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二年半ぶりにドイツで推しに会ってきた話②

コンサート前日。
空港に向かう朝も気分は晴れなかった。

実は4月末にドイツ鉄道を利用した際に苦い経験をしたので、フランクフルト行きを陸路から空路に変更したところで、頭が痛くなるようなニュースが入ったのだ。

5月の休暇による旅客増加と人員不足のダブルパンチでスキポール空港では、フライトがキャンセルされる事態が起きていた。在オランダ大使館からも空港における混雑についての注意喚起メールが届き、荷物検査で大幅に時間がかかることが予想されるため、余裕をもって空港に着くように促していた。

出発ギリギリになって「フライトがキャンセルされるかもしない」という新たな懸念事項が追加されるとは夢にも思っていなかった。まじ勘弁してくれ。しかし、備えあれば憂いなし。空港の混雑状況をチェックできるアプリをダウンロードし、事前にチェックインも済ませて、手荷物だけで行くことにした。

当日も余裕を持って4時間前にスキポール空港入りした。すると確かに人でごった返してはいた。列も長い。けれども空港はきちんと機能している。止まらない利用客の列をスタッフは見事に捌いていた。一番恐れていたフライトキャンセルも杞憂だった。ありがとう、人員不足で大変だろうにありがとう、スキポール空港の職員たち〜!!

チェックインゲートの前で今か今かと待機し、沖止めされた飛行機まで向かうバスに揺られて、やっと自分の座席に着くと安堵の息が漏れた。機長のアナウンスが始まると少し涙が出そうになった。

「Everything is on board. It is a beautiful day to fly. (全て順調。今日は飛ぶには良い天気だ。)」

ーー

無事にフランクフルトの安宿に荷物を置いたと同時に、ムボン(ママムファン用のペンライト)だけ持ってダッシュで再びフランクフルト空港に向かった。海外ムムと合流してママムをお出迎えするためだ。

というのも、海外ムムに出会える貴重なチャンスだと思い、数日前にTwitterで現地で会うことを呼びかけていた。

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すると秒で返信が来て、K-POP FLEXに参加予定のムムで構成されたグループチャットに招待してもらえることになった。その人数と熱量には圧倒された。ざっと見るだけで、アメリカ、メキシコ、フランス、ラトビア、イギリス、中国などなど世界各地からのムムが集結していた。

滝のように流れていくチャットを遡ると、空港でムムが集まること、そしてコンサート当日のママムの出番でバナーを掲げることが予定されているという情報をキャッチすることができた。



「バナー5000枚用意したから、当日誰か運ぶの手伝って!」

「もちろん!」

「私も協力するね。」



といったやり取りがあまりにもカジュアルにされていた。つい素通りしてしまいそうになるが、誰かが一からバナーをデザインし、印刷してから手分けして会場まで運び、それを世界中から集まった初めて会うファンたちが配布するという一連の動きが自発的に行われるのは改めてすごいことだと思う。ヨーロッパでもオタクの組織力と行動力は半端ないのだ



ーー



空港の到着ゲートに着くと、すぐにムムを発見した。事前に「今日こんな格好をしています!」というやり取りをしていたし、私はムボンを片手に携えていたので一発だった。初めましてはやや緊張するのが常だが、「ママムが好き」という共通点は会ってすぐに打ち解けるのには十分だった。



「私はイギリスに住んでるんだけど、実はドイツに来るのは初めて!」
「私も〜。生まれ育ったのは香港だけど、今はイギリスに住んでるよ。」
「初めまして、私は出身は日本だけど今日はアムステルダムから来ました。みんなのBias(推し)は誰?」

ムンビョル!

異口同音。
ムンビョル強し。世界中に夢女を大量発生させている事実の裏が取れた瞬間だった。

「どうしよう、もうすぐこのゲートからママムが出てくるのかな?」

「どうだろうね、VIPルートから出ていくかもしれないし。」
「でもちょっと人が増えてきたしパニック状態にならないといいんだけど...」

そんな感じでソワソワしながら待機すること30分以上。しかし一向にママムが出てくる気配はなく、その代わりに何度も名画『Love Actually』のオープニングさながらの光景に遭遇した。花束を持って出迎える人、交わされる熱い抱擁。その度に出待ちで整列するK-popオタクたちから湧き上がる歓声と拍手。

更に時間が経過する。突然、香港ムムさんがスマホをじっと見つめた後にこう言った。「ママム、リハーサルに直行したみたいだって!」

そう。ママムは別ルートを通ってとっくに空港を後にしていたのだった...。

「ママムが見れなくて残念だけど、この混雑してる状況を彼女たちが避けれてよかったよね」とイギリスムムが言い、私たちはうんうんと大きくうなずいた。「少なくとも良い再会シーンはいっぱい見れたね」と、笑い合った。

コンサートまで残り1日。

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(続く)

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