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《荒城の月〜落日の譜〜》にかける思い

モンタニーニオペラ主催公演《荒城の月~落日の譜~》の公演まで一週間を切った。
そこで今回、小山陽二郎さん(瀧廉太郎役)、原田陽子さん(瀧廉太郎の母役)、西影星二さん(鈴木毅一役)、長崎裕美さん(東ゆき役)の4人の出演者、そしてピアノ演奏の鳥井俊之さん、フルート演奏の浅野奈津美さんにインタビューを行った。


《荒城の月~落日の譜~》はどのような内容ですか?

小山さん「滝廉太郎という、類まれな人物からインスピレーションを得、その半生を描いているわけですが、セリフのある親しみやすい形で、劇的な表現に成功している作品だと感じます。」

原田さん「親の反対を押し切って音楽の道へと突き進んだ瀧廉太郎が、強い意志を持って起こした日本の音楽革命と、最期まで作曲家であり続けようとしながら23歳という短い生涯を閉じた廉太郎の半生を描いた感動の音楽劇です。」

西影さん「明治時代、23年という短い生涯で日本の音楽に大きな影響を与えた瀧廉太郎の生涯を綴った音楽劇です。一部フィクションはあるものの、実際の生涯の筋を捉えており、彼の歩んだ人生と音楽への強い想いが非常に分かりやすくダイレクトに伝わる作品になっています。」

鳥井さん「道半ばにして病に倒れ、無念の死を遂げた若き天才作曲家・瀧廉太郎と、彼を支えた家族や友人たちとの愛情や友情を、瀧の音楽と当時の日本の作曲界を彷彿とさせるような作風によって、的確かつ雄弁に描き出した作品です。また、わかりやすい音楽、そして《荒城の月》や《花》などの瀧廉太郎の名曲がちりばめられています。エンターテイメントとしても楽しめる作品です。」

ご自身の役は《荒城の月~落日の譜~》においてどのような位置づけですか?

原田さん「天才作曲家と呼ばれた廉太郎を1番近くで支えた母親は、最愛の息子を、どんな気持ちで見送ったのか…と考えただけで胸が張り裂けそうになります。最後に作曲したと言われる《憾(うらみ)》を弾いている息子の姿に、無念、絶望を感じながらも、最期まで作曲家であり続けようとした気持ちを尊重する母の強さをお伝えしたいと思います。」

西影さん「私が演じる鈴木役は、東京音楽学校で主人公瀧廉太郎の友人として登場します。病に侵される前の、陽気で清々しく、前途洋洋な瀧廉太郎の日常の風景とその際立つ才能が、鈴木という友人が現れることで際立ちます。一方で、後半には病に侵された後の蓮太郎を思い遣るアリアがあり、蓮太郎の才能と人柄がいかに多くの人々を惹きつけ、惜しんでいたかを強調する役目を持っていると考えています。」

長崎さん「東ゆきは、好奇心旺盛で、恋愛にも積極的な女性で、作詞家としての才能もあり、廉太郎の作曲活動に影響を与えた音楽仲間です。劇中ではケーベック教授と結婚することとなり、音楽仲間の皆から祝福されます。廉太郎の作品の一つである《お正月》などの作詞をした東くめがモデルです。」

《荒城の月~落日の譜~》は、自分にとって、または社会にとって、どんな意味を持っていると思いますか?

原田さん「それまで日本音楽に使われていなかった音を取り入れ、初めて西洋音楽と日本語の融合に挑戦した偉大な作曲家が後世に残した作品は、何と口ずさみ易く記憶に残るメロディーであることか!と改めて考えさせられました。個人的に日本歌曲は大好きですが、中学生、高校生には、もっと知ってほしいと強く思います。」

西影さん「オペラやクラシック音楽というと、西洋というイメージを多くの人が持っていると思います。この作品では、日本のクラシック音楽の進歩に大きく貢献した、日本の偉人の生涯が、日本語で歌われます。音楽の力に後押しされ、母国語でダイレクトに伝わる感動を是非とも多くの方に味わって頂きたいです。日本語のオペラや音楽劇の普及に一役買う作品であると思っています。」

鳥井さん「プロローグでS. ベルナデッタは『せめてあなたがあと十年生きていてくれたら、日本の音楽界はもっと早く変わったでしょう』と歌います。それだけ瀧廉太郎の存在意義は大きかったということを皆さんに知っていただくことができると思います。」

浅野さん「親子愛、兄弟愛、恋、友情など『愛とは何か』について考えさせられる物語です。」

出演者として、または役として、どのようなところを観客の皆様に観てほしいですか?

