12/19 天下繚乱シナリオクラフト「英傑漫遊記」感想
……そういえば最近、シナリオクラフトの場合タイトルを付けてないな。
今度から要望したり付けるようにしよう。
さて、今週は天下繚乱のPLだった。
レギュレーションはいつものようにシナリオクラフトをベースにしたハウスルール。そう言えばこのハウスルール周りもnoteに載せようとか書いてたけどまだ実現できてないな。
PLが3人だったので、選択するハンドアウトも3つ、作成してくるプレサージ(ヒロイン・ライバル・協力者の重要NPC)も3人。なんというか一番バランスの取れた布陣である。
GMから提示されたグランドオープニング、まぁ大喜利のお題みたいなのはこうだ。
相模国と江戸を結ぶ東海道沿いにある宿場町、名物「酒まんじゅう」、旅人の胃袋を満たしてきたこの名物の利権を独占し、悪の限りを尽くそうとする
「大商人」たる[ライバル]に英傑たちは立ち向かう!
これを骨子にして、使いたいPC(どこかで遊んだPCの継続使用だったり、ここぞと新キャラを投入したり)していくのがおれたちの普段のやりかただ。
プリプレイ
PC①の場合
前回(https://note.com/moo_hw/n/ne6a628d2491c)のおれは周りの出方を見ての調整役だったので、今回は真っ先にハンドアウトをチョイスし、今回はPC①として、白虎/剣客/異邦人として作成した"円卓の騎士"ギャラハッドをエントリー。2回目のプレイなので、経験点も追加投入での参戦だ。
聖杯探索行のさなかで時空破断により化政時代に現れたという設定で、神の加護により異邦人だとして怪しまれたりはしない(異邦人の特技の解釈)ため、サー・ガラハッドが訛って「相良某」として伝えられる旅の武芸者、という小ネタを挟んだり。
セッション中にも思ったけど「(聖杯探索の)巡礼の旅の途中です」とか「(Godっていう)あなたとは違う神を信仰しています」とか、「ウソは言ってないんだけど解釈の幅が広い言葉」がすんなりと伝わりやすく伝わる、みたいなところもあるのかもしれない。
村雨丸を見つけ出して聖杯の探索行に戻りたい、という【宿星】の一方、鞘走れば水を生じるという村雨丸の力が聖杯の奇跡にも連なるものかもしれない、などと考えてもいたりする。まぁ、聖杯伝説のとおりなら、聖杯見つけた後天に召されちゃうんだけどね。
自分の演る騎士ロールのテンプレみたいな、誠実かつちょっと歯の浮くようなことを素で言ってしまうタイプのPCなんだけど、円卓の騎士らしさ、ということでPC③の力士には「まるで日が天にあるときのガウェインの如き豪傑ぶり!」とか言ったりしちゃう。
そんなPCだったので、今回のヒロインは分かりやすく酒まんじゅう売りの看板娘、だとか酒まんじゅう職人の娘、とかではなく、奉納用に作る酒まんじゅう、という設定をこしらえての「巫女」とした。仕える神は違えども、信仰の守護者として振る舞おう、というハラである。
ヒロインの大喜利のお題としては「伝統を守る人物」だったしね。やろうと思えば祀られていた神の方でもヒロインになれたかもしれない。いつかやろう。
あ、セッションでは結局、奉納用の酒まんじゅうに入れる酒種には巫女の口噛み酒が使われてるって設定も挙げてたんだが、ここは結局触れられずじまいになってしまった。このあたりはPCが触れる糸口がなきゃスパッと切ってしまうのもアリだ。
PC②の場合
PC②も二回目の登場になるのかな? 朱雀/神職/いくさ人で、藤原秀郷の血に連なるという女武者。「奉納刀」に指定した「無双弓・追魂」からの雨あられの矢を放つスタイルはきっと誰もがやりたくなるビジュアルだ。
いくさ人の特技から、〈毒〉属性で放たれる矢はまさに戦国のならい。今回は思惑外れて無生物への弱みが出てしまったところはご愛嬌。戦国時代のわざはあくまで人を害するわざなのだ(
