小さな手を離したとき~成長記録~
娘は3歳になりました。
3歳というのは私にとって、想像していたよりも大きな節目となりました。
幼稚園に行き始めたのです。
ずっと保育園に行くことを嫌がっていた娘。
「3歳になったら幼稚園に行く。それまではお母さんと暮らす。」
それが娘の口癖でした。
3歳になる数日前に所用で幼稚園に行った時に、お友達から
「向こうで遊ぼう。滑り台があるよ。」
と手を差し伸べられたのですが、頑なに手を繋ごうとしない娘。
あとから、何が嫌だったのか尋ねると、
「まだ3歳じゃないから、お母さんが良いなと思ったの。3歳になったら良いけれどね。」
という返事が返ってきました。
自分で決めた「3歳になったら幼稚園に行く」という未来と、まだ両親から離れたくない不安な気持ちの間で、葛藤をしているようでした。
振り返ると、誕生日の1ケ月ほど前から情緒不安定になった娘。
幼稚園に申し込み用紙を提出しに行った日には、夜寝る前に吐きそうなほど大泣きしていました。
誕生日前日も、3歳になるのが怖くて泣いていました。
そんな娘を見て、まだまだ自宅で見てあげたいと思わないはずはありませんでした。
3年間精一杯の愛情とともに、本当に幸せな時間を過ごさせてもらいました。
「本当はこの小さな手をまだ離したくない。」
それが私の本心でした。
でも、娘が自分で決めたことだから。
その背中を押すのも親の役目なのだと寂しさをこらえて、「嫌になったらいつでも帰っておいで。」という気持ちで送り出しました。
初めて登園する前夜、娘は気持ちがざわざわして眠ることができないようでした。
いつもより「お母さんが良い」と言って甘えてきます。
夫と3人で夜のお散歩に行くと、心が落ち着いたのか胸の中ですやすやと眠り始めました。
「いよいよ明日、この子は巣立つんだ。」
幼稚園まではバスで通園することになりました。
朝は幼稚園に行きたくないせいか、なかなか起きてきませんでした。
大好きな絵本を私が大きな声で読み始めると、眠たい目をこすりながら起きてきました。
絵本を何冊か読み、初めて制服に身を包むと、きらきらの笑顔を見せてくれました。
バスを待つ間の娘は、不安を感じているというよりも、覚悟を決めたような表情をしていました。
私が手を繋ごうとすると、すっと離してきます。
保育園の一時保育に預ける時にはいつも大泣きしていたので、「幼稚園バスに乗るときも、きっと大泣きするだろうな」と勝手に思い込んでいました。
でも、娘は違いました。
バスが来ると、唇をぎゅっとかみしめ私と夫に手を振ってくれました。
自ら両親のもとを離れていくのも、そんな表情を見たのも初めてでした。
小さな心と身体で、一生懸命新しい世界に入っていこうと立ち向かう姿に心を打たれました。
そして、
「ついに、巣立ったんだ」
そう思うと、涙がぽろぽろとこぼれてきました。
娘の成長を嬉しく思う気持ちと、寂しい気持ちと、これまで一緒に過ごしてきた幸せな時間、新しいことができるようになった時の嬉しそうな顔、いろいろなことを思いました。
もちろん、これからも育児は長く長く続いていくし、幼稚園が途中で嫌になってしまうこともあるかもしれない。
でも、今日は確かに初めの一歩であり、娘が今までで1番頑張った日なのだと思うのです。
どんな表情で娘が幼稚園から帰ってくるのか分かりませんが、自宅が安心できる場所であるようにたくさんの愛と大きな心で迎えたいと思います。
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