幼少期の話。5■浮遊感とらしさ。

結局そのあと、ことはトントンと進み、
スクールカーストに囚われた彼女たちに
さよならを言うことも無く、私は受験先を後にした。

数日後、クラスメイトの何人かから謝罪の手紙や泣きながらの電話がかかってきた。
「助けたかったけど、小学校で標的にされてたのがトラウマで助けられなかった」
「あいつらに逆らったら終わりやけん口出せんかった」などなど、、

あの頃は「あ、そう」くらいにしか
受け止められなかった。けど時間が経つにつれ、

(そりゃーそうだよねー、守ったら自分に来るもんねぇ、お姉ちゃんの二の舞やん、そんなの。それなら守られなくてよかったんかもだなぁ。みんな賢かったよ)なんて思った。13歳の私は悟りの境地にいた。

と同時に、正義がちょっとわからなくなった。
『困っている人がいたら助けてあげましょう。』
とかいう言葉も。

困っているのに助けたって、助けてもらえることは100%じゃないのにね、なんでかなぁ、でもほっとけなかったりするよね。損だなぁ

なんて思ったりもしていた。

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1月も下旬に差し掛かり、

幼馴染たちが通う、公立中学校に戻ってきた。

受験先の制服しかまだ持っていなかった私は
指定だったPコートを羽織って校長室に挨拶に行き、教室を確認に行った。

「えー!!ひなこやんー!!」

そうやって駆け寄ってきたのは幼稚園の時のクラスメイトでサバサバ系女子のmちゃん

「え!転校してくると!?わー!騒がしくなりそうやねー」

と彼女はニコッと笑いながら私の背中をバシバシと叩いていた。

私は受験先で友達、がよく分からなくなっていたから、そのmちゃんのあっけらかんさが心地よく、また不思議な感覚だった。

昔の私にとっては日常、でもこの1年で私にはそのありきたりな日常らしきものがなかったからただただ分からずに、あはは、と笑い返すしかできなかった。

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「まーほとんどの人が小学校とかで一緒やっただろうから分かるだろうけど、転校生の藤野ね、仲良くしてやって」

担任のY先生がそうみんなに紹介する。
転校生なんて立場をこの私が経験するなんて、と不思議な感覚。ましてや幼稚園や小学校(4年の時新しく小学校ができて移動したりもあったが、その前のクラスメイトも含めて)の友達がクラスの3/4,知らないのはほんのひと握りだった。

「ひなこーーーーー元気してたー!!」
「いや、藤野おらんなと思ってたら受験したって聞いてなるほどと思ったのに、お前帰ってくるんかーい」
「殆ど知り合いの中での転校生の気分はいかか?笑」

なんて茶化されながらも
隣の席は小3、4でよく遊んでたK太。
周りも小学校から仲良しのCちゃん、そして初めましてだけどかなりの勢いで仲良くなったS奈。
そして6年まで同じクラスのYに、その仲良しのP。
わいのわいのと仲良しの渦に巻き込まれ、
いったのであった。

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そんな中、私には気になることがあったのだ。
それは仲良しグループでもあり、一応彼氏、という立場でもあったS君の存在。

S君は小3から片想いして、片想いしてやっと小6で付き合った初恋の人だったから、学校が離れても好きだったし、会えない間も好きだったし、とにかく好きだったんだけど(笑)

転校してきて一切話は愚か連絡すらしていない。
当時はまだPHSすらない時代。
私は通学や母との連絡等もあった為、姉のついで、くらいでポケベルを持っていたけど
当時は殆ど誰も持っていなかったから
話しかけに行くしか無かった。

彼は隣のクラスだったけど、全然関わりは愚かかとも見ることがなく過ごしていたが、ある時私が廊下側最前列、Sくんが隣のクラスの廊下側最後列な時があり、
壁の姿見越しに彼が見える毎日になった。

ところが彼はことある事に
「ばーか」「うるさい」みたいに口パクしてはドアを閉めてきた。

正直ショックだった。
後にそれは思春期の照れ隠しだった、すまんかった、と本人から謝罪される訳だが、
納得いかずに真正面からぶつかった私は
そこで失恋することになった。
1年生も終わりが近づく頃だった。

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放課後の教室で隠れてポロポロ泣いていた私。
とそこへ
S奈、Y、Pがやってくる。

「ちょっと…ひなどうした…どうしたの…」

振られたことを話す私
「はぁぁ?」と怒るS奈
Yは付き合いだした時も同じクラスだったので驚いていた。
その時、教卓の横に座ってめそめそしていた私の横にPが「でもさ!」と座った。

「恥ずかしくてもなんだったとしても、それで悲しい思いさせてくるならさ、そんなのもう終わりでいいんじゃね?
少なくともお前はSを好きやったんやろ?それを嫌な思い出にして終わる必要はなくない?めっちゃ好きやったなー?で良くない?
藤野のいい所はさ、俺もYもS奈も分かっとるしさ!
わかるやつが分かっとるならお前はお前らしく、今まで通りそのまんまでいいんじゃねーの?」

そう言って肩をポンポン!と叩いたかと思うと
「な?」とニヤッと笑った。

びっくりした。

何がびっくりしたかって?

そう、何を隠そう、
その言葉に人間不信になっていた私は励まされ、
そしてその言葉をきっかけに、
私はPに一目惚れしてしまったのである(笑)

青天の霹靂とはこのことである()

いや、違うかもしれないが、

少なくとも、私が、私らしくいてもいいのか、と
思い直すきっかけになったことは事実で、
私はこの言葉に励まされ、そして、救われてしまったのだ。

中学1年生のP恐るべし、、(笑)

いじめられ、信じていた彼氏にも捨てられた私は
この後信じられないくらい、友達に恵まれた青春を謳歌することになるのであった。

つかの間の休息ではあったが、それはまだもう少し先の話。

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