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再発行

「クレジットカードが不正利用されたみたいなんだけど」
お金のことに対して疎い私は、彼に今日起きた出来事を伝える。
「モバイルスイカに勝手にチャージされたみたい、1000円と2000円、二回に分けて」
「どこから漏れたんだろうね」
「わからない、海外のネット通販を使ったからかな、不正が分かった段階でカード会社が利用停止してくれてるみたいだけど」
「コンビニとかで本当に使えないか確かめてみたら?」

私のクレジットカードは確かに止められていた。カード会社に電話して本人確認と身に覚えのないモバイルスイカのチャージが確認できたことで、程なくして新しいクレジットカードが届いた。こんなに簡単に再発行できてしまうものなのか。それと同時に不正利用は日常茶飯事に起きていると悟った。「Amazonを装ったショートメールにアクセスしたりしないように」と忠告を受けた。それから数週間後、Amazonを装ったショートメールが私のもとに届いた。寝ぼけ眼に即座に削除した。人生は場数を踏むばかりだ。場数を踏んでいても、雲行きが怪しいことを行ってしまうけれど。例えば、カフェインやミルクを摂取すること。私の体にはそれらは合わない。もはや依存かビョーキである。
「飲まないほうが良いよ」
と示唆してくれる人がいれば私は飲まずにいられるだろう。そしてお腹を壊す悲惨さは一人のときにしか経験できないから。誰かが同室にいるときにトイレに籠るなんてことはしたくない。しかし、一人暮らしは「我が法」状態なので同じことを幾度もなく繰り返すのだ。

旅先での朝、ひとりインスタントコーヒーを淹れる彼を見て羨ましいなと思った。
「いいなあ飲めて」
「間違えて飲むんじゃないぞ」と忠告を受ける。コーヒーに耐性のない身体から、耐性のある身体へ再発行することはできない。私はコーヒーの香りが好きなだけかもしれないと自分に言い聞かせて、匂いを嗅いで満足し、身支度を進めた。


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