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天下繚乱シナリオ『相模国風土記異聞・小田原魔神忍風録』

この記事の目的とお願い

 やっぱり普及において重要なのはシナリオの供給だよ兄貴!

 ということで、人生初、シナリオテキストの公開に踏み切ってみた。外部向けに書くのは初めてなうえ、身内セッションをリライトしたものなので、ところどころわかりにくい所があるかもしれない(総テキストだしね)。そのあたりはTwitterのDMなどで連絡をくれれば対応したい(@MOO_hw)。

 本シナリオは、クイックスタートでも遊べるようにしているが、いわゆる改変も大いに可、だ。PLと話し合ってすり合わせまで含めて大いに楽しんでほしい。
 もしプレイしてもらえたら、天下繚乱の経験点チェック項目にある「SNSなどで感想を発信した」などを利用して感想を伝えてくれるとうれしい。これがお願いだ。
 思い切って公開した甲斐もあるし、調子に乗って似たようなことをしだすかもしれない。
 そう、普及もそうだが、もうひとつの大きな目的は「身内で遊んで楽しかったシナリオだし、遊んでもらった反応とか知りたい!」という自己顕示欲に他ならないからだ(笑)

だから読んだだけでも感想でもほしいっちゃほしい(小声)

 さて、本シナリオは小田原を舞台に魔神が出てきたり風魔忍者が出てきたりといういわゆる伝奇モノシナリオだ。3人というコンパクトなシナリオのため、各ハンドアウトにキーとなるNPCが設定され、シナリオ上の優先度にはどれも遜色がない作りにしている。気に入ったハンドアウトを選んでくれればいい。

 ちなみに、ヒロインの名前が公式キャラクターの十三代目服部半蔵の娘と同じなのはセッション後に気づいたミスで、何の意図もない。まぁそういうこともあるだろう。

 さて、それではシナリオ本文に入る。
 ここからはPLをやる人は基本的に閲覧不可だ。もし読んだ上でPLとしてプレイするときにはGMにきちんとそのことを申告されたい。


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シナリオ本文
【注意】ここから先はPLは読まないこと

■シナリオデータ

 プレイヤー:3人
 PCレベル:3~4レベル
 プレイ時間:4~6時間

■背景

 かつて小田原を擁した関東の覇者・北条氏に仕えた風魔忍軍。多くは江戸で盗賊になるなど身をやつしていったが、一部は小田原に残り続けていた。
戦国の昔よりこの地に在った上古の魔神を祀ることで和御魂・荒御魂に分かち、大地の守護者として封じてきた「封魔の一族」こそが、風魔忍軍の祖であったのだ。彼らは太平の世に在っても隠棲し細々と封魔の務めを果たしていた。
 富士の噴火と妖異の跋扈が、この隠棲の時代を終わらせた。彼ら風魔に接触したのは閻羅王・織田信長。まつろわぬ民たちを従える戦国の覇者は、風魔に恭順をせまる。古の魔神を解き放ちてば、風魔の希望にして伝説たる風魔小太郎を黒母衣衆に加えるという織田信長の言葉に従う風魔たち。
小田原に縁深き者、守護者であった北条の血を妖異の呪いで穢し、環状列石から魔神へと送ることで、風魔の大忍法「風狂魔(かざぐるま)」は完成するのだ。

 風魔の巫女、楓は魔神の和御魂・ワカツマノカミと交感した経験から、織田に付くとした風魔忍軍から逃れ、風魔の努めを果たそうとしている。

 北条の血を引く侍、岩槻忠真は、富士の噴火によって苦しむ小田原の代官として派遣されたとき、風魔の手によって囚われてしまう。彼の顔を盗んだ風魔忍軍の現頭領・風魔靭九郎は、岩槻の姿で悪逆の限りを尽くし、その呪いを捕らえた岩槻へと及ぼすことで「妖異の呪いを受けた北条の血を引くもの」を作り出す。

「風狂魔」の儀式が始まったことで、魔神の和御魂ワカツマノカミは荒ぶる本体に力の大半を奪われ、僅かな力しか持たない状態で、助けを求めることしかできない。

 英傑たちが風魔の陰謀を阻止し、小田原に平和をもたらすことで本シナリオは終了となる。

■今回予告

 霊峰富士の噴火により、小田原藩は未曽有の危機に瀕していた。
 豊穣たる穀倉地帯は実りを失い、石高の実に半分を失う事態。

 これを好機と捉えるは、遥か戦国より熾火のごとく燻る影。
 まつろわぬ一族は、荒ぶる魔神をもって幕府転覆を謀る。

 小田原を覆う凶事に失われた豊穣を求めて、暗雲垂れ込める城下を英傑の光が照らす!

 天下繚乱
 『相模国風土記異聞・小田原魔神忍風録』
 百花繚乱綾錦、いざ開幕!

▼シナリオ注釈
 富士の噴火により、小田原藩の農業生産力は大きく低下している。小田原藩の再建のため、主要な宿場町と近隣の農村の単位で幕府から代官が派遣され、臨時的に統治している。シナリオ内で登場する宿場町はそのひとつであり、代官としてPC③のコネクションである岩槻忠真が統治している。

■キャラクター作成

●ハンドアウト

▼PC①用ハンドアウト
クイックスタート:流浪の剣客
コンストラクション:特になし
カバー:旅の英傑
コネ:楓 関係:庇護
 東海道をゆくさなか、うっかり富士に見とれて宿場への到着が遅れた夜の旅路、怪我を負いうずくまる女性とそれを取り囲む影に行き会う。割って入るキミに女性は告げる「剣士どの、我ら風魔に助力を!」影たちは嗤う「笑止!」事情はともかく、多勢で女性を襲う輩を許してはおけない。

▼PC②用ハンドアウト
クイックスタート:人界の守護者
コンストラクション:神霊
カバー:放浪の神霊
コネ:ワカツマノカミ 関係:幼子
 東海道をゆくさなか、小田原を臨む峠。キミはそこで、古の環状列石と、それを通じて妖異の力で穢されてしまった霊脈に行き当たる。そして、キミの前に浮かび上がる古き童子――カミの姿。彼はキミに自らの荒御魂を止めてほしいと懇願してきた。

▼PC③用ハンドアウト
クイックスタート:天下のご老公
コンストラクション:天下人
カバー:指定なし
コネ:岩槻 忠真(いわつき・ただざね) 関係:疑念
 東海道をゆくさなか、小田原のある宿場町。キミがたどり着いたその時、広場では多くの農民が磔にされ、直訴の罪のもと処刑されていた。役人が告げる執行者の名は代官・岩槻忠真。キミと日の本を憂い、為政者のあるべき姿を語り合った友。彼が本当にこんなことをするだろうか?