時空破断によって飛ばされた先で信長と見え、授かった幼子を失うというハードな過去設定を持ちつつ、村雨丸を見出すことで時空破断の影響をなくす=失った我が子、という事実も塗り替えよう、という孤独な観測者のようなモチベーションで活動しているクール系女武者、でもある。
今回の用意してきたNPCはライバル枠。実はエントリー順ですでにPC③が協力者枠として舞台となる町に投資してきた老商人を出してきたことと呼応する形で、妖艶なる悪徳女商人を投入してきた。
これがまた、背景情報もいい感じで、もともとは下働きだったのが、大店の主に才覚を認められ番頭にまで上り詰めたあとに大店の主人が死去、その後店を牛耳り頭角を現す……というなかなかの正体不明悪女ムーブ。
PC本人の動機の深いところに「母親」を持ちつつ、設定した敵は妖艶系女商人。おれはこの段階で結構ドロドロしたものを想像していたりした。
PC③の場合
PC③は初登場の青龍/力士/天狗の力士。蘭学でいうストリートファイターとして、各地の草相撲を巡業しつつ、江戸の本相撲の土俵にもあがる正真正銘の力士。
曰く「私の体重は53貫です」……よし、出オチだな?
ていうか【体力】に経験点10点振っての10はちょっとおかしい。
マイナー・メジャーまで組み合わせて固定値60点の打撃はちょっと他の青龍を過去にしちゃった感さえある。これが神の戦士だ。そりゃギャラハッドだって昼間のガウェインに例えちゃうってもんだし、なんなら天狗は太陽の使者だし、言っといてナンだけど割と真実を突いた発言になってた感。
設定上、飛べない天狗ということで里を追われたあと、閻羅王・白面の君にそそのかされて悪童として名を馳せ、ついには本相撲に殴り込みをかけ……谷風や雷電にボコられて改心したという経緯を持つ。
人間離れの【体力】30をボコった横綱たち。これが神仏の域というやつか。
PCとしては実に落ち着いた雰囲気。それで200cm超えの巨躯なんだから安心感なのか威圧感なのかわからないところだがとりあえず静かに話を聞こうって気にはなるよね。
設定してきた「協力者」枠のNPCは前述のとおり舞台となる町に投資してきた老商人。結構な大店の隠居であり、老後の楽しみにシムシティを決め込んだいたという、実はなかなかしたたかなところのある老人だ。今回はGMからの提案もあり、舞台となる宿場町への奉納相撲の誘い、という興行プロモーターの側面まで持つこととなった。
今回はヒロインが神職、力士PC……といった辺りで設定が噛み合って新たな設定が生まれていたようす。こういうのもシナリオクラフト(&おれらのレギュ)の醍醐味である。
PC間コネクション
本編に入る前にもう少し前フリをば。
通常のFEARゲーと同様、天下繚乱でもPC間コネクションを結んでセッション内での合流とかを円滑にする仕組みがある。
「かつて妖異と戦った」っていうド鉄板に運用される関係性がある一方、おれなんかは結構天の邪鬼なところがあるので、そんな「共闘」勢が揃い始めると決まって別の関係性を設定したがる悪い癖がある。
今回はPC③@力士PCからおれのPC①に対して、それこそ「共に戦った」設定によるコネクション提案があったので、それは快く受けることにした。その時のやり取り想定が「昼間のガウェイン卿のごとし!」だったのである。
PC②のいくさ人と力士の間は、ちょっと面白くて「かつてであったときに食べ物の好みがあったとかで”友情”のコネ」という提案。こういう、シナリオのテーマに寄り添った関係性を作っておく、ってのはウマいやりかただ。
そしておれの方からはPC②のいくさ人へ…というところでおれの天の邪鬼の虫が騒ぎ出した。
(双方ともに友好的なコネクションなんだからもう少しひねってもいいんじゃね?)
