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徹底したデータドリブン企業でデザイナーがUXリサーチを推進する理由

Web事業を展開している企業では、顧客利用の流れを体験として捉えて、体験向上のためのUXデザインについて、非デザイナーの間でもここ数年で関心が急ピッチで広がっています。

しかし、いざUXデザインを始めようとすれば、多くの企業では最初の一歩についての不安や、社内にいるステークホルダーの理解の違いにより、UXの重要性が分かっていても、思い描いていたほど定着しないことがあります。

モノタロウのUI/UXデザイングループでは、ECサイト (monotaro.com) のUIやプロモーションメールのデザインに加えて、より深い顧客理解を促すリサーチ、またはサービス価値を高めるためのUXデザインといった多岐にわたる役割を担っています。

今回はUI/UXデザイングループのケビンさんと浅越さんのお二人に、社内から立ち上げたモノタロウのUXの取り組みについてお話を伺いました。

UXに挑む背景

大規模B2B向けECサイトあるモノタロウでUX需要が高まった背景について教えてください。

ケビンさん:私たちデザイナーは、まだ存在しない機能や新しく作るユーザとの接点について、企画書に載る言葉だけでなく、ワイヤーからビジュアルやUIの細かい表現まで「具体化」して提案できる力が求められる仕事をしています。特にここ数年思うのは、様々な提案があったときに、 何を根拠に整理して、どのような条件で意思決定するかということがすごく重要な課題です。

企業によって意思決定の風土は異なりますが、モノタロウでは、かなり前からデータドリブンなカルチャーが根付いており、意思決定にあたって「誰の意見なのか」よりも、「どのような根拠があるか」が重視されています。サイトの利便性をどのように良くしていくか検討する時に、ABテストによる仮説検証や、ユーザの行動データをはじめとした大規模な定量データ分析に基づく改善のサイクルは、私が入社する前から確立できていました。

一方で、ユーザに商品は見つけやすいか、操作はしやすいか、他に何か不満はあるかといった情報は、定量データからヒントを得ることができても、どうしても疑問をクリアにできないことが多いです。例えば離脱の多いページは特定しやすいが、なぜそうなっているかの因果関係が、なかなか定量データだけで読み取りづらい特徴があります。仮説の精度を上げて、サイトの利便性を向上し続けるためには、なるべくユーザ目線でどこに課題があるのかを理解して、様々な視点を持つユーザの体験をより詳しく把握する必要があります。そのためには定量データだけでなく、お客様の声、認知や感情といった定性的なデータも集める必要があり、それにピッタリなのがUXの取り組みだと思いました。

お客様の声を集める手段として、アンケートやコールセンターからの情報などもあると思いますが。

ケビンさん:アンケートは比較的実施しやすく、モノタロウでも頻繁に使うツールですが、アンケートの設計によって一人単位の体験を把握することは難しいので、「アンケートさえやっていればUXがある程度できる」という考え方は不十分に思います。また、モノタロウのカスタマーサポート部門からの情報はとても貴重です。大小問わず顧客の課題や疑問を共有するプロセスが以前からあり、共有される情報は実際にサイトの開発や改善に活用しています。ですが、主にお問い合わせとして入ってくる情報なので、こちらから調べに行く調査設計まではできていないですし、例えばサイトの利用体験が終わった後の問い合わせだと、それまでの複雑な体験が要約されてしまいがちです。そこで、特定の課題や、利用が終わった後だけでなくお客様がサイトを利用している最中に出てくる課題も集めて、お客様全体の体験についてもっと能動的に詳しく調べたいと考え、ユーザリサーチを取り入れることにしました。

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いきなりUXデザイン全般よりも、ユーザリサーチをあえて選んだのですね。

ケビンさん: UXデザインには数え切れないほどの手法がありますが、私たちがこれから優先するプロジェクトや、改善案の良し悪しについて、なるべくエビデンスに基づいて意思決定したいと考えました。使いまわしが効くペルソナは作ってもいいかもしれませんが、それがしっかりとした根拠に基づいていなければならないですし、個人の憶測や様々なバイアスを補正するためにも、UXリサーチを通じて定性エビデンスを集めて分析することが最優先でした。