▼ハンドアウト注釈
※クイックスタートでは白虎が不在になるが、シナリオの進行によりPC②の《千変万化》によって《起死回生》をコピーする展開がある。PLが不安に思う場合には《起死回生》がない分のケアはできている旨を伝えるとよい。

●PC間コネクション

 PC①→PC②→PC③→PC①の順で取得すること。
 個別導入のシナリオのため、合流をスムーズにするために全員が初見の第一印象でのコネクションとなるのは推奨しない。

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■オープニングフェイズ

●シーン1:ワカツマノカミとの出会い

シーンプレイヤー:PC②

◆解説
 ワカツマノカミとの邂逅シーン。
 環状列石は妖異の力によって穢され、霊脈の流れは淀んでいる。
 ワカツマノカミはこの地に祀られたカミだが、霊脈を穢され、淀んでしまったことにより大きく力を失っている。
 なお、環状列石はヤマトの民がこの地の霊脈に敷設したカミと人をつなぐ古の装置である。これを利用して妖異は霊脈に妖異の力を注ぎ込むのである。
 
▼描写
 東海道をゆくさなかで感じた不吉な気配。街道を離れてたどり着いた小高い丘の上には、古人(いにしえびと)が築いた環状列石があった。人と神とをつなぐための場は、妖異の力によって穢され、霊脈の流れがせき止められてしまっている。
 キミの傍らに突然、美豆良を結った童子姿の10歳ほどの少年が現れる。いかにも神霊、という気配をまとっているが、それはあまりにも弱々しい輝きだ。

▼セリフ:ワカツマノカミ(10歳ほどの童子の姿)
「私はワカツマノカミ。この地に祀られたカミだ」
「このまま妖異の力がこの地の霊脈を侵せば、私の荒御魂が妖異となってこの地を滅ぼしてしまう」
「私を祀る一族の声も殆ど聞こえない。彼らの声はこの石柱を通して私に聞こえていたものだ。私は彼らとともにこの地を守り続けるカミでいたい」
「守護の力もつ刀のカミよ。私を、そして私を愛したこの地の民を助けてほしい」

◆結末
 PC②がワカツマノカミに協力することを決め、小田原の領内に向かうことでシーン終了となる。このシーン以降、ワカツマノカミは一寸法師のようなサイズの精霊となってPCと行動をともにする。風魔忍軍の楓と出会ったときには、楓の反応を演出するとよい。一方、その他の風魔忍軍にはカミの姿も声も聞こえていない。

▼処理
 PCに【宿星:小田原の民を救う】を渡す。
 PCに[情報項目:ワカツマノカミの荒御魂][情報項目:小田原の凶事]を渡す。

●シーン2:追われる娘と風魔忍軍

 シーンプレイヤー:PC①

◆解説
 PC①が追われる女性を助けるシーン。描写の前半は社から聞こえてくる言い争い、後半はPC①が介入した状況を想定している。頃合いを見て登場を促すこと。

▼描写
 夜の街道をゆくPC①。次第に大きくなっていく富士山に見とれて宿場町にたどり着くのが遅れてしまったキミは、街道を外れた小さな社の前で、幾人かが集まり、言い争う声を聞く。数人の男が、しゃがみこんだ娘に鋭い言葉を浴びせているようだ……。

▼セリフ:男たち
「もはやここまでだ! 我らが再び小太郎様を主と戴くため、裏切るというのなら容赦せん」

▼セリフ:楓
「小太郎様を戴くといいながら閻羅王に従っただけだろう! 風魔の掟はこの地の神と在り続けること。それを裏切ったのはお前たちだろう! 」

▼描写2
 PC①が近づくと、目に入るのはしゃがみこんでいるのは美しい黒髪を短くまとめた女性。PC①が割って入ると、取り囲む男たちの体からは、染み込んでいたように妖異の気が立ち上り、男たちはひるむ。こいつらは妖異に憑かれた羅刹だ!
 しゃがみこんでいた娘はPC①に助けを乞うが、男たち(そしてその中の妖異)はPC①の姿に宿星の光を認め、それを嫌うように離脱していく。

▼セリフ2:男たち
「この力、もしや宿星に導かれたという英傑か!?」
「……フン、笑止! 下忍の巫女が1人でできることなどたかが知れている。ここは引くぞ」

▼セリフ:楓
「剣士どの、我ら風魔に助力を!」

◆結末
 離脱していく風魔忍軍に「待て…!」と声を上げる娘だが、よく見ると足元には血溜まりができている。その場に倒れ伏しながら、PC①に「頼む…風魔を止めてくれ…さもなくば小田原に凶事が…」と言い残し、気を失う。
 この先の集落で手当をする必要がある、と伝えること。

▼処理
 PC①に【宿星:風魔忍軍の野望を止める】を渡す。
 PC①に[情報項目:風魔忍軍][情報項目:小田原の凶事]を渡す。

●シーン3:宿場街の不穏

 シーンプレイヤー:PC③

◆解説
 PC③が小田原藩の様子を見るため、そして旧知の岩槻忠真を訪ねるために訪れた小田原の宿場町で、農民たちの虐殺と、次第に妖異の陰気に支配されていく領民を見るシーン。

▼描写
 富士の噴火の後、小田原の宿場町からは活気が消えて久しい。待ちゆく人もみな背中を丸め、まるで人目を避けるように歩いている。そんな中、町の中心部に向かう人の流れ。気になって追ったその広場には竹格子が組まれ、人々が集まっている。磔にかけられた農民たちと、その前で口上を述べる役人たち。
 ※シナリオの都合上、ここでの犠牲は発生してしまう。ハンドアウト取得時に避けられない犠牲があることなどは説明しておくとよいだろう。

