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Web〜在庫データまで。新卒2年目データサイエンティストが語る、幅広いデータ活用経験とビジネスに与えるインパクト

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。

今回は2021年に新卒で入社し、データサイエンティストとして2年目ですでに2つの部署をご経験されているJさんに、それぞれの部署での仕事の違いやご自身の就職活動についてインタビューしました。

入社から2年で検索アルゴリズム・商品発注ロジック改善などのビジネスのコアとなるテーマに取り組む

―現在はどのような業務を担当されていますか?
在庫商品の需要予測をしています。モノタロウでは在庫している商品が今後どのくらいお客様から注文されるかを予測し、それを元にサプライヤーに対していつ・いくつ発注するかを決めています。私はそのプロセスの運用や改善に取り組んでいます。
現在所属しているサプライチェーン・マネジメント部門には2022年10月に異動したばかりなので、今はサプライチェーンの現状把握を行いながら、現在の業務で扱うデータの理解も深めています。
サプライチェーン・マネジメント部門では、需要予測データ以外にも多様なデータがあり、
例えば、商品の情報として倉庫に保管する際に必要な寸法や重さ、
納期情報として発注から弊社倉庫までの日数などのデータも扱っています。

―取り組まれている「プロセスの運用や改善」について、具体的にどんな改善をされておられるのですか。
簡単に言うと、需要予測の精度を上げて、サプライヤーへの発注を適切に行えるようにすることですね。
モノタロウは、お客様への納期を短縮するために51万点以上の商品を在庫しているのですが、在庫コストを抑えながら限られたスペースで在庫点数を増やすには、各商品の需要を正確に予測し、それに合わせて商品を仕入れる必要があります。
現在は機械学習を活用して需要予測を行なっていますが、多くの商品は注文されるタイミングと数量の両方ともばらつきが大きく、一般的にも予測が難しいと考えられています。
また、適切な発注のためには需要予測値と共に各倉庫のキャパシティ(空間、人員配置など)を考慮する必要があるので、需要予測と発注プロセスの運用・改善は更に難しくなります。
データサイエンスの考え方を十分に活かすことで、今までよりも大きい改善が得られると期待しています。

―サプライチェーン・マネジメント部門に異動される前はどのような業務に携わっておられましたか?
CXマネジメント部門では、モノタロウのECサイトを利用するお客様が、見ている商品・カテゴリと関連する検索キーワードを推薦し、お客様の検索をサポートするアルゴリズム開発に努めていました。
お客様が検索を行う意図、サイトでの行動パターン、商品とキーワードの関係について関連データから考察することができ、大変勉強になりました。

(※CX(Customer Experience)マネジメント部門:お客様に対して検索等の多様な接点で、データを使い欲しいものがすぐに見つかるなどの最適な体験を届ける部門)

―2つの部門をご経験されて、部門毎での仕事で違いを感じられた点はありますか?
CXマネジメント部門ではECサイトに関連するデータを分析し、お客様への見せ方を工夫するので、お客様とECサイトについての理解がとても重要でした。
一方、サプライチェーン・マネジメント部門ではモノの動きについてのデータを分析し、その動かし方の最適化に焦点が当てられていると感じています。
EC側、物流側で目線は違いますが、様々なデータを分析して、目標達成のための施策を考案するというデータサイエンティストとしての仕事はそれほど変わらないと感じています。

―これまでご経験された業務の中で最もインパクトが大きかったと感じる内容を教えて下さい
CXマネジメント部門での業務で、GoogleやYahooといった検索エンジンからモノタロウの商品ページへアクセスしたお客様に、関連キーワードを表示するというプロジェクトがありました。
私はその中で、商品と関連するキーワードの抽出を担当していました。
モノタロウサイトで行った比較テストの結果、関連キーワードを表示したお客様1人当たりの購入額が約0.6%上昇したことが確認できました。

―異なる部門を経験することで感じたモノタロウの仕事ならではの面白みはどんなところでしょうか?
異動前からも感じていますが、モノタロウでは異なる部門間で協力しながら仕事を進めることが多く、新しいことを知る機会が非常に多いと思います。
ECサイトに表示するためのデータを作る場合でも、それをどう表示するかについてサイト開発やデザインの方々と議論しましたし、マーケティング部門の方々とデータの仕様などについてやり取りすることもありました。
異動後には物流や商品採用関連の方々との協力が必要不可欠であることを実感しました。
どの部署とより緊密に協力しているかについて部署間の差はあると思いますが、私は比較的、異動前後でその重なりが少なく、ほぼ別世界に来たように感じることもありました。しかし異動前後の世界間の繋がりが分かってくると、毎日新しいことを知る面白みを感じるようになりました。

