見出し画像

自分の顔は自分ではわからない

前回の記事はこちら

今回の「ワイングラスのむこう側」は、インタビューや対談などに出演することも多い林伸次さんだから気付けた、自分の顔のお話です。写真に撮られた自分を見て、違和感をおぼえたことはないですか?

写真に撮られた自分に感じる違和感

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

先日、妻がお出かけ前に、鏡の前でちょっと髪の毛をさわったり、アクセサリーをつけてみたりしているとき、鏡の中の妻の顔を見てしまったんですね。

そしたら鏡の中の妻の顔が、普段の妻の顔と微妙に違うんです。ちょっとおすましと言いますか、わかりますよね、「妻が自分で思うところの可愛い顔」をしているんです。

ほら、人によってあるじゃないですか。ちょっと上目遣いにしたり、ちょっと斜めからの角度にしてみたり、「あれあれ、それいつものあなたの顔じゃないですよ」っていう顔。妻が鏡の中でそういう顔にしていたので、妻に「いつもと顔が違うよ」と言ってみたんです。

そしたら妻が、「あなたも鏡を見てるとき、いつもと顔が違うよ。なんか口がおちょぼ口になってる。ひょっとこみたい」って言うんです。なるほど、確かに僕、鏡で自分の顔を見るとき、おちょぼ口になってしまいます。ひょっとこみたいです。要するに、僕は自分で「口が大きい」とか「唇が分厚い」みたいなコンプレックスを感じていて、鏡の中では「口が小さい自分」とか「唇が薄い自分」というのを作り出して、「カッコいい自分」と思いながら鏡を見ているのでしょう。

メディアでインタビューを受けたり対談したりすると、僕の話している写真も掲載されたりしますよね。そうするとメディアによっては、「林さん、写真チェックされますか?」って言ってくれるんですね。

何十枚もある膨大な僕の写真のデータが送られてきて、それらを僕がチェックして、「うーん、この僕の顔は気に入らないなあ。これはNG」っていう風にチェックをいれると、その写真は「不採用」にしてくれるんです。

でもですね、多くの編集者さんから聞くのが、「本人がNGにする写真って、一番その人らしい表情のものが多くて、あれを捨てるのもったいないなあっていつも思うんですよ。そして本人が『これがいい』って選ぶのって、一番その人らしくない表情にとぼしいぼんやりした写真なんです」という話なんです。

ここから先は

1,343字 / 1画像

通常会員

¥980 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?