▼セリフ:役人
「この者たちは代官・岩槻様にその蔵を開けろと迫った! 幕府の転覆に等しいことを直訴してきた愚かな農民どもである! よってことごとくを磔刑に処する!」
(次々と磔にされ、槍で一突きにされる。10代前半の少年なども含まれる)
「なお、この者たちの村の蓄えは好きにせよと岩槻さまよりお達しがあった。日の本の危機であれば、戦国の習いにて乱取りを認めるものなり!」

▼セリフ:宿場町の人々
「乱取り……蔵にきっと食べ物を隠しているにちがいない……明日だ、みんなと武器を集めてあの村へ行くんだ……食うためには仕方ないんだ……!」

◆結末
 英傑たるPC③には、処刑の瞬間にほとばしる無念の陰気がこの宿場町、そして小田原を包む暗雲へと昇っていくのが感じられる。そして人々は、血走った目で農村を略奪に向かう……。
 PC③の友、岩槻がこのような圧政に及ぶわけがない。
 町人たちをこの場で止めるのは難しいため、農村に向かうよう促すこと。

▼処理
 PC③に【宿星:友の豹変の真相を知る】を渡す。
 PC③に[情報項目:岩槻忠真][情報項目:小田原の凶事]を渡す。

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■ミドルフェイズ

 特に言及がない限り、ミドルフェイズでの登場判定の目標値は10とする。

●シーン4:封魔の一族

 シーンプレイヤー:PC①
 登場難易度:8
 PC③は登場不可

◆解説
 怪我をした楓を小さな農村で介抱しているシーン。楓から詳しい事情を聞くシーン。

▼描写
 楓を担ぎ込んだ農村は富士の噴火以来疲弊していて、若い者たちは宿場町の代官に窮状を訴えに向かっているという。
 空き家を借りて介抱しているうちに気がついた楓は、事情を話し、改めてPC①に助けを求める。

▼セリフ:楓
「情けないところを見せちゃったね。アタシは楓。風魔の忍であり、巫女でもある」
「風魔とは封じる魔と書いて封魔、だったんだって。わたしはその巫女として、この地に眠る魔神を封じてきた」
「それを開放するだけじゃない、妖異の力に染め上げて暴れさせよう、そうすれば風魔伝説の頭領、風魔小太郎の復活も叶う……って、今の頭領が妖異の親玉にそそのかされてね。沢山の仲間が里を捨てた」
「でも、いくら私達が封じてきたからって、カミさまは私達に害なしたいわけじゃないんだ。巫女としての力が足りないから少ししかわからないけど、アタシは神様の心に触れたんだ」
「アンタがどうやってアイツラにまとわりつく闇を払えるのかは知らないけど。英傑っていうのなら力を貸してくれないかい? いままでカミさまとともにあった風魔一族が神様を汚しちゃいけないんだ」

◆結末
 事情を話してPC①のリアクションを待ったら、町の外が騒がしい。
 (カメラを切り替えて)宿場町の侍や町人が手に手に武器をもって村になだれ込んできている!

●シーン5:羅刹となった民

 シーンプレイヤー:PC③
 登場難易度:8

◆解説
 略奪を行おうとする小田原領民をPC③が収めるシーン。PC数が多いほど有利となる判定による解決があるため、先ほど騒ぎを聞きつけたPC①や、妖異の気配を感じ取り赴いたPC②などにも登場を促すとよい。

▼描写
 宿場町を発った町人たちが、PC①や楓が滞在している村に押し寄せ、略奪を働こうとしている。目を血走らせ、僅かな蓄えすら奪っていこうとするそれは、妖異に魂を奪われかかっている姿に他ならない。
 この動きを察知していたPC③は、凶行に走ろうとする人々の説得を試みる。しかし暴徒となった人々の体からは、妖異の黒い靄が溢れ出そうとしている……!

▼処理
 このシーンに登場しているPCは全員交渉/【意思】11の判定を行う。失敗すると「群魍」のメインプロセスによる攻撃を1回受けること。群魍は【HP】を持たず、メインプロセスを行いPCを攻撃するだけのエネミーであることに注意。
 登場PCは順番に判定を行い、1人でも成功者が出るまで判定を繰り返す。そのため合流を促すと良い。

◆結末
 英傑の一喝により、人々は正気を取り戻していくが、そこから抜け出た妖異たちは黒いモヤのようになって立ち上っていき、小田原を包む暗雲に溶け込んでいく。そのモヤからは、富士の噴火以来人々が抱いていた不安が、恐怖政治を繰り広げる岩槻という対象を得て恐怖や呪いとなっているのを感じる。それを見送ると、楓が身震いするように自分を抱えながらつぶやいた。
 
▼セリフ:楓
「“呪い形代”…たしかにアイツらはそう言っていた。その秘術をつかって、この地の呪い……あの雲に集まっているんだと思う……を1点に集めることでカミさまを妖異に変えるんだって」
「小田原のどこかに、この術について知っている人がいるって聞いて探していたところで、風魔の裏切り者に見つかって…」
(ワカツマノカミを見て)「カミさま? 本当に……? よかった……(涙ぐむ)」

▼処理2
 登場PCに[情報項目:呪い形代を知る者]を渡す。
 以降のシーンは情報収集シーンとなることを宣言すること。

●シーン6:カミの憂鬱

 シーンプレイヤー:PC②
 条件:「ワカツマノカミの荒御魂」を調べた

◆解説
 ワカツマノカミからPC②に神のあり方について問いかけをするシーン。特に判定等は行わない。
 クライマックスでワカツマノカミが勇気を見せることの伏線となる。

▼描写
 場所は特に指定がなければ、かろうじて霊脈の維持された小さな祠とする。林の中に開けた空間は清浄な空気を保っている。自らの荒御魂について分かるほどに、ワカツマノカミの不安が増していることがわかる。彼はPC②に問いかけてきた。

▼セリフ:ワカツマノカミ
「PC②、あなたはなぜ、自分を祀る民のもとを離れ、こうして旅をしているのですか?」
「私にはその勇気も力もない……。あるのは祀ってくれた封魔の民への感謝の念だけだ。でもそれだけでは彼らは守れない」
「最も恐ろしいのは、自分が変わってしまうことだ。民が祀りとともに与えてくれたこの姿を、私は気に入っている。だが、心の、いや魂の奥底には荒御魂をも超える混沌とした暴威が眠っているのが感じられるのだ」
「ただただ、凪であることを臨むのみ。災厄を薙ぐ勇気は、私にはない……」
「いまはただ、貴方が頼りだ」

