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本のはなし

読みかけで放置してしまっていた本をちゃんと最後まで読んだ。宮本輝さんの「春の夢」という小説。

私はどちらかといえばほのぼのしていて読み終わるとあったかい気持ちになれるような話が好き。
でもたまにはまだ読んだことのない作家さんの小説も読んでみようかなと思い読み始めた。
今まで読んできた小説はほとんどが序盤で登場人物の設定がわかった上で話が進むものが多かったが、この小説は話が進むにつれて明らかになっていくような感じだった。
私の読解力のなさが悪いのだが、結構難しかった。状況を掴むのに一回、物語を味わうのにもう一回読んでみたくなる様な感じ。すごく内容が深いし、もう一回読んででもちゃんと味わいたくなるようなそんな小説だった。
いいところだけでなく、汚いところも持ち合わせている人間の本質のようなものを書いているような現実的な内容。それ故なのか心に響く言葉がいっぱいあった。

生活のために一生懸命働いている主人公のお母さんが辛かった出来事は腹の中にしまって、滑稽な話だけを微笑まじりに語ったあとのひとこと。

「夜、寝るとき、ああ、しあわせ、と思いながら
蒲団に入れるようになりたいなァ......」

文春文庫 宮本輝「春の夢」より抜粋

私は最近もう今日を終わりにしてしまいたい、と思って布団に入ることが多いからなのか、このセリフにひどく共感を覚えた。
そんな風に今日を終えられたら素敵だと思う。素敵というかなんかとても暖かくて幸福なことかなと。
人生の中でそんな風に思えるような日がなるべくたくさんあってほしいと思った。

とにかく味わい尽くせてないので
「春の夢」もう一回読みたい。おこがましいけど感想みたいなものをいつか書けたらいいな。

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