ということで、おれの方からはシナリオの切り口として、こういう提案をした。
「そっちのいくさ人もこっちのギャラハッドも、ともに『時空破断を正しておわり、ではなくその先の目的も持った稀人同士』。今回のセッションでそれを語り合うシーンを作るつもりで初見の『共感』はどうだろう?」
考えてみれば、3人PLのセッションで意図せずに稀人クラスが2人揃うのも面白い状況だしね。ついでにこのやり取り、ほぼ自動的に【宿星:村雨丸の探求】をクリアしやすいという副産物もついてくる。
PC②のPLはこの提案を呑んでくれたんだけど、それがどのように働いたかはメインプレイの感想にて。
メインプレイ
ここからは記憶に残ったプレイングのダイジェストを。
1.GMの導入が丁寧!
これはセッション終了後の経験点算出、「あなた自身が楽しんだ」のところで話したこと(みんなもこの項目にチェックするときはGMを讃えていこうな!)なんだけど、今回の個別導入ではそれぞれの担当NPCと邂逅、話を聞いて【宿星】を得て……というやることは「いつもの」だったんだけど、場面転換からNPCの演出・セリフから、かなりの事前準備を感じさせる内容だった。
一瞬だけPL視点としては「OP、ちょっと尺が長くないか?」とかの考えもよぎったんだけどね。その危惧を上回る丁寧な導入だったし、他の人のシーンを見ているのも楽しい、そんなオープニングフェイズだった。
それは、お題になるNPCを並べた上で、ヒロインを通じて「豊穣祭を成功させよう」っていうモチベーションを作った部分でも発揮されていたように思う。
2.【体力】はすべてを解決する
あんまりこの手の流れでデータの凄さを書いてもな、って思うんでデータ面の感想は少なめにしているんだが、それでも。
今回の力士、【体力】基本値30、ボーナス10、さらに[有利]で+2。すなわち固定値12で判定ができてしまうのである。
PL「【体力】で情報収集できるシチュエーションさえ来れば勝てる」
シナリオクラフトは合流を勧める意図もあってか、情報収集の難易度が高めに設定されている。平均的な能力値判定の基準値が4のところを、目標値13とか言われるのがザラなのだ。ダイス目で9が必要。これはちょっと厳しいな……
みたいな常識を張り手の一撃で粉砕するのがこの神の戦士である。
目標値13! 判定値12!
押しも押されもせぬ「ピンゾロじゃない限り成功」の構図であった。
ちなみにPLによると、この後天狗のレベルを上げてカラスに変身する《黒鴉変》まで取得するビジョンらしい。
さすがにカラスになって相撲とかどうなん? ってツッコんだおれに対し「ほら、デブチョコボみたいなカラス」と返したPL、お見事。納得せざるを得なかった。
3.騎士ロール楽しいです
なんというか、円卓の騎士をロールプレイするにあたっては、やはり物語の登場人物らしく実に善であり誠実な騎士、というロールを心がけた。NPCの巫女さんのリアクションも良かったし、セッション内で力士PCに再会したとき時にえらくテンション上がってたり(ちょっと男の子っぽさ?)。
カバーリング型タンクにしたこともあって、理想の騎士像を余すことなく遊べた感触だった。
ヒロインとの別れの際に、豊穣を祈る神職である彼女にあえて、「この国の、黄金色の稲穂は頭を垂れて慎ましい存在と言われていますが……ひとりでも祭りを成し遂げようとしていた貴女には、私の知る麦の穂のような力強さを感じ、私は遠き故郷を思ったものでした」ってなことを言えたのは自分の中で記録しておきたい言い回しだった(ので書いとく)。
以下は悪ノリのひと幕。
(ラスボス最後の1体となって、セットアップに)
おれ「《直衛守護》をボスに使います! 同意しますか?!」
《直衛守護》
同意した対象の移動に合わせて移動を行うことのできる特技。思い鎧を身につけたカバー屋は得てして【行動値】が低いため、使っておくと切り込んでいった味方が前線で孤立、といった事態を防ぐことができる。
つまり敵ボスへの《直衛守護》宣言とは「(お前の同意があれば)どこへ逃げても追い続ける」という宣言に他ならないのだ!