◆結末
 不安と無力、そしてPC②に頼るスタンスを強調し、クライマックスで彼が勇気を振り絞ることへの伏線とすること。PC②がその問いに答えたらシーン終了となる。

●シーン7:呪い形代の真実

 シーンプレイヤー:PC①
 条件:「呪い形代を知る者」を調べた

◆解説
 「呪い形代を知る者」から直接「呪い形代」について聞くシーン。情報収集ではなく直接話を聞くシーンであるため、楓との交流として位置付けると良いだろう。

▼描写
 河原にある荒れ小屋。当時不浄の仕事と言われた産婆の住処である。白内障と乱れた髪の怪人として演出すること。
 老婆は英傑たちを不審げに見る。

▼処理
 登場PCから代表者1名を決定し、交渉/【意思】11の判定を行うこと。失敗すると「風魔の陰謀ポイント」(後述)が加算される。失敗しても、説得に時間はかかるが老婆の口から情報を得ることができる。

▼セリフ:楓
「ここにいるはずなんだが……うわっ……びっくりした…」
「身代わり……もしかして代官の岩槻は偽物?」

▼セリフ:老婆
「呪い形代か……あんたらがどうしてそのことを知っているかは問わないよ。あれは西国の陰陽道の流れを組む呪詛払いの技さね」
「自分の業を形代に受けさせる。あたしゃ間引きの依頼で赤子をシメるときに母親の髪をもらうのさ。赤ん坊が寂しくないようにとね。でも本当は、赤子の呪いが自分に来ないように呪いを掛けてるってわけさ。悪いのは母親だよってね。おかげでこの年まで長生きできてる」
「いいかい、アンタも呪い形代を使いたいのなら、なんにも関わりない奴に呪いは向けられない。髪の毛、爪でもなんでもいいから手に入れることだね。……あるいは、相手に化けてみせて、本人に呪いが行くよう仕向けるか」

◆結末
「小田原の凶事のおかげで間引きの仕事が多いんだ、とっとと行きな」楓の反応がスレていないことに居心地の悪さを感じたのか、老婆はしゃべるだけしゃべると小屋の中に引っ込んでいってしまった。楓とのやりとりをしたらシーンを終了すること。

▼処理
 このシーン後、「岩槻忠真」について調べていれば、直接問いただすシーンを開始可能となる。

●シーン8:この顔を見忘れたか

 シーンプレイヤー:PC③
 条件:岩槻忠真を調べ、呪い形代の真実のシーンを経過した

◆解説
 PC③が岩槻忠真を問いただすシーン。PC③にスポットが当たる中盤の山場である。問いただすためには《世を忍ぶ仮の姿》を解除する必要がある。PLが使用を渋るようなら助言すること。

▼描写
 PC③が宿場町の代官屋敷に踏み込んだとき、岩槻は自ら、荒れ地を開墾し芋を植えたという咎で農民たちを拷問していた。引っ立てられた農民たちの眼前には、畑の土が盛られていた。

▼セリフ:岩槻忠真(PC③の年齢に合わせる。最大でも40中盤の壮年男性)
「天下の検地帳の他に、お上に届け出もなく農地を拓くとは、年貢を逃れようとする地虫の如き所業!」
「それも石高に関わらぬ芋を植えようとは度し難い。貴様らなど土でも食えばよいのだ。ほら、用意したぞ、食ってみろ! 食わぬというのなら…」

(PC③に気づき)「何だ貴様は……?」

(《世を忍ぶ仮の姿》を解除した)
「……!? これは、尊きお方だと気付きませなんだ。平にご容赦を。拙者はいま謀反の疑いで農民たちを尋問していたのでござる」
「……はて、貴方様のようなご身分のお方とお会いできるような身分ではございません」
(間違いなく別人であると宣言すること)

▼描写2
 PCに追及されたりした場合(あるいはPCの反応を見て嵌められたことに気づいてもよい)、岩槻は正体を表す。顔を皮膚ごと剥がし、筋肉が浮き出た異形の顔を晒して、PCたちを排除にかかる。周りに仕えていた侍たちも、風魔忍軍の装束へと姿を変える。

▼セリフ2:岩槻忠真?
「……チッ、お付きも全員殺して入れ替わったってのにとんだケチがついたもんだ」
「もはや呪詛は満ちた! 見破られたならもうよいわ…忍法、顔写し」
「そうとも! 顔を頂いたのよ!」

▼セリフ:楓(PC①が登場していた場合)
「やはり! その姿は風魔忍軍頭領・風魔靭九郎! その姿は呪い形代のためか!」

◆結末
 風魔忍軍頭領・風魔靭九郎が姿を表したところでシーンを切り替えること。次のシーンは戦闘シーンとなる。

●シーン9:登場・風魔の頭領!

 シーンプレイヤー:先のシーンに登場していたならPC①。でなければPC③を継続する。戦闘シーンになるため、他のPCの登場を促すこと。
 条件:この顔を見忘れたかの次のシーン。

◆解説
 正体を表した風魔忍軍頭領・風魔靭九郎が配下とともに口封じに襲いかかってくるシーン。

▼処理
 風魔靭九郎、下忍×2との戦闘となる。
 風魔靭九郎と下忍は1エンゲージとし、PCたちのエンゲージから5mの距離を取って向かい合う形とする。エネミーの全滅または撤退でこの戦闘は終了する。
 また、この戦闘では以下の追加ルールを設定する。

①3ラウンド目以降の毎セットアッププロセスに「風魔の陰謀」ポイントが1ポイント加算される。これは戦闘開始時に伝えること。
②この戦闘で、風魔靭九郎は【HP】が1/2を切ったイニシアチブプロセスで《無影無踪》を使用し、退場する。これを打ち消して倒した場合、【HP】が0になるまで戦闘を続行する(《※ライバル属性》により退場)。どちらにせよ、次の戦闘時には【最大HP】の1/2だけ回復した状態で再登場する。このことは《無影無踪》使用時にPLに説明すること。