小山さん「15才の音楽学校入学から、亡くなるまでを描いているわけですが、生きている喜びと、この世を去る悲しさが、廉太郎という若者を通して伝わります。しっかり努めさせて頂きます。」

原田さん「強い意志を持って生き抜いた1人の作曲家・瀧廉太郎の生き様を、時には笑いあり、感動の涙ありでお楽しみいただきたいと思います。お客様には廉太郎の学友になった気持ちで、出演者と一体になってご覧いただけると幸いです。」

西影さん「瀧廉太郎の生涯という部分にも注目して知って頂きたいですが、この作品には素晴らしいアリアや重唱が散りばめられています。前半の瀧廉太郎と鈴木の『友情の二重唱』は聴きどころです。」

長崎さん「私の演じる東ゆきは、ちょっとクセのある天真爛漫なかわいらしい女性です(笑)。今回が4度目の出演となりますが、さらに進化した『ゆきさん』をみていただきたいです。廉太郎とのかけ合いがとても面白いので、大いに笑っていただきたいと思います。」

鳥井さん「素晴らしい歌い手たちによる歌とセリフで淀みなく進んでいくドラマを観てほしいです。そして、終曲における廉太郎役・小山さんの独壇場にご注目ください。」

皆様にメッセージをお願いします。

小山さん「歌手として、指揮者として、教え子の方々にも出演して頂き、この作品を広めていくことに情熱を持って取り組んでおります。ぜひお楽しみください。」

原田さん「出演者一同、必ずや感動の熱い舞台をお届けします。」

西影さん「美しく素晴らしい音楽にのせて、日本語でダイレクトに伝わる感動が待っています。是非、会場に足をお運びください。」

長崎さん「素敵な作品です。是非、会場でご覧いただきたいと思います。出演者一同、皆様のお越しをお待ちしております。」

浅野さん「日本語なので字幕いらずで子どもからご年配の方まで楽しめる作品です。哀愁をおびた美しい旋律は皆様の心を癒すと思います。オペラ歌手の迫力ある歌声や演技がホール全体に響き、お客様を包み込みます。」


《荒城の月~落日の譜~》の公演は、2023年8月18日(金)午後6:30より、埼玉会館小ホール(埼玉県浦和市)で行われる。

詳しくは、チケットぴあの該当ページを確認してほしい。


Intervierwee

◆小山 陽二郎(Yojiro, Oyama)
愛知県立芸術大学声楽科卒業、同大学院及び研修生修了。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第12期生修了。
愛知県新進芸術家海外研修費助成を受けて、1994年、イタリア・ミラノに留学。R. ブロージ歌曲コンクール、カシナ・リリカ、ブタペスト、ドニゼッティ・ロッシーニの声国際コンクールにそれぞれ第2位入賞のほか、多数入選。岡山広幸、L. アルヴァ、V. テッラノーヴァの各氏に師事。1995年、愛知芸術劇場での「愛の妙薬」でデビュー後、イタリア各地で「セヴィリアの理髪師」「リゴレット」などで出演を重ね、ハンガリー国立劇場に「ファルスタッフ」「チェネレントラ」で出演。帰国後は藤原歌劇団を中心に活躍。新国立劇場「紫苑物語」(世界初演)、藤原歌劇団「夢遊病の女」「ランスへの旅」「ナヴァラの女」(日本初演)はNHKBSプレミアムで放送された。
2010年頃より指揮の勉強を始め、2015年より星出豊氏に師事し、「ドン・ジョヴァンニ」他8本のオペラを指揮している。
藤原歌劇団団員。モンタニーニオペラ主宰。

◆原田 陽子(Yoko, Harada)
玉川大学芸術学科音楽専攻卒業。第15回新・波の会日本歌曲コンクール入選を機に、(社)日本歌曲振興会に11年間所属し、日本歌曲を学ぶ。音楽教室講師を経て、未就園児~社会人の音楽教室の開講。声楽・ピアノ指導、小学校 合唱指導、女声コーラス指導等、音楽教育に携わる。2018年11月より厚木市において歌を楽しむ「歌笑会」設立。故荒川美代子、井上美紗子、岡野理津子、故鹿又透、各氏に師事。湘南グループ日本のうた・歌・詩、ぐるーぷ天の川、町田シティオペラ協会(オペラ愛好会)、会員。歌笑会代表。