……うん、悪ノリだね。多分ギャラハッドはそんなことしない。
というかGMに「知るかアホ」くらいに流してもらえることを期待しての軽口で変に停滞させてしまったのは良くなかったね。
4.ギャラハッドそんなことしない
思えばセッション開始前、自己紹介からそんなことを言っていた。
「今回のライバルは妖艶女商人ということだけど、このままラスボスってことで斬りつけるのは理想の騎士像としてアレなんで、なんとかシナリオクラフト的に直接斬らない方向で行きたいですね笑」
次シーン、クライマックスフェイズ。
全然そんな方向に転がらなかった。
妖艶女商人は妖異のオーラをまといながら、代官を抱き込み、幕府の要職に上り詰めるという野望を持っていることまでが発覚してしまったのだ。
このままでは「ボクのキャラはそんなことしません」ってクライマックスフェイズで遁走してしまうことになってしまう。
このままではいけない。そう思ったおれは一計を案じた。
おれ「GM、クライマックス前にシーンください!」
こういうとき大抵のGMはOKしてくれるものだ。
おれ「ではシーンもらいます。マスターシーンです!」
すかさずマスターシーンを宣言するおれ(※PL)。
そして妖艶女商人がひとり、陰謀を口にするシーンで、纏っていたオーラの方が男の姿を取り「このままこの女を使って全てを思うがままに!」と。
そう! 妖艶女商人を番頭に取り立てたあと急逝した大店の主。状況だけ見たら妖艶女商人に何らかの方法で暗殺されたと見られがちなその男こそ、黄泉還って彼女に取り憑き、酒まんじゅうの利権を独占しながら過去の風習なども全てないがしろにしてきた真犯人だったのだァーー!
と、マスターシーンで一気に真相(という名の新説)を暴露(という名の開陳)。黄泉還った前店主の怨霊を倒して女商人も救うのだ! という展開にもっていった。これなら斬れる!!
……久しぶりに奮った豪腕であった。
まぁ、このnoteの読者である善良なTRPGerなら、いきなりマスターシーンに入るまえに「GMおよびみんな、このままではクライマックスのモチベ的に厳しいので、真相ということでこんな設定を付与することはできないだろうか」って提案するのが最も冴えたやり方なのは分かってると思う。
でもなんか豪腕を奮ってみたくなるときもあるんだよ。
もしかしたら【体力】10の力士が背中を押してくれていたのかもしれない。流れるように巻き込んですまない。
5.事前のフリの回収
そんなスタンドプレーを話のオチにするのは流石に忍びないので、いい話で終わるようにしよう。
PC間コネクションで設定していた「お互い化政時代からは遠く離れた世界から来た稀人同士、共感する」というシーンをどこかで挟もうという話。
コネクションを結んだのはおれなのに、回収してくれたのはPC②のいくさ人の方だった。
それもシーンとして情報収集の場面を茶屋に設定し、そこに登場したギャラハッドと自然に過去がたりが始まるというお見事さ。強引にちゃぶ台を返しに行ったおれとはスマートさに於いて力士と一般人くらい違う。
ある意味淡々と、それでもその身に起こった我が子との別離まで、全てを包み隠さず話してくれたいくさ人の彼女に対し、ギャラハッドとしては旅の成就(=村雨丸による時空破断の修復、それによってこの世界で起こった我が子の死をなかったことにする)を願わずにはいられなかった。
彼女のもうひとつの目的、閻羅王信長への復讐については秘められたまま、というのもまた良き。メタ的に「聞かされなかったこと」まで美味しく感じられるというものだ。
毎回同じようなシメで申し訳ないが、シナリオクラフト(+PCとNPCの持ち寄り)の遊び方は、全員が持ち寄る物語のタネによって、かなりのポテンシャルが引き出せると思っている。
『天下繚乱』のシナリオクラフトが掲載されている『江戸絢爛』は手に入りにくくなっているが、ここはそう、新版のシナリオクラフトを希望する旨をアンケートに送るフェイズに入ってきているのではないだろうか?笑
ということで、プレイの記録でした。
読んでくれた皆さんが良いセッションに出会えますように。
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