▼セリフ:風魔靭九郎
「小太郎様の復活のため! この場で死んでもらう!」
「岩槻忠真か、馬鹿な男よ! 北条の血を引く貴方に助力という我らの言をあっさり信じおったわ! ヤツにはこの地の呪いを一身に受けてもらっておるわ!」

◆結末
 英傑の一撃を受け、風魔靭九郎は撤退する。情報項目を渡すのを忘れないこと。

▼セリフ2:風魔靭九郎
「思ったよりやりやがる! だが小田原の呪いは十分に満ちた! “終末忍法・風狂魔(かざぐるま)”は成就寸前よ! もはや神剣・村雨丸であろうとも、我ら風魔の野望、断つこと能わず!!」

▼処理
[情報項目:終末忍法・風狂魔]を得る。

●シーン10:楓の問いかけ

 シーンプレイヤー:PC①
 条件:クライマックスへの条件を得た

◆解説
 楓がPC①に話しかけてくるシーン。セリフはPC①の設定によって問いかけを修正すると良い。基本的には回答の内容に拠らず、結末へと進むこと。

▼描写
 箱根の山中を進む英傑たち。じっとりと熱と湿気が強くなっていく。すこし息をつきながら、楓が話しかけてきた。自身のこと、PC①のこと。

▼セリフ:楓
「日の本が滅ぶかも、って、アタシたちトンデモないものを封じてきたんだね……」
「アタシが触れた神様……ワカツマノカミ様は本当に、冬の日だまりのように落ち着くっていうか……だからちょっと、信じられないな」
「そんな温かい神様のために、山の幸をささげて、寒い冬も水垢離をして……そんな風に毎日が過ぎていくと思ったのに」
「里のみんなも優しかったんだ。あの時までは」
「アンタもさ、住んでたところを出て旅をしてる。穏やかに、“今”を続けていたい、ってのはそんなに難しくて、願っちゃいけないことなのかな?」

◆結末
 PC①が答えると、楓は納得したようにうなずく。そして未熟ながら巫女として培った自分の力を込めたお守りをPC①に渡す。PC①が答えたらシーン終了とする。

▼セリフ2:楓
「……わかった。アタシの巫女としての力は大したことないけど、少しでも力添えになれれば思って……お守りを渡しておくね」

▼処理
 PC①はお守りを所持する間、所持する奥義ひとつを1回だけ《至誠如神》として使用できる。またこの《至誠如神》は特別に自身を対象として使用可能。

■情報収集シーン

 本シナリオでは、情報収集に失敗しても情報そのものは得られる。
 情報収集シーンは、シーンプレイヤーを決定した後、情報収集の状況をPLが宣言(情報収集演出チャートを利用してもよい)することで開始される。シーンプレイヤーのみがメインプロセスを行うことが可能(他の登場PCも、「タイミング:判定の直後」などの使用は可能とする)。
 失敗するごとに「風魔の陰謀」ポイントが加算され、クライマックスの難易度が変化する。これは英傑たちが事件解決を進めることで宿星が深い闇の向こうで進行する妖異たちの陰謀をくじいたり、一方で英傑の失敗により妖異たちの陰謀が進行してしまうことを表しており、実際の時間経過だけを表すものではない。
 なお、クリティカルでポイントは-1(最低0)、ファンブルすると2点加算となる。
 これらの情報収集におけるシナリオ内ルール及び「風魔の陰謀ポイント」はすぐに参照できる形で掲示しておくことが望ましい。

●初期段階で調べられる情報項目
初期段階の情報項目については、全て難易度10の【理知】判定とする。適切な演出に合わせて使用する能力値を変更するとよい。

▼[情報項目:ワカツマノカミの荒御魂]
 その名をアラカツマ。古代の戦士像のごとき巨神(「大魔神」で検索を推奨)。荒御魂ではあるが、この地の荒ぶる守護者として民を圧する者たちをその暴威で退けてきた。かつて小田原を治めた北条家の忍び、風魔忍軍によって祀られ封印されている。豊臣秀吉が北条を攻める際、小田原城の包囲戦を仕掛けたのは北条勢がアラカツマを呼び出さないよう、城に釘付けにするためであったという。
 この荒御魂が妖異に堕ちれば、災厄級の被害をもたらすだろう。この地で神として祀られる以前の第三の姿もあるというが、詳細は不明。
 [情報項目:風魔忍軍]を得る
 PC②がこの情報を得た場合、別途シーンが開始される。

▼[情報項目:岩槻忠真]
 PC③の友人。
 女系であるが関東の覇者・北条氏の血を継いでおり、いつかは北条氏が治めていた小田原のために尽力したいと語っていた。農学にも明るい彼が農民たちを迫害するとは考えにくい。
 情報を集め、PC③が身分を明かし直接問いただせば、その変節の理由も分かるだろう。
 PC③がこの情報を得たうえで条件を満たせば岩槻を問いただすシーンを開始できる。

▼[情報項目:風魔忍軍]
 小田原に本拠を置く忍者の一軍。かつてはこの地の覇者・北条氏に仕えていた。現在は代官・岩槻忠真の配下として、従わぬものを惨殺している。あえて岩槻に対する憎しみを煽っているようだが、その真意は不明。
 かつてはこの地の魔神を封じる「封魔の一族」であったが、今はその魔神を妖異として復活せしめんと暗躍している。現在の頭領は風魔靭九郎(ふうま・じんくろう)。
[情報項目:この地の魔神](=[情報項目:ワカツマノカミの荒御魂]と同じ)を得る

▼[情報項目:小田原の凶事]
 代官・岩槻忠真の名のもと、飢饉に苦しむ農民を中心に「幕府の力を保つため」という理由で弾圧が行われている。弾圧の対象は岩槻を諌めた武士にまで及び、今や岩槻の周囲にはおよそ侍と言えない無頼の者共が集っているという。
 岩槻への怨みや飢饉による絶望は、淀まされた霊脈のもと巨大な呪詛となって小田原を覆い、「他人を踏みつけないと生きていけない」と人々が羅刹へと変じている。
[情報項目:岩槻忠真]を得る。

▼[情報項目:呪い形代を知る者]
 小田原郊外の産婆がその人物だ。そのルーツは北条氏のそばに仕える風魔のくノ一であったが、北条敗北の後凄絶な運命の末にその一族は汚れ仕事として子の取り上げ(いわゆる“間引き”を含む)をしているのだという。
 シーンを開始可能となる。