ちなみに、ユーザ訪問は以前から実施していたので、ユーザとお話しさせていただく機会を設けてヒアリングする取り組みは一定できていました。しかし、ユーザとの会話から得られた情報を案件に活かすまでの流れがあまり明確になっておらず、新しいデザインの検証もほとんどできていませんでした。UXはこのユーザ訪問とヒアリングの延長線よりも、「定性データ」を集めるためのリサーチという括りでアプローチをした方が、あとでデータを分析しやすくなりますし、意思決定の材料として取り入れやすくなります。

これを始めた頃の着地点は、「定量データを補う定性データ」のように、健康サプリみたいなイメージでしたが、少しずつそれぞれのデータの役割について関係者の理解が深まると、知りたいことによって定量と定性を使い分けられるようになりました。

導入事例を生むユーザテスト

ユーザリサーチはどのように始めたのでしょうか?

浅越さん:はじめに社内のデザイナーが有志で集まって社外のイベントや講習を受けることから始めました。そこで学んだことを社内に持ち帰り、社内で疑似的なワークショップを開催するなど学んだことをグループや部門に広げていく取り組みを進めました。それに加えて体系的な学習や外部のUXコンサルタントの方とも協力し、半年ほどかけてUXデザインやユーザリサーチに対する期待や手段の整理を行いました。学んだ知識やリサーチ手法を実務に生かす方法として、まず自分(デザイナー)が担当しているデザイン改善案の仮説検証やユーザビリティ上の課題を浮かび上がらせることができる「ユーザテスト」から始めるのがいいと思いました。

ユーザテストの流れを教えてください。

浅越さん:ユーザテストは、課題を洗い出す調査と新しいデザインをUXの観点で検証する調査の2種類を行っています。何を明らかにしたいかという課題の整理をした後に調査設計を行い、被験者のリクルーティングと実際に被験者にサービスを利用してもらいレビューを頂戴しています。
ユーザビリティ業界の第一人者であるヤコブ・ニールセン博士が論文内で提唱していますが、調査の規模については一般的な目安として、5人に対して定性調査をすれば、85%くらいの課題を見つけることができるだろうと言われていて、それに基づき、月4-5回程度のペースで案件ごとに調査設計から、リクルーティング、実施、レポートまでを一通りデザイナーが実施しています。

ユーザテストから見えてきた課題は?

浅越さん:まず取り組んだことはモバイルサイトのユーザビリティ調査です。5名の被験者の方に実際にスマホサイトで商品の検索から購入までの一連の流れを操作していただき、その中で難しかったことや分からなかったこと、逆にできたことや良かったことをコメントいただいて確認するといったテストを実施しました。

そこで把握できたのは商品の出荷目安に関する課題と、カテゴリ検索の体験がスムーズでないことでした。商品の出荷目安について、以前に出ていたアイコンに気づきにくい、気づいても理解しにくいユーザも複数いました。もう一つは、上のカテゴリから下って商品を見つけるのが難しく、そこで躓いた方がいました。

それらの課題をどうやって解決したのでしょうか?

浅越さん:商品の出荷目安が分かり難いという課題に対して、以前のものは文言のライティングも含め表示が分かりにくく、アイコンの配置もよくないことがテスト結果でわかっていました。そこで、まずはアイコンの改善を画像単位で行いました。配送というのが分かるようにトラックのアイコンをつけるなどですね。全てABテストを実施して、新しいアイコンが受注増にも繋がる結果が得られたので、全て新しいアイコンに変更を行いました。

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ケビンさん:カテゴリ検索について、これまではカテゴリを選択すると様々な商品が出ていて、小さいボタンで絞り込みを行うようになっていました。データサイエンティストの方がカテゴリ検索の行動を分析したときに、「ある程度、下のカテゴリーまでドリルダウンしないと、探している商品にたどり着きにくい」といったデータが出ていました。

