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全国最中図鑑

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日本を代表する和菓子の一つである「最中」。香ばしいパリパリの皮とともに餡を頬張れば、口の中にふわっと広がる品のよい甘さ。なんとも幸せな気分になるお菓子です。編集スタッフが取材の途…
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#エッセイ

「全国最中図鑑」77 ちんとろ最中(愛知県半田市)

「ちんとろ最中」とはまた変わった名前だが、半田市で毎年春に行われる『ちんとろ祭り』からきているらしい。 『ちんとろ祭り』は、上半田地区の住吉神社境内の池に2隻の「まきわら」の舟を浮かべ、その舟の上で子供三番叟の舞を奉納する。その「まきわら」舟を「ちんとろ」と呼ぶ。「ちんとろ」の名の由来は、舟上にたくさん飾られる提灯が「珍灯籠(ちんとうろう)」であることと、奏でられるお囃子が「チントロ、チントロ・・・」と聞こえるところからきていると言われている。 丸初製菓の「ちんとろ最中」は、

「全国最中図鑑」63 つる柿最中(富山県南砺市)

つる柿もなかは、南砺市福光の特産品・三社柿をあんに使った最中である。 三社柿というのは、一個300g前後もある大粒の渋柿で、赤みを帯びた美しいあめ色が特徴。南砺地方の原産種で、この地方に特徴的な粘土質の土壌でしか育たないという希少な品種だ。実がほど良くしまった絶妙な食感で、さらに、医王山から吹き下ろす医王おろしという西風が柿に独特の甘みを育むともいわれ、干すと抜群に甘みが増す。 森まつ菓子舗の「つる柿最中」は、砂糖漬けした三社柿の干し柿を刻んで白あんに混ぜて炊き上げた「つる柿

「全国最中図鑑」47 大内もなたん(山口県山口市)

中世、西日本の守護大名として勢力を誇った大内氏の24代目当主・弘世は、京の文化や情緒に感銘を受け、地形のよく似た山口盆地に、京都を模した街づくりを行なった。これが「西の京」山口の始まりである。 弘世は京の三条家から美しいお姫様を嫁に迎えるが、当時の山口は何もない田舎で、姫は華やかな都を恋しがった。そこで弘世は都から大勢の人形師を呼び寄せ、館いっぱいに人形を飾ってお姫様を慰め、喜ばせた。町の人々は館を「人形御殿」と呼び、弘世の愛妻家ぶりを伝えたという。 このラブストーリーから生