●イベントの後に調べられる情報項目
 イベント後の情報項目については、全て難易度12の【理知】判定とする。適切な演出に合わせて使用する能力値を変更するとよい。
 なお、「風魔小太郎の墓所」など、風魔の謎に迫る場所を提案するなどの演出を提案するとよい。

▼[情報項目:終末忍法“風狂魔”]
 風魔が封魔と呼ばれた太古の昔に用いた、魔神を荒御魂と和御魂へと分霊させ大地の守護神と変じる秘法“風魔”。“風狂魔”はその術式を逆転させる忍法である。
 この地の守護者(北条の血族はその資格を持つ)の魂を妖異の呪いで穢し、環状列石を通じて淀んだ霊脈へと流しこむことで術式は成立する。
 解説:「風魔の陰謀ポイント」6点と妖異に穢された小田原の支配者の血族(岩槻が該当する)の死の条件を満たすと、終末忍法“風狂魔”が完成し太古の魔神が復活する。
[情報項目:太古の魔神]を得る

▼[情報項目:太古の魔神]
 荒御魂の名はアラカツマ。それすなわち荒蠍魔。その正体は病と毒の熱風を操る、四枚の翼と蠍の尾を持つ魔神。蘭学でいうところのバビロニアの魔神・パズスである。蝗の神ともされる魔神の復活が成れば、日の本のあらゆる豊穣は失われてしまうだろう。熱と風を操るパズスを封じる場所ならば、小田原を見下ろす箱根山中にこそ、求める環状列石があるに違いない。
 この情報を得ることで、クライマックスフェイズに移行できる。また、「楓の問いかけ」のシーンを開始する。
解説:クライマックスでパズスが復活すれば、より過酷な戦闘となる。勝利したとしても、別の神一柱を犠牲にしないかぎり神を完全に討つことはできず、遠からず日の本は「地獄」と同義として世界図に記されることになる。

※GM用解説(PLに開示しない)
 実際にパズスとの戦闘は想定していない。PCに慌ててもらうためのデコイ情報である。

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■クライマックス

●シーン11:風狂魔の成就

 シーンプレイヤー:PC③
 登場難易度:全員登場

◆解説
 捕らえられた岩槻忠真がPC③に後を託すシーン。PC③にとってのヒロインはこのタイミングまで会話する機会を持たない。しっかりと岩槻の人柄を伝えること。

▼描写
 硫黄臭と蒸気を伴った熱気は英傑たちの体力を容赦なく奪っていく。そんな中にある環状列石のもと、縛り付けられ、1人の男が息も絶え絶えに君たちを待つ。
 顔の皮膚を剥がされているが、その瞳・その声は間違いなく友・岩槻忠真のもの。その身には小田原全土の呪いが降り注いでいる。
 ワカツマノカミが一時的に呪いを弱めることでその中心にいる岩槻と会話可能となる。

▼セリフ:楓
「これが呪い形代……これだけの呪いを受けて正気が保てるの……?」

▼セリフ:ワカツマノカミ
「なんとむごい……」
「この呪い、少しでも抑えてみせよう」

▼セリフ:岩槻忠真
「PC③……そこにいるのはPC③か……? はは、勢い勇んでこの地に来てみれば、忍びの者に捕らえられてこのザマです。連中がここを去ったってことは、もう俺は用済みか、目的は果たしたということでしょう」
「あの連中が言う通り、一命を賭せばこの小田原を救えるというのなら安いもの、だったのですが……小田原を滅ぼすためにこの生命を利用されるとは、無念」
「それでも、貴方さえいてくれれば……日ノ本を、頼みます」(その瞬間その胸にいくつもの手裏剣が突き刺さる)」

▼描写2
 胸の手裏剣をカメラが大写しにしたところで、風魔靭九郎の声が響く。遁術で潜んでいたか、周りを取り囲む風魔忍軍とともに風魔靭九郎が登場する。

▼セリフ:風魔靭九郎
 「風狂魔、最後のひと押しは呪いを受け入れるお前自身の絶望よ! 良くも今まで耐えてきたものだが、友との再会で緩んだな貴様!」

◆結末
 血を吐き、うなだれる岩槻。PCは確実にここで介入を試みると思われるが、状況が動くことを告げ、ここは強引にシーンを変えること

●シーン12:カミの在り方

 シーンプレイヤー:PC②
 登場難易度:全員登場

◆解説
 風魔の手裏剣を受けた岩槻が息絶え(このシーンで息絶えることが重要。シーン11では死亡しないことに注意)、ワカツマノカミの存在を引き換えとした神通力で息を吹き返すシーン。ワカツマノカミのセリフはPC②の設定やこれまでの交流でアレンジすると良いだろう。

▼描写
 うなだれた岩槻は、瞼のない目だけはキッとPC③を見据え、そして息絶える。
 カメラは岩槻・PC③の人々の輪から少し離れ、PC②とワカツマノカミへと切り替わる(周りを灰色にするなどの演出を挟むと良い)。彼は自らの神通力を用いて岩槻を黄泉帰らせると言うが、それが彼の存在を危うくさせることは神霊であるPC②には理解できるのだった。

▼セリフ:ワカツマノカミ
「偉大なる刀剣の神。災厄を薙ぎ払うものよ」
「ただ凪をのみ望む私でも、できることがあると分かったよ」
「この地を思うてくれるものを生かす。ただそれだけのことだったのだ。後のことは頼みます」
「魔神に変性するためには、彼の魂とともに、分かたれた和御魂・荒御魂が揃う必要がある。鍵を2つも失えば、あとは私の荒御魂を鎮めるだけだ」
「ありがとう、楓。変わらぬことを愛するそなたの心は心地よかった。しかし今は、さらなる不幸を止めるために踏み出さねばならぬとき。これもまた、そなたと、英傑たちに教えてもらった」

◆結末
 ワカツマノカミは《起死回生》を岩槻忠真に使用し、消滅する。岩槻の剥がされた皮膚も元通りとなり、降り掛かっていた呪いも晴らされていく。

▼セリフ2:ワカツマノカミ
 「荒御魂が完全に妖異に堕ちない限り、和御魂である私もその中に生きる(微笑んで消える)」
 
▼解説
 PCが《起死回生》を使用した場合。宿星の輝きを人を救うために使った英傑を称賛し、ともに災厄を祓う力になるために最後の力で《天佑神助》を使用してワカツマノカミは消滅する。《天佑神助》の対象は《起死回生》を使用したPCとすると良いだろう。

