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11月15日 

11月15日。七五三のお祝いの日。

私が小学生の頃は学校を休んだ生徒がいると給食のコッペパンを近所の生徒が休んだ生徒の家まで届けるのが決まりでした。

私が小学校1年の11月15日大半のクラスの女の子が学校を休んでいました。私は学校を休んでいる同級生の家にコッペパンを持っていくようにと担任の先生に頼まれました。
学校から帰ると大急ぎで私は同級生の家にコッペパンを届けに行きました。

同級生の家に着き縁側から同級生の名前を呼ぶと障子を開けて綺麗な晴れ着を着て髪飾りをつけお化粧した同級生が出てきました。
私はなんて綺麗なんだろうと見惚れてしまいました。 

七五三のお祝いでクラスのほとんどの女の子たちが学校を休んで晴れ着を着ていたのだと分かりました。

私が物心ついた頃、父は事業に失敗し続け、母や祖母の内職で生計をたてていました。家計はかなり厳しかっただろうと思います。晴れ着を揃える余裕などなかったはずです。

「ちづ子ちゃん、とっても綺麗だったの。」
家に帰ると私は同級生の綺麗な相にわくわくして母に話しました。
母は黙って表情も変えずにそれを聞いていました。

あれから長い時間が過ぎて、私は母になりました。あの時の母の気持ちが少し分かるような気がします。母は娘に不憫な思いをさせてしまったと申し訳なく悲しかったのに違いありません。
私が子どもの頃は個性を大切にする時代ではありませんでした。みんなに合わせる事が重要な時代の風潮があったのです。
他の女の子と同じように晴れ着を着せてあげられなかったという母の悲しみは、今私が察するよりずっと大きかったと思います。

私はというと母の思いとは違って、羨ましいと思うこともなく、綺麗に着飾った同級生を見てワクワクしていたのですが。


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