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私にとってとても大切な本

私は古内一絵さんが書かれているマカン・マランシリーズが大好きです。
大学1年生の時に、装丁が可愛すぎてこの本を手に取った時から何度も何度も読み返しています。大好きすぎて、大切に読み進めたくて、全4巻ある本を1冊ずつ、3周したら次の巻を買うと決めて集めました。
今朝もこれを読み、自分にとってこの本はどういう存在なのかを書き残しておきたくてnoteを書き始めました。

この本は夜、カンテラの明かりが灯った時にのみ開かれる夜食カフェ「マカン・マラン」のオーナーであり、ドラッグクイーンのシャールと、何かの縁でそのカフェに訪れるお客さんのお話です。
お客さんごとに様々な悩みを抱えていて、立ち止まってしまうのですが、シャールさんがくれる言葉と夜食に力をもらって自分でまた歩き始めます。

マカン・マランが持つ力


私にとってこの本の魅力は、一言で言うと「受容と前進を与えてくれること」です。その魅力が生まれている理由を3点に分けて考えてみたいと思います。

①共感、反省、羨望、感謝

カフェを訪れる人たちの悩みは、生きていたらどこかできっと感じるものばかりです。
人との比較による苦しみ、親の愛の欠乏、自分のキャリアへの不安、、
社会に存在する様々な「負」が描かれています。
私は登場人物たちをみていて、自分の中にある負の感情ととても向き合わされます。登場人物が自分を見ているようで、とても共感することも多いですし、私のあの時とった行動は、相手にこんな気持ちを抱かせていたのかもしれないという反省が生まれることもあります。
将来への不安、自信のなさ、人間関係、そんな悩みに押しつぶされそうになる時に思わずこの本を手に取ってしまいます。
どうにもならないと思うくらい辛い感情は私だけが抱えているものではないと安心したいのかもしれません。そして本を読むと自分の内側にあるドロドロした物をその登場人物が請け負ってくれているような気持ちにもなります。
そんな登場人物たちが、最後は自分の意思で次の道を決めていくのをみて、自分も頑張れるかもしれないという勇気を持てます。自分で選んだ道で頑張って輝いて、カフェに感謝を返せているのをみると、今苦しい自分も、一つずつ頑張ってみることで輝くことができるのかなあという希望を持てます。
自己投影の対象、感情を肩代わりしてくれる存在、一緒に悩み苦しむ仲間、そしてロールモデルとしてカフェに来るお客さんたちを見ています。

②料理が表す人を想う気持ち

マカン・マランにはシャールさんが作る体に良いご飯がたくさん出てきます。どれも色彩が豊かに描かれていて、読むたびにキラキラした食卓がイメージされます。純粋にそれがとても好きです。
食は人を作っているとこの本を読むと特に思います。何を食べているかでその人の心や体調は全く変わってくる。一人暮らしをして忙しくとつい親には言えないような食生活を送ってしまいますが、まずはスーパーで野菜を買ってみようと思えるような本です。
また、料理を作ると言うことは相手を想うことだと感じます。シャールさんは誰に何が今必要なのかを考えてお夜食やお茶を提供します。相手をよく見ていて、相手のことを心から思うからこそできることだと思います。これは料理だけに限りません。相手の今とこれからを心から想像してあげることは人と関わる中でとても大切にしたいことだと思うのです。
私は自分の悩みで頭がいっぱいになってしまうことが多い。人のことを心から思いやれる余裕が全然ないことの方が多い。だからこそ、まずは自分を大切にし、人を思える自分になりたいと本を読むたびに思います。

③シャールさんがくれる宝物

なんといってもこの人の魅力がこの本の軸になっていると思います。
彼女はなんでもしてあげるわけではなくて、冷たいわけでもなくて。ただ話を聞いて、美味しいご飯を出して、彼女自身が大事にしたいと思っている価値観を相手に届く言葉で伝えます。
それが全く押し付けがましくなくて、でも確かに力を与える言葉たちだと感じます。
魔女のように語られることもあるシャールさんだけど、でも彼女自身も痛みを抱えていることも本の中で描かれています。痛みを感じているから相手に優しくできる。体裁とか気にすることを諦めたから相手の存在そのものを受容できる。それを教えてくれる存在です。
できることとできないこと、やりたいこととやりたくないことをわかっていて、自分の、無理しすぎない道を選べているシャールさんが放つ言葉はどれも私にとっての宝物ばかりです。

「自分で自分を救うのに、どこの誰に、いったいなんの遠慮がいると言うの」
「自分で考えて乗り越えていかなければ、どんな場所に逃げたって、あなたはすぐにまた、別のどこかに逃げ出したくなるだけよ」

さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい

私がこの本から得ていること

人生はとても大変だけど、向き合うべき課題と、気にしなくてもいいモヤモヤがある。それはきっと自分が自分に嘘をつかず自分の人生に自信を持つために必要かどうかで判断できるんだと思います。
まだ迷ってばかりだし全然自信も持てないけど、私が心底自分の人生に納得するための選択を一つずつ重ねていったらいいんだな、ということを本を読むたびに思い出します。
焦らなくてもいい。
誰かに認めてもらわなくてもいい。
ただ、自分が大事にしたいことだけ見失わないように、一つずつやっていく。それが苦しくなった時はまたできるようになる状態に戻るまで休む。
自分のペースで積み重ねていく。
そんなことを教えてくれる本です。
私はまだしばらくこの本に支えられると思います。
そしてこの本が必要な人に届くといいなあと本当に思います。

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