見出し画像

北欧ヴィンテージとの出会い

ごく稀に、美しいものを目の当たりにした時、全身に電撃が走ることがある。
かつてラドゥ・ルプーの生演奏が、京都四条通の景色が、ルメールの色使いがそうであって、直近ではある焼き物がそれに似た感動を与えてくれた。

アルミニアは元々国内向けの商品や、近隣国への輸出品を手掛けていたデンマークのローカルメーカー。
それがロイヤルコペンハーゲン陶磁器工場との買収合併で名を改め、1889年のパリ万博でグランプリを受賞するまでは、どうやら世界的な注目とは程遠かったみたいだ。

ただ世間様の評価はともかく、私の好みはとことんマイナー志向らしい。
気になったのは5〜60年代、アルミニアの最後を淡々と飾った後期の作品たち。
その中でも特に私を釘付けにしたのは、アンニー・ジェプセンがデザインし、1962年から生産された「Thule」シリーズ。
古代から北極海の島々を意味する言葉で、その名にふさわしい青と白、ダークトープの調和は、まるで氷河と岩石に覆われた浄化の海そのものである。

色の組み合わせは保ちながらも、同シリーズで多種多様な模様を展開している点も非常に興味深い。
どことなくアジア情緒を感じさせるその佇まいは、過去ロイヤルコペンハーゲンがジャポニズムに傾倒され、日本の美意識やテーマを取り入れた作品とは明らかに異なるオーラを纏っている。
純粋に感覚のみで捉えた、「空想の東洋」とでも言うべきだろうか。

ロイヤルコペンハーゲンの黄金時代を支えたニルス・トーソンの50年代作「Marselis」も最近やたらと目のいくシリーズの一つ。
青、白、茶系のトリコロールで構成された「Thule」に比べ、「Marselis」は緑、黄などの程よくトーンダウンされた単色カラーリングが特徴的で、シンプルな柄が素朴で愛らしい。

合併後も独立した商号の元、生産され続けてきたアルミニアマークの商品は、1969年終に「ロイヤルコペンハーゲンデンマーク陶磁器」で統一され、惜しくもその歴史の幕を下ろした。
半世紀以上も前に命脈が途絶えた故、情報も現存する作品の数も比較的少ない訳なのだが、それが余計収集意欲を掻き立てる。

次はいつ、どこで出会えるか分からないけど、
しみじみとしたこの古き良き感動を、今後も長らく味わっていきたい。

この記事が参加している募集

このデザインが好き

私のコレクション

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?