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日本全国写真紀行

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取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。
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#日本全国写真紀行

【日本全国写真紀行】 52 大分県津久見市保戸島

大分県津久見市保戸島 ゆっくりと流れる島時間を楽しむ 大分県と四国の愛媛県に挟まれた豊後水道。 太平洋からの黒潮の暖流と瀬戸内海の寒流とがぶつかりあうこの水域は、全国屈指の好漁場として知られている。その利を生かして古くから漁業の島として栄えてきたのが保戸島である。   その昔、この地が「海部郡穂門郷」と呼ばれており、この「穂門」が「保戸」に変わったものといわれている。  江戸時代には佐伯藩の勘場や遠見番所が置かれ、近隣の海で鯵やイカを中心に漁が行われていた。明治時代の半ばご

【日本全国写真紀行】 51 大分県大分市戸次本町

大分県大分市戸次本町帆足本家を中心に古い建造物が点在する 大分の市街地から国道10号を南下して、大野川にかかる白滝橋を渡ったあたりに広がるのが戸次地区である。大野川の水運や日向街道の交通の要衝として栄え、江戸時代に市場ができると商家の町としてさらににぎわった。  なかでも莫大な財を成してこの町に隆盛をもたらした商家が帆足家である  帆足家は、12世紀のはじめに守護大友氏の家臣となり、江戸時代には臼杵藩治下の大庄屋として戸次の町を取り仕切った豪農である。その後、酒造業を手掛け、

【日本全国写真紀行】 50 佐賀県小城市小城

佐賀県小城市小城 砂糖の道、長崎街道沿いの羊羹の町 江戸時代、長崎の出島と北九州の小倉を結んでいた長崎街道。鎖国下にあって、出島は海外との唯一の窓口であり、さまざまな舶来品が出島に荷揚げされた。それらのひとつに砂糖がある。砂糖は、長崎街道を通って京都や大阪、江戸など全国に広がり、それにともなって砂糖を使った菓子づくりの技術も各地に広まっていった。特に長崎街道沿いの町では、その風土にあったお菓子が数多く生まれた。  例えば、長崎市のカステラ、嬉野市の金華糖、佐賀市の丸ぼうろ、

【日本全国写真紀行】49 福岡県北九州市八幡西区木屋瀬

福岡県北九州市八幡西区木屋瀬 木屋瀬宿に泊まり異国で果てた、ある白象の孤独な生涯木屋瀬宿は、長崎街道の宿場町「筑前六宿」の一つで、長崎街道と赤間道との追分の宿として栄えた町である。長崎街道は、江戸幕府唯一の開港場だった長崎と小倉を結ぶ脇街道。世界からの文物や情報を全国に伝える、重要な役割を担った街道だった。  宿場は約1100メートルの街道で、裏通りの全くない一本道。中間にある本陣付近で道は「く」の字に曲がり、家並みはノコギリの歯状に建てられている。「矢止め」といわれる、敵

【日本全国写真紀行】48 福岡県福津市津屋崎

福岡県福津市津屋崎 「津屋崎千軒」ー海運で栄華を極め、塩で九州を支えた町 津屋崎という美しい響きのこの町は、町の西から北にかけて玄界灘に面した風光明媚な土地で、古くから筑前を代表する港としてにぎわっていた。江戸時代には廻船業の拠点として栄え、その繁栄ぶりは家が千軒もひしめくようだったことから「津屋崎千軒」と呼ばれた。当時、家が千軒も並ぶほど栄えていた港町は、福岡の芦屋千軒、下関の関千軒と津屋崎の三カ所だけだったというから、その隆盛ぶりが伺える。またもう一つ、津屋崎の名を九州

【日本全国写真紀行】40 宮城県気仙沼市唐桑町鮪立

宮城県気仙沼市唐桑町鮪立 南三陸の景勝地にある小さな漁村 宮城県の地図を見ると、北東端に太平洋に少し突き出た小さな半島を見つけることができる。古くから南三陸地方の絶景の地として知られる唐桑半島である。    三方が海に臨む半島は、周囲約50km、リアス式海岸特有の複雑な入江と豪壮な岩壁が多くの観光客を魅了してきた。中でも半島の東側、巨釜や半造といった地域には連続する奇岩があり、唐桑を代表する奇勝として知られている。  これら観光客に人気の東側に対して、半島の西側には島の人々

【日本全国写真紀行】35 福島県大沼郡昭和村

福島県大沼郡昭和村 自然美、高級織物、木造校舎、魅力満載の昭和村へ 昭和村は会津地方の南西部に位置し、只見川の支流である野尻川の段丘に沿って集落が点在している。周囲を広大な湿原や美しい渓谷に囲まれた、自然美の宝庫だ。昭和2年に野尻村と大芦村が合併して一つの村になったことから、昭和村と名付けられた。人口は1,200人に満たず、福島県で二番目に高齢化率が高い村でもある。  どこまでも広がるのどかな田園と、赤いトタンを被せた茅葺き屋根の農家群を眺めているだけでも十分に心癒される風

