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かく大学失敗学部 とりあえず一歩

先日、宮城県角田市にあるかくだ田園ホールを会場に「かく大学祭」が行われた。角田市生涯学習課が担当する市民大学「かく大学」の受講生による成果発表会だ。市内外から150名ほどが集まった当日は、特別ゲストにアジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文さんを招き、トークやライブも行われ大いに盛り上がった。私はかく大学内に設けられた計4つある学部の内、失敗学部のディレクターを勤めた。失敗学部は、とにかくにやりたいことを片っ端から実践し、失敗から学ぶというストロングスタイルを貫いている。

前年度まで実施していたかく大学をさらに発展させるためにビジネスなり、社会活動なり、生涯学習なり具体的な行動に移す人材の育成に焦点を当てた。裏を返せば、プラン止まりの参加者も多く、なかなか実行に移れないケースが散見されたことが学部設立の理由の一つでもある。角田市の担当者から前年度までの取り組みを一通り聞いて「失敗学部」の提案をした。失敗する行為を評価軸におけば、チャレンジしてうまくいってもいかなくても評価される。チャレンジすることへのハードルも少し下がる。

ただ、「失敗」が冠に付くとちょっと後ろ向きに聞こえるし、参加者も集まらなさそうと感じていたため、提案しても通らないだろうと思っいた。ところが意外にも担当者も乗り気になってくれて、数ヵ月後にはかく大学のプログラムの一つとして失敗学部の設立が決まった。

失敗学部には6名の受講生を迎え入れ、全3回の講座と前述のかく大祭での展示を行った。

まずはディレクターの私から事例を交えつつ、物事にチャレンジする上でのポイントを簡単に説明。その後、参加者全員にA4ノートを配布し、縦に4分割して「チャレンジ」「結果」「要因」「学び」の項目をつくり、失敗ノートの作成に取り掛かる。プログラム期間内にチャレンジしたいことを付箋1枚に付き1つ記入、とにかくたくさん出してもらった。それを個人の主観で何となくチャレンジしやすい順にノートの左端に貼る。次回までにとりあえず付箋に貼ってもらったことを実践してもらうことにした。

失敗学部の受講生たち

2ヶ月後の2回目は、チャレンジしたことを共有してもらう。できたこと、できなかったこと、やってみたけどうまくいかなかったことを話す。参加者同士でアドバイスしたり、教訓を得ていく。特にできなかったことや失敗したことを話すのは気が進まないものだが、失敗学部は全員同じチャレンジャーであり失敗者なので比較的気楽に話ができる。それぞれ共有を終え、学びを得た受講生は、新たなチャレンジを付箋に書き込みノートに追加。次回までできなかったことにチャレンジしてもらう。

自分で気づくことが大事

さらに3ヶ月後の最終回も2回目と同様、各自のチャレンジを振り返り、ノートをまとめた。3回目ともなると受講生のマインドやまとう空気も初回から比べるとだいぶ良くなっている。他の受講生の行動に触発されて自分で挙げたチャレンジに前向きにトライしている。苦悩はしているが、出てくる言葉はどこか前向きだ。

身近なことからチャレンジ

先日実施した「かく大祭」では、受講生の失敗ノートをすべてコピーして会場の一角に展示した。受講生のチャレンジと苦悩、そして、そこから得た学びがよくわかる。来場者からもフィードバックをもらうために、付箋を用意して失敗ノートへのコメントを集めた。

じっくり目を通す人たち
コメントも寄せられた


参加した受講生の声は以下の通り(一部抜粋)。

「挑戦と失敗を通して趣味を見つける事ができ、人との交流を通して色々な考え方がある事に気づいた」
「普段は仕事と家庭だけの生活でしたが、失敗学部で、みなさんに出会えて本当に楽しかったです。いろいろな想いや考えを聞かせていただき、前向きなエネルギーやパワーを感じました。」
「失敗まで辿り着けたら、もはやそれはひとつの「成功」なのではないか、とまで思えたり。それほど新たな一歩を踏み出すまでに言い訳を重ねる自分や、軽やかに失敗できる理想の生き方に気づかされました。」
「講師の桃生さんと初めてお会いしたときに『ただただやるだけ。』という言葉に衝撃を受けました。やらないで悶々としてるより行動した方が楽しいという経験が学部を通してより明確になりました。」
「ノートに書いて振り返りをしてみたりして、失敗失敗と言うけれど、成功につながっているので、もっと自信を持って行動しようと思いました。」

本学部のポイントは何を達成したかではなく、行動する癖をつけること。
行動力がつけばとりあえず状況は変わる。行動しなければ何も得られないまま時が過ぎる。仮に行動した結果、最初のスタート地点に戻ってしまっても、最初からスタート地点で動かずにいる人とは経験値が違う。とりあえず自分の足で一歩を踏み出すこと。一歩踏み出してしまえば、次の一歩が見えてくる。

今年はじめての取り組みとなった失敗学部だが、失敗学部のそのものも失敗の連続である。思うように参加者が集まらなかったり、失敗ノートの改善も必要だ。来年度の予定は決まっていないが、失敗学部もチャレンジを続けていきたい。

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