当初、私たちはカテゴリ検索は商品を絞り込むという操作の中にあると考えていましたが、そうではなく、ある程度下っていかないと探している商品が見つからないことがわかりました。
ですので、改善案はカテゴリー指定をより優先して、第3カテゴリーまではナビゲーションを重視するUIに変えて、商品を見せる前に、ユーザが関連度の高いカテゴリーを選びやすい画面設計に変更しました。

改善前のUIは、サイドパネルから毎回カテゴリを選択し直さないといけないようになっていたのですが、改善後はタップ3回で欲しい商品のあるカテゴリに遷移するようになり、その画面に行けば必要な検索結果が得られるようになりました。この変更によって、ブラウザあたりの注文率も収益も改善し体験の改善から良い効果を得ることができました。

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インタビューリサーチの取り組み

ユーザテスト以外に取り組んでいることは?

ケビンさん:ユーザテスト以外にも直接ユーザにインタビューをさせていただくこともあります。例えば、モノタロウでは大企業のお客様向けに購買管理システムを提供していますが、新しい機能の開発を進める上で、どのような機能セットだとお客様が使いやすいのかについて、実際にお客様のもとに訪問しインタビューをさせていただきました。経理や購買管理など、機能によって、利用する人の専門スキルが求められますし、デザイナーに分からないことも当然ありますので、インタビューからユーザ像の解像度を上げることが狙いです。ユーザのメンタルモデルや業務プロセスなど私たちデザイナーが想像することが難しい部分は、定性調査を重ねることで知ることができて、ユーザの本当のニーズが分かるようになりました。

ただ、定性調査はどうしても対象が限定されてしまうので、ユーザのニーズをもとに改善のための仮説を立てて、定量データを分析し検証を行い、その結果を実際の開発案件に活用しています。

他にも、デザインスプリントを実施したり、リサーチから得た知見を早くAdobe XDのプロトタイプで検証したりしています。

実際にユーザに会って記憶に残るエピソードは?

浅越さん:これまで多くの企業様や個人事業主様にユーザインタビューを実施させていただきましたが、共通して皆さんそれぞれご自身の仕事に誇りを持って取り組んでおられることが伝わってきました。インタビューをさせていただいた方の多くが、モノタロウを仕事のパートナーとして愛着を持って利用してくださっており、だからこそ、率直に意見を仰っていただけることが多かったです。事前に改善してほしいポイントを紙にまとめてくださっていたり、改善案を作ってきてくださったり、お客様からも強い想いが伝わってきて、私たちも襟を正して仕事に取り組んでいかないといけないと感じています。

また、インタビューはお客様の会社や職場にお伺いするのですが、実際の仕事現場の様子を拝見させていただくこともあり、話が弾んで思わず長居してしまうこともありました。インタビューの後にメールで追加の確認や、追加のインタビューをお願いさせていただくこともありますが、皆様に快く対応いただけており良好な関係が築けていると実感しています。

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お客様と向き合い、デザインの力で終わりなきサービス改善

今後、デザイナー組織としてどのようにUXと向き合うのでしょうか?

浅越さん:新型コロナウィルス感染拡大の影響で実際にお客様の現場に訪問させていただくことが難しくなりましたが、ユーザドリブンなUXの取り組みを止めてはいけないと思っています。リモート環境でのリサーチをトライアンドエラーで行っていく中で、意思決定に寄与できる調査結果をアウトプットできるように取り組んでいる最中です。

ケビンさん:少し広い話になりますが、モノタロウの事業が成長して、拡大することによってできることが増えて、ユーザと社会との関わり方にも変化が起きているように思います。その事実を踏まえて、私たちのブランドやサイトデザインも含め、より高い満足度と確かな定着を実現するためにお客様とのさまざまなタッチポイントを考え直す時期になってきています。デザインの力で刷新していくフェーズがこの先数年に渡って続いていくため、UXデザインの活動も重視してモノタロウのサービスやサイトを良くしていくことがより一層求められるようになります。また、EC業界の環境は日々競合も増えていますし、常に進化しているので、モノタロウを使った体験とその価値を高める取り組みは欠かせません。常にユーザ体験の向上を目指して、一緒に働くデザイナーにも加わっていただきその取り組みを拡大していきたいと思っています。

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