切って、髭をそった。ナイフを洗って家に帰ると、戸棚からゼロの形見であるバンダナを額に締めた、腕白大師の枕元に立った。
 すると腕白大師はかっと目を見開いてジョンを見た。余計な言葉はいらなかった。
「行こう」
 ジョンは腕組みして宣言した。
「四国八十八寺を破壊する!」

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