◆西影 星二(Seiji, Nishikage)
名古屋大学医学部卒業。第46回イタリア声楽コンコルソ、ロイヤルティガー国際部門第2位。第15回大阪国際音楽コンクールオペラコースAge-U第2位など国内のコンクールで入賞多数。オペラでは「メリーウィドウ」「愛の妙薬」「椿姫」「リゴレット」「セヴィリアの理髪師」「魔笛」「コジ・ファン・トゥッテ」「ラ・ボエーム」「イル・カンピエッロ」「タイス」「リタ」「不思議の国のアリス」などで主要な役を演じる。モーツァルト「戴冠ミサ」「レクイエム」「大ミサ曲ハ短調」、ベートーヴェン「交響曲第9番」「合唱幻想曲」、C.P.E.バッハ「マニフィカート」、ハイドン「ハルモニーミサ」、ヘンデル「メサイア」、F.スッペ「レクイエム」など宗教曲のソリストも務める。2022年1月には佐渡裕氏指揮「椿姫」でアルフレード役に抜擢され、好評を博した。名古屋大学在学中、その音楽活動による芸術振興の業績を認められ、平成26年度名古屋大学総長顕彰を受賞。新聞などのメディアで「オペラ歌手の医者」などと取り上げられ注目を浴びている。
ブログ:http://ameblo.jp/mr-west-shadow/

◆長崎 裕美(Yumi, Nagasaki)
福島県出身。昭和音楽大学音楽学部声楽学科卒業。卒業時に優等賞受賞。同大学大学院音楽研究科オペラ専攻修了。大学院在学中に昭和音楽大学オペラ「夢遊病の娘」リーザ役でデビュー。卒業後は日本ロッシーニ協会主催「ランスへの旅」をはじめ「ヘンゼルとグレーテル」「ドン・パスクアーレ」「スザンナの秘密」「ラ・ボエーム」など様々なオペラ公演に出演。捻金正雄、岡山廣幸、各氏に師事。Andante音楽教室主宰。現在はフリーで演奏活動をしながら、小学校で合唱指導や厚木市内の公共施設でリトミック教室を行っている。

◆鳥井 俊之(Toshiyuki, Torii)
作曲家、ピアニスト。東京芸術大学卒業、同大学院修了後、スペイン、イタリアにて研鑽を積む。第1回日本モーツァルト音楽コンクールピアノ伴奏部門入選以来、東京芸大、二期会、日生劇場、東京オペラ、東京オペラプロデュース、横浜シティオペラ等で多くのオペラの伴奏を行い、実力・センス抜群の第一級の伴奏ピアニストとして多くの著名な声楽家と共演する。繊細で品格ある演奏には定評があり、その伴奏テクニックは常に高い評価を得ている。作曲家として、オペラ《ねぶり流し物語》《久保田 城下町 押し花の恋》《雪女の恋》、歌曲〈あの日のまんま〉、歌曲集〈薔薇の世界〉、ミュージカル《クニマスの色はいのち色》等の声楽作品がある。伴奏者としての功績により第32回秋田県芸術選奨受賞。東京芸術大学オペラ科講師、二期会オペラ研修所講師、聖霊女子短期大学教授を経て、現在、聖徳大学音楽学部教授。

◆浅野 奈津美(Natsumi, Asano)
東京音楽大学フルート科卒業。同大学研究科修了。東京音楽大学非常勤助手を務める。東京音楽大学給付金留学生としてアメリカ、インディアナ大学に短期留学。NHK洋楽オーディション合格。FM放送「春に巣立つ演奏家たち」「午後のリサイタル」に出演。1996年に茨城、2022年に東京にて「浅野奈津美フルートリサイタル」を開催。木管五重奏において国際芸術連盟オーディション合格、奨励賞受賞。
現在、オーケストラ、室内楽、ソロ活動の傍ら、吹奏楽や個人の後進の指導を行う。梅窓院音楽教室講師。浅野音楽教室主宰。


Interviewer/Writer

◆山本 柊真(Shūma, Yamamoto)
神奈川県出身。
主な関心は、音楽と演劇を中心とした芸術学および教育学、特に18世紀末から19世紀初頭にかけての西洋における美学芸術論および人間形成論。
また、オペラ・声楽作品を中心とした舞台芸術公演において、あらすじや曲目解説の執筆を担当し、音楽史と音楽以外の分野との関連に焦点を当てて論じた解説が評価されている。
他方、舞台監督、ステージマネージャーとして公演に携わるなど、実践の場でも活動している。
現在、昭和音楽大学音楽学部音楽教養コース4年次に特待生として在籍。
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