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突然の別れ #1


 5月末、入社以来5年共にやってきたsさんの退職日だった。寂しいが、定年の年だから仕方がないとまだ割り切れた。

兄さんの様な存在のAさんは一つ年上で、頼れる存在の薬剤師であり、私は医療事務員として働いていた。
(暫くココの勤務増えるから)「明日からしっかり働いてもらうよ。」と笑いながら私に言った。

 
翌日の昼休憩、突然、本社人事部の人が訪れて、私は胸騒ぎがした。
奥に通して、受付に私は戻るが、内容が上手く聞き取れない。

お昼を済ませるため、一旦外に出て戻ると、シフト表が理解出来なくて頭が真っ白になった・・・。
兄さんの出勤が一週間後の8日までで、9日からグレーゾーン(有給消化扱い)になっていて・・・
「どう言うこと??? 」と問うと、
「こうなりました。もう覆りません。」と、本部がこんなに早く動くとは思ってもいなかったと言った。

その時から心にぽっかり穴が空いてしまった。午後は何を話していたかよく覚えていない。

そう遠くない未来、辞めるために就活するとは聞かされていたが、あまりに唐突過ぎて自分の心もショックが強すぎた。

 
 4日の勤務は慣れないkさん一人だとキツいだろうと言って、兄さんが無料奉仕で手伝いに来た。あと最終日しか会えない予定だったので、嬉しいと思ってしまった。
忙しさが一段落して、「8日の日、消えてるかもしれないしな。」と、ハハハと軽く言う兄さんに対し、私は「そんなこと言わないで!!!」と、感情露わに涙まで出てしまった。私が奥に引っ込むと同時に、兄さんは受付前に進みながら、「悪いことをした。泣きたいのはこっちだけどな。」と言って、応対に向かってくれた。








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