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「聴いたことのない音を探すために」今日はこの音楽を聴いてみよう.1

いよいよ、noteで音楽マガジン・アケシンの「聴いたことのない音を探すために」をスタートです。

このマガジンでは、自分が古今東西ジャンル問わず、さまざまなミュージシャンのアルバムやシングルをコラムやインタビュー、対談といった形で紹介していきます。

シングルやアルバムに関するコラムに関しては"今日はこの音楽を聴いてみよう"というタイトルで公開していきます。

紹介したアーティストや作品に興味を持ってもらっても結果的に聴いてもらえず終い、というのも悲しく残念な話なので、当面apple musicで聴けるもの中心にオススメします。apple musicで聴けない場合は、Youtubeやsoundcloudなどでチェックできる作品やアーティストを選んでいきます。

さて"今日はこの音楽を聴こう"、記念すべき最初に紹介する作品は...。

実はここだけの話、「どのアーティストのどの作品を選ぶか...」と悩むこと数日。

売れ線の作品をセレクトするのもありだし、ド・インディな洋楽をピックアップするのもニッチでいいし...。でも、最初の一枚が今後の方向性を決めてしまうかもしれないしなあ、とかなんとか(以下、ループ)。

結果、悩んでいる間に、常に自分の頭の中にあった1枚を選ぶことに。それは...。

SHUNTARO OKINO『F-A-R』。

これでイきます、うん。なお、今回はこのマガジン最初ということで、無料で最後までお読みいただくことができます。

沖野俊太郎とは?

「沖野俊太郎って誰?」って方のために、まず、彼について簡単に説明しておきます。

沖野俊太郎は1990年代前半にクラブ・インディシーンでトレンドセッターとなったVENUS PETERというバンドのボーカル。

80年代インディポップ直系の甘いメロディと、当時イギリスで流行っていたマンチェスターサウンドが絶妙なバランスで鳴らされたそのサウンドが、耳の肥えた洋楽好きのリスナー中心に注目を浴びていました。

バンドはオリジナルアルバムをインディ期に1枚、メジャーに移行してから2枚出した後、94年に解散。その後は期間限定で復活して作品をリリース。

沖野俊太郎自身は、バンド解散後に自身名義でソロアルバムをリリースしたり、サイケデリックなサウンドが耳をどろりととかしてしまいそうなソロユニットindian ropeや、エレクトロ色強くアシッドなサウンドのOceanというユニットで活動を継続。途中、『LAST EXILE』『GUN×SWORD』と言ったアニメの主題歌・挿入歌が国内海外のアニメファンにも浸透していきました。

そして約15年ぶりの自身名義でのアルバムが『F-A-R』となります。

清原もこのアルバムを聴いたらよかったのに

ではでは、自分がこの作品をオススメする理由。

何といっても、アルバム全般に覆っているシンプルにポジティブなグルーヴにグッとクるんです。ぼく自身、ポジティブ感たっぷりで暑苦しい音楽に対して白けてしまうことが多い人間なんですが、そんな野郎にもバシッと響いてしまう空回り感のないポジティブなグルーヴがタマラナイんです。

それは、歌詞がポジティブ、とか音がぶっとくてイケイケとか、そんな部分的な一要素ではないからこその説得力なんだと思います。演奏や歌詞、声や、言ってしまえば沖野さんの思想、それら全部の要素が合致して"鳴ってしまった"音がポジティブな形で昇華された、というか。

そして、そこにヌメヌメーとした沖野さんの声が一体化した時のなんとも言葉にしがたいほどの気持ちよさがたまらない。一度ハマったらこの快楽からは抜け出せないんじゃないかなあ。清原も覚醒剤なんかに手を出さずに、このアルバムを聴いたらよかったのにね。

洋楽のパクリ、では決してない彼のサウンド

沖野さんにしても、VENUS PETERにしても、"和製プライマル・スクリーム"だとか"和製ストーン・ローゼス"といった形で一口で評されることが多いけど、よく聴いてもらえればわかると思うけど、聴いた後に受ける印象や耳に残る感触はまったく違います。

あくまで楽曲の土台となっている60年代〜現在の欧米ロックが重なっているだけで。同じ時代に音楽活動している同志として影響は受けていると思うけど、その過去の音楽遺産に対しての咀嚼や試行具合はもっとおそろしいほどに綿密で細くて、ドロドロでぐちゃぐちゃしていると思う。

それは自分の作品に対して、こう言ったコメントを残してしまう沖野さんの資質からもうかがえると思います。要は、自分が納得する音楽を生み出すことに重きが置かれているということ。売れている洋楽を軽くパクって人気を得ようとは思っていないということ。ただし、純粋に「売れたい」とはものすごく思っているだろうけど。

『F-A-R』というこのアルバムで、彼が結果的に鳴らしてしまったグルーヴは、VENUS PETERというバンドでは出せなかった音という気がして、そこはファンとして、なんとも歯がゆいというか切ない気持ちにもなってしまったけど。

あなたのこの音楽に会えてよかった、私。

沖野俊太郎の"ザ・ソウル・ミュージック"

以前のインタビューで、自身のファーストソロアルバム『HOLD STILL-KEEP GOING』に対し「ソウルミュージックをやろうとしたけど、今思うと恥ずかしい感じ」と苦笑い気味に語っていた沖野さん。

それから10年以上の時が流れ、さまざまな形態での活動を経て、この『F-A-R』という作品を完成させ、世にドロップしたことに、ぼくは強い感動を覚えました。

それは、このアルバムでは60's〜00'sの欧米ロックや、トランス、エレクトロミュージックなどさまざまなジャンルの音楽が凝縮されているけど、どの曲も沖野俊太郎というミュージシャンの音楽に対しての愛と魂が感じられるものだったから。

日本にいる一人の音楽詩人による、真の意味でのソウル・ミュージック。

そしてその音楽が、シンプルにポップなことがなにより素晴らしい。

おまけ

『F-A-R』リリース後、最初のライブフォト(2015年11月29日@高円寺amp cafe・撮影 / アケシン)

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SHUNTARO OKINO「F-A-R」をさらに深く知るために

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SHUNTARO OKINO 「F-A-R」特設サイト

沖野俊太郎×小山田圭吾(CORNELIUS)対談〈ナタリー〉

沖野俊太郎×川田晋也 (CAR10) 対談〈KIliKiliVIlla〉

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