ECサイトからモノの需要データまで、幅広い領域のデータを収集し活用できる土台が整っているからこそ、そうした発見や気付きに繋がってくるのではないかと思います。

―先程の「異なる部署と協力することで新しいことを知る機会」によって、実際どんな気づきが得られたのでしょうか
CXマネジメント部門では、エンジニアやUIUXデザインの方々と連携することで、自分が作成したデータがどのような過程を経てサイトに表示されるのか、そしてその見せ方は何を考慮して工夫されているかについて知ることができました。
サプライチェーン・マネジメント部門では、顧客にモノが届くまでのプロセスを最適化するための関連施策が物流倉庫に与える影響について知ることができました。物流倉庫については新卒研修を通じて色々分かったつもりでいたのですが、サプライチェーン・マネジメントの目線から見ることで更に広く、かつ深く理解できるようになったと思っています。

―今後、どんな業務に取り組んでみたいですか?
EC側と物流側の繋がりについては異動前にはあまり意識できず、異動してやっと少し分かってきた感じなので、その繋がりを明確にできる仕事にチャレンジしたいと思っています。
ECサイトで観測できるお客様の行動から商品の売れ方を予測したり、逆に物流の調子を見ながらマーケティングの施策を調整することができるといいですね。

博士課程に進んだ後、スタートした就職活動

―大学での研究テーマについて教えてください。
大学では信号処理の研究をしていて、オンライン学習、最適化といった理論寄りのテーマに取り組んでいました。
例を挙げれば、望ましい性質を持つ解を得る方法の一つとして、その性質に対応する複数の関数の和を最適化することがあります。
私はスパースな解を得るために用いられる関数が、適切な解となるための条件を考えたり、条件を満たすためのハイパーパラメータ調整を減らす方法を考えたりしていました。

―当時、卒業後はどんなお仕事に就きたいと思われていましたか?
大学での研究職を目指して博士課程まで進学しました。
実際に進学してみて、大学の先生は授業も持ちますし、研究室メンバーの研究を取りまとめると同時に、自分自身の研究も並行して行わないといけないというマルチタスクであると実感し大学の先生は向いていないと思ったので、就職活動を始めました。(入社した今では段々複数業務の並行に慣れてきています)
就職活動を始めた時は、自分が研究者として成長できるところを探しました。自分の専門分野の研究が活発にされていて、成果が出れば学会発表もさせてくれるところを探すため、自分が参加した学会で発表している企業や国の研究所について主に調べていました。

―最終的に、モノタロウへ入社を決めた理由を教えてください
たまたま良い縁があってモノタロウでインターンシップをさせていただいたのですが、ビッグデータに触れ、かつ自分の専門性が活かせるという嬉しさを感じました。
実際のインターンでのタスクはキーワード検索回数の予測だったのですが、プログラミングスキルが弱かったのでとても簡単な手法を実装してみました。一旦予測をしてみたら検索回数がマイナスになるものもあったりして、精度は悪かったです。それでもモノタロウで良く検索されるキーワードとしてどんなものがあるのか、またそれらの検索回数はどのような傾向を持つのかについて知ることができましたし、このような知見を成果発表会で共有して興味を持ってもらえたので、個人的には大満足でした。
また、何よりもインターンシップにおいて社員の皆さんに色々サポートをいただいたときに、技術がすごいのはもちろん、いい人たちが集まっていると感じ社内の雰囲気が素敵だったので、ここに入社できたらいいなぁと思いました。

―一緒にお仕事をされる方々はどのような専門性を持った方々が多いと感じますか?
データサイエンティストにも様々な専門性を持つ人々がいますが、その中では言語処理や情報工学を専門とする人々が多いと感じました。私は信号処理や電子工学が専門性として近いですし、研究テーマも理論寄りだったので、組織の中では珍しいバックグラウンドだと思います。

―ちなみに、研究テーマが組織の中で珍しいバックグラウンドだったとのことですが実際に入社してそれ故に苦労された点はありますか?
知らない単語を聞くことはしばしばありましたが、その場で聞いたらすぐ教えてもらえたので、特に苦労したとは言えないかもしれません。研究テーマとは関係なく苦労した点としては、膨大な量のデータの扱い方です。データを扱う上でメモリ不足になってプログラムの実行が終わらないことは最近までもたくさんありました。その度に使用メモリを節約するようにプログラムを作り直していて、メモリのことは今は常に注意しています。

―一方でこれまでの仕事において学生時代の経験から業務に活かされたと感じることはありますか。
アルゴリズムを構想したり、新しいことについて知った時に論理的な整合性を追求し、体系的な考え方ができるのは学生時代にたくさん論文に接したおかげだと思っています。

―入社してから身についたこと、成長したと感じる要素があれば教えてください。
一言でいうと、視野が広くなりました。
モノタロウのデータサイエンティストとして重要視されている考え方として、
自分が今やっていることについて、ただやるのではなく、それを通じて何がしたいのか、その裏にはどのような背景があるのかについてより意識するようになりました
また、今やっていることと目標の間にどのような過程があって、誰と関わるようになるのかについても少しずつわかるようになったかと思います。
博士課程まで進む中で視野を広げておければ良かったのですが、仕事を通じてやっとできるようになって幸いとも言えますね。

―ありがとうございました!