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あなたは今、おいくつですか?

バーカウンターの向こうから見つめた世界を描いてきた本連載、約9年、469回目の今回が最終回です。42歳で連載をスタートしてから、人生が変わっていったと林伸次さんはいいます。若い頃にやろうとして諦めてしまったことはありますか?
※この記事は2022年7月29日にcakesに掲載されたものです。

毎日書き続けたラブレター

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

僕、23歳の頃、今の妻と付き合ってもらうために、1ヶ月くらいの間毎日妻にラブレターを書いたんですね。そのラブレターで、「僕はいずれすごい作家になるから、あなたが僕と一緒になれば、あなたは将来、貯金通帳の数字が増えていくのを見るだけの生活になる」って宣言したんです。

結局は、バーをやりながら書こうということになって、妻と2人でバーを始めたのですが、毎日忙しくて何にも書けなかったんですね。そしたら妻が、3年おきくらいに、「すごい作家になるんじゃなかったの? 何にも書いてないじゃない」って言うんです。

転機は東日本大震災でした。その頃のこと覚えていますか? 街から人が消えて、売り上げはおもいっきり下がって、どうしようってなったんです。当時Facebookでお店のページを作れるようになったころで、どれくらい宣伝になるかわからないけど、まずbar bossaのページを作ってみて、そこに毎日何かを書いて投稿することにしました。

最初はワインのことや音楽のことを書いていたのですが、全然「いいね」がつきませんでした。途中から考え方を変えて、恋愛のことや飲食店経営のことを書き始めたら、どんどん「いいね」やフォロワーが増えていきました。

note社の代表の加藤貞顕さんは20年くらい前からbar bossaの常連さんで、加藤さんがcakesを立ち上げてしばらくしたころ、突然「林さん、cakesで書きませんか?」って声をかけてくれたんです。とにかくその時期はお店の売り上げが低迷していたので、お金が必要で、「どういう記事を書いたら読まれるか」ということばかり考えて、夢中になって書いたのを覚えています。

このcakesのおかげで、僕の人生は本当に変わりました。書籍は7冊出しましたし、多くのメディアの取材や連載の話がたくさんきました。ほんと、cakesがなかったら今の僕はありません。

今、何かを書くにあたって大切にしている3つのこと

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