【日本全国写真紀行】 31 埼玉県秩父郡東秩父村

埼玉県秩父郡東秩父村 和紙づくりの伝統を守り続ける県内唯一の村 日本が世界に誇る技術の一つに、手漉き和紙技術がある。文字どおり和紙をつくる技術で、熟練した手技によって生み出された和紙は洋紙よりもはるかに強く、ヨーロッパの美術館では絵画の修復にも用いられている。まさにものづくり日本を象徴するものといえるだろう。  和紙は古くから日本各地でつくられてきたが、中でもその技術が卓越しているとして2014年にユネスコ無形文化遺産に登録された三紙がある。島根県浜田市の石州半紙、岐阜県美

【日本全国写真紀行】 26 神奈川県足柄下郡湯河原町福浦

神奈川県足柄下郡湯河原町福浦ある洋画家が惚れた小さな漁港 洋画家・中川一政(1893-1991)が描いた『福浦突堤』という作品を観たことがある。漁港に面した山の斜面に並ぶ家々と赤い灯台と突堤が印象的に描かれ、風景画には似つかわしくない躍動感という言葉がぴったりする迫力ある作品だった。この絵画が描かれたのが、真鶴半島の西側の付け根のところにある福浦という小さな漁港だ。  中川一政は、五十六歳の時に真鶴にアトリエをもち、約二十年間福浦漁港に通って絵を描き続けた。地元の漁師たちは、

【日本全国写真紀行】23 東京都西多摩郡檜原村

東京都西多摩郡檜原村東京とは思えない山間の風情ある里東京に檜原村という村がある。島嶼部をのぞけば東京唯一の村で、都の最西端に位置し、約2,000人の人々が暮らしている。多摩川の支流である秋川の上流にあるため、村のほとんどが山林で占められており、江戸時代にはその資源を生かして、江戸の木材供給地として繁栄した歴史をもつ。 ※『ふるさと再発見の旅 関東』産業編集センター/刊より一部抜粋 他の写真はこちら↓でご覧いただけます。

【日本全国写真紀行】22 栃木県那須郡那珂川町小砂

栃木県那須郡那珂川町小砂森と樹々と水田と素朴な焼き物、郷愁をそそる美しい村栃木県の北東、那珂川町の北部に位置する小砂地区は、本当に美しい村である。人口は約800人。総面積の64パーセントが森林で覆われた山間の村で、八つの小さな集落で構成されている。 とにかく絵になる風景が連続している村で、各集落を包む緑の濃淡がひたすら美しく、それが水田に光り輝きながら映る光景は、心のどこかに潜んでいる郷愁を呼び起こすのだろうか、いつまで見ていても見飽きない。日本の山里は、やはりどこの国よりも

【日本全国写真紀行】18 兵庫県神戸市北区

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 兵庫県神戸市北区 農村歌舞伎舞台が数多く残る美しい農村 神戸市北区は約700棟の茅葺きの民家が残っており、そのなかでも貴重の民俗文化財である農村歌舞伎の舞台が多く保存されている。 他の写真はこちらでご覧いただけます。 江戸時代から伝わる「地歌舞伎」の歴史をたどり美しい村里の旅を楽しむためのトラベルガイド 大人

【日本全国写真紀行】17 東京都品川区北品川・東品川

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 東京都品川区北品川・東品川 旅人の思いが交差する江戸の玄関口 日本橋から約8km、東海道第一の宿が品川宿である。「お江戸日本橋七つ立ち〜」と唄われたように、夜明け前に日本橋を出た旅人たちが、昇る朝陽を見ながら江戸に別れを告げる場所でもあった。 旅人を見送る人、迎える人で品川宿は一日中にぎわいを見せ、江戸においては

【日本全国写真紀行】16 鳥取県岩美郡岩美町網代

取材で訪れた、日本全国津々浦々の心にしみる風景を紹介します。ページの都合上、書籍では使用できなかった写真も掲載。 日本の原風景に出会う旅をお楽しみいただけます。 鳥取県岩美郡岩美町網代 山陰地方の古い漁村の風情が今も残る漁師町  山陰地方を代表する冬の味覚といえば「松葉ガニ」である。日本海の荒波に揉まれて育った蟹は身がひきしまり、ほぐれた蟹肉を口に入れればほどよい甘さが広がる絶品だ。漁期は十一月初旬から三月中旬まで。この四ヵ月間、日本海に面する県東部の町岩美町は全国の美食