●シーン13:魔神復活

 シーンプレイヤー:PC①
 登場難易度:全員登場 

◆解説
 魔神および風魔靭九郎と対決するシーン。これまで加算されてきた「風魔の陰謀ポイント」によって、状況が変化する。
 GMは風魔の陰謀ポイントの現在値が6点以上か未満かを予めチェックしておくこと。

▼描写1
 岩槻が神通力により蘇ったこと、魔神の和御魂の消滅によってこの地の呪いは行き場を失っている。天空に淀む大量の呪い。先に動いたのは風魔忍軍頭領、靭九郎だった。

▼セリフ:風魔靭九郎
「まさかここで封じたカミが一手打ってくるとはな。だが既に妖異の呪いは十分に満ちている! 血が足りぬのなら羅刹に落ちた風魔の血もくれてやる!」(手裏剣で周囲の風魔一族を殺戮する)

▼描写2
(風魔の陰謀ポイントが6未満の場合)
 呪いは渦を巻いて本来の呪いの主、風魔靭九郎へと降り注いだ!
 靭九郎の失われた顔面の皮膚が再生し、悪魔を思わせる姿へと変じていく。
 彼が命じるまま、落雷とともに古代の戦士を象った巨神・荒御魂アラカツマが出現し、PCたちに襲いかかる!

▼セリフ2:風魔靭九郎
「妖異の呪いがオレを……!? 構わぬ! 既に外道に堕ちた身よ!」
「力が満ち満ちてくるわ!」
「巨神アラカツマ! 俺に従え! 英傑共を蹴散らしてしまえ!」

(ポイント6以上の場合)
 呪いは渦を巻いて空中で雷雲と混じり合い、落雷とともに降り注いだ! そこには古代の戦士を思わせる戦士の像が。それはゆっくりとその腕を振り上げ、その腕が顔面を通り過ぎたとき、憤怒の形相となって咆哮を上げた!
 妖異巨神となったアラカツマに和御魂の気配は微塵も残されておらず。憎き宿星の輝きを消し去らんと、PCたちに襲いかかる!

▼セリフ2’:風魔靭九郎
「大魔神アラカツマは妖異巨神となった!」
「いにしえの魔神復活は成らねど、小田原を、箱根の関を落とすにはこれで十分よ! 織田信長はその功績をもって、我らのもとに頭領・風魔小太郎を蘇らせると約したのだ!」

▼処理2
 【宿星:風魔と魔神を倒す】を得る。
 巨神アラカツマ、風魔靭九郎と戦闘になる。

・風魔の陰謀ポイントが6未満の場合
 クライマックスフェイズで登場する風魔靭九郎のデータを風魔靭九郎(妖異)に変更する。これにより風魔靭九郎は《ライバル属性》が《外道属性》に変更され、「種別:妖異」となるほか、使用できる特技が増加する。
 アラカツマには《ライバル属性》を付与し、この地のカミは退場するが消えてなくなることは無いことを伝えること。

・風魔の陰謀ポイントが6以上の場合
 風魔靭九郎のデータは変更せず、アラカツマは《外道属性》となり、もはやこの地のカミは蘇ることはないものとする。

 また、共通して風魔靭九郎の【HP】を「ミドルフェイズの戦闘終了時+【最大HP÷2】」点まで回復する(もととなる数字が通常版と妖異版で異なるのに注意)。

◆結末
 エネミーすべてを倒すことでクライマックスフェイズは終了となる。
 この段階で改めて、《ライバル属性》によって退場(消滅)したアラカツマ・ワカツマノカミは死亡していないことを伝えること。ただし元の力を取り戻すには、正常に戻った霊脈の元、信仰を捧げられる日々を数十年は過ごす必要があるだろう。

▼セリフ3:風魔靭九郎
「む……無念……! だが忘れるな英傑ども! これは魔神とともに自らをも封じ続けてきた風魔の恨みであると」

▼セリフ3:楓
「ちがう! カミさまは、私達が変わろうとすることも認めてくださった! いけないのはそのために人を不幸にすることだよ!」

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■エンデイングフェイズ

 以下のエンディング演出はあくまで例示として、各PCの要望を聞いて演出すること。
 なおPC③の《一件落着》については、岩槻忠真の非道は成り代わっていた妖異の手によるものと明かし、彼を代官に復帰させることができるものとする。《一件落着》を使用しなかった場合、別の代官が派遣され、岩槻は名を変えて農学者として小田原のために尽力することを選ぶ。
 また《一件落着》により、江戸や京から有力な術者を招聘し、霊脈を強化することでワカツマノカミの復活を促すことも可能とする(《外道属性》を得て死亡している場合を除く)。この場合、ワカツマノカミはエンディングで会話可能な形(同行した小さい童子の姿)で登場可能となる。
 各PCのエンディングの演出に影響するため、エンディングフェイズの開始前に《一件落着》の使用方法の想定は確認しておくと良いだろう。いずれにせよ「選ばれなかった選択肢」を悲観的に描くことのないよう注意すること。

●シーン14:小田原の地に豊穣を

 シーンプレイヤー:PC③
 登場難易度:なし

◆解説
 PC③と岩槻忠真が話をするシーン。日ノ本の未来について語り合った過去の再来のようなシーンとすると良いだろう。

▼描写
 小田原の穀倉地帯を見下ろしながら佇む両者。風魔忍軍によってもたらされた混乱は収拾されつつあるが、曇ったままの空に実りは細く、決して未来は明るくない。それでも民は懸命に働き、日々の糧を得て明日へと進んでいる。

▼セリフ:岩槻忠真
「呪いに屈さずにすんだのはひとえに、共に夢見た日の本をまだこの目にしていないからです」
「北条の血など関係なく、この小田原から始めていきたい。民が信じた
今日を生き、明日を拓く力によって、今もこうして生きているのだから」

