見出し画像

【新刊試し読み】『歩みを止めるな!世界の果てまで952日リヤカー奮闘記』〈わたしの旅ブックス32〉|吉田正仁

2009年から相棒のリヤカーをひいて世界中を歩いてきた吉田正仁さんが、五大陸踏破を目指す、時速5キロの大冒険紀行『歩みを止めるな!世界の果てまで952日リヤカー奮闘記』5月21日(金)に発売されます。発売を記念して“プロローグ”の一部を公開します。


本書について

アルゼンチン最南端の町からひたすら北へ、目指すは南米大陸のゴール、赤道の町。そこで旅は終わるはずだったが……。大自然の猛威と恩恵、そしてどこまでもあたたかい人々との出会いが胸を打つ、南北アメリカ大陸縦断紀行。


プロローグ

 日本で一年を過ごした後、私はアフリカ大陸へ向かった。アフリカ大陸北端のエジプト・アレクサンドリアから東アフリカを縦断し、二〇一五年七月に南アフリカ・喜望峰に到達。四つ目の大陸を踏破し、残るは南米大陸だけになった。

 楽しみは残しておき、好きなものを最後に食べる性格である。しかし、南米大陸を最後に残したのは、決して楽しみだったからではない。「残した」のではなく、「残ってしまった」と言った方が正しいだろう。
 インターネットで「危険都市ランキング」と検索ワードを打ち込んでみると、南米の都市がズラリと上位に並んでいる。強盗、殺人、誘拐、麻薬にマフィア……。南米のことを考えると、不穏な単語が次から次へと頭に浮かび、墨汁をこぼしたかのように黒い靄がじわじわと広がっていく。アルゼンチン航空からのメールも「南米に来るでない」という神様のお告げに思え、拭い切れない不安がねっとりと脳裏にこびりついていた。
 しかし不安要素は多いものの、南米の大自然やこの地で暮らす先住民など、好奇心をくすぐるものも少なからずあった。それに何より、五大陸踏破という目的がある以上、どうしても避けることはできないのだ。
 南米大陸の踏破を残したまま、新たな人生を踏み出せば、大きな後悔を背負って生きていくことになりそうだし、「敗北」を意味するとすら思っていた。長い徒歩の旅にケリをつける必要があった。

 二〇一五年九月末、最後の旅へ向け、日本を発つところから今回の話は始まる。


目次

プロローグ
第1章 パタゴニアから始まる最後の旅(南米前編)
第2章 アンデス山脈を越えて(南米後編)
第3章 長い休息―行くかやめるか(南米番外編)
第4章 火山と民族(中米編)
第5章 極寒の歩行は終着点へ(北米編)
エピローグ


著者紹介

吉田 正仁
1981年鳥取県生まれ。2009年より四年半をかけて相棒のリヤカーとともに徒歩で地球一周分にあたる4万キロを踏破。ユーラシア大陸、北米大陸を横断、オーストラリア大陸、東南アジアを縦断した。その後、2014年からアフリカ大陸を縦断。リヤカー徒歩の旅で巡った国は60カ国にのぼる。著書に『リヤカー引いて世界の果てまで 地球一周4万キロ、時速5キロのひとり旅』(幻冬舎文庫)、『リヤカー引いてアフリカ縦断~時速5キロの歩き旅』(小学館クリエイティブ)。


画像1

『歩みを止めるな!世界の果てまで952日リヤカー奮闘記』著/吉田正仁
 2021年5月21日(金)発売
【シリーズ】わたしの旅ブックス
【判型】B6変型判(173mm×114mm)
【ページ数】392ページ
【定価】本体1,320円(税込)
【ISBN】978-4-86311-300-8


本書を購入する


「わたしの旅ブックス」とは

“ 読む旅” という愉しみを提供する、がコンセプトの読み物シリーズ。さまざまな分野で活躍する方々が、自身の旅体験や旅スタイルを紹介し、人生を豊かに彩る旅の魅力を一人でも多くの人に伝えることをめざしている。ジャンルは紀行、エッセイ、ノンフィクションなど。