◆結末
 PC③が今後の動向を決定したらシーン終了となる。

●シーン15:蘇る霊脈

 シーンプレイヤー:PC②
 登場難易度:なし

◆解説
 PC②が神霊として、小田原の乱れた霊脈の回復を知覚するシーン。

▼描写
 小田原を見下ろす小高い丘の環状列石。妖異を退け、いまは霊脈の流れが安定しているのを感じる。
 ワカツマノカミの力は大きく衰えたが、彼を祀る封魔が残っている限り、小田原の復興とともにその力は回復していくだろう。
 ふと、傍らにあの時の童子姿のワカツマノカミがいるような気がしたが、吹き抜ける風とともにその気配は消えてゆく。

▼セリフ:ワカツマノカミ
「ありがとう、またいつか」

◆結末
 神霊たる貴方にとって、その「いつか」は決して遠い未来ではない。そして、その「いつか」を守るために妖異を討つのだ。PC②が演出を行ったらシーン終了となる。

●シーン16:旅立ち

 シーンプレイヤー:PC①
 登場難易度:なし

◆解説
 旅に出ようとするPC①と、それを見送る楓のシーン。

▼描写
 宿場町を通る東海道。往時からは人の行き来も少なくなったが、それでも楓たちの風魔の里からすれば遥かに都会だ。見送りに出てきた楓は、しばし人の流れを見やってから、PC①に話しかけてくる。

▼セリフ:楓
「このまま旅に出るんだよね」
「風魔の里も、随分人が減っちゃってさ」
「アンタみたいなやつが、居てくれると心強いっていうか……さ。もちろんアンタが良ければだけど」

(PC①が答えた)「そっか。それがアンタにとっての“普通”なら止める道理はないもんね」
「またふらりとこっちに来たときは……こっちにも顔を出してよ。歓迎するよ! 相当山奥だけど……」

◆結末
 PCが旅だったところで、シーン終了となる。遠くに富士山を望む止め絵で終わると良いだろう。

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■アフタープレイ

 本シナリオ中に配布された【宿星】を達成したことによる経験点は2点とする。

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エネミーデータ

■巨神アラカツマ

命中10 回避4 魔導10 抗魔7 行動値7 種別:妖怪(外道属性の場合は妖異)
HP120

▼マイナー
《範囲攻撃》《必中強化X》《攻撃増幅X》から選択。
《必中~》《攻撃~》のXが1以上の場合、《範囲攻撃》は連続したターンに使用しない。Xは本シナリオの「風魔の陰謀」ポイント÷2に等しい。

▼メジャー
《大石剣》/白兵攻撃/単体/至近/〈殴〉20+2D
《大火炎》/特殊攻撃/単体/20m/〈熱〉8+5D

▼リアクション
防御修正:斬10/刺10/殴8/熱8/氷8/雷8/光0/闇0

▼オート
《外道属性》/【HP】5点を消費してBS打ち消し
もしくは《ライバル属性》/【HP】10点を消費してBS打ち消し

▼常時
《無効属性:毒》

▼奥義
《一刀両断》《広大無辺》《疾風怒濤》

※荒ぶる巨神として、行動はある程度ランダムにするとよいだろう。
 《必中強化》《攻撃増幅》が得られなかった場合(X=0)の場合は基本的に複数PCが固まっているところに攻撃を行う。

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■風魔靭九郎

命中8 回避7 魔導8 抗魔6 行動13 種別:人間
HP80

▼マイナー
《仕込み毒》/続く攻撃を〈毒〉属性にする

▼メジャー
《手裏剣打ち》手裏剣/投擲攻撃/単体/10m/命中8/〈毒〉3D+10
 毒を仕込んだ手裏剣による単体攻撃。マイナーアクション込みのデータ。

▼リアクション
防御修正:斬6/刺2/殴4

▼判定の直後
《バッドアゲイン》その判定を振り直す

▼オート
《ライバル属性》/HP10点を消費しバッドステータスを打ち消す

▼奥義
《無影無踪》《剣禅一如》《破邪顕正》

HPの低いPCを積極的に狙うなど、クレバーな立ち回りを優先する。
クライマックスまで、シナリオに指示された加護以外は使用しない。

なお攻撃命中が非常に難しい作りである。サンプルPCの剣客の場合《剣禅一如》《一刀両断》でほぼ1撃で倒せる作りなので、不慣れなPLには攻撃命中のチャンスを活かすようアドバイスをすると良い。

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■風魔靭九郎(妖異)

命中9 回避7 魔導9 抗魔7 行動13
HP100

▼マイナー
《木の葉隠れの術》/隠密状態になる
《仕込み毒》/続く攻撃を〈毒〉属性にする

▼メジャー
《影からの一撃》忍刀/白兵/至近/単体/命中11/〈斬〉12+4D
 《木の葉隠れの術》から続けて使用する。

《手裏剣打ち》手裏剣/投擲/10m/単体/命中9/〈毒〉10+3D
 《仕込み毒》から続けて使用する。

▼リアクション
《空蝉》/対物理回避/リアクションに勝利した場合追加のメインプロセスを行う/シーン1回
《分身の術》/対物理回避/2回判定して好きな結果を選ぶ

防御修正:斬6/刺2/殴4

▼判定の直後
《バッドアゲイン》その判定を振り直す

▼オート
《外道属性》/【HP】5点を消費してBS打ち消し
もしくは《ライバル属性》/【HP】10点を消費してBS打ち消し

▼奥義
《無影無踪》《剣禅一如》《破邪顕正》

※自分の力を誇示するようにHPの高いPCを積極的に狙う。
《剣禅一如》は《空蝉》に使用して行動回数を得るようにすると良い。

なお攻撃命中が非常に難しい作りである。《剣禅一如》やシナリオで得た《至誠如神》が重要な役割を果たすはずだ。不慣れなPLには攻撃命中のチャンスを活かすようアドバイスをすると良い。

DLC

特に体裁に手を加えていないが、本シナリオのPDF版。

同じく、本シナリオのエネミーデータ。

ユドナリウムでのセッションで利用した情報収集カード。表面に情報項目、裏面に情報の内容が記載されている。

権利表記

 本作は「小太刀右京」及び「株式会社新紀元社」「株式会社アークライト」が権利を有する『超時空時代劇RPG 天下繚乱』の二次創作です。
(c)Ukyou Kodachi / Team Barrel Roll
(c)アークライト/新紀元社

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