三島流!ナレーションの音作り術 2021
いままでVIDEO SALON(玄光社)での連載や、その連載に大幅な加筆修正を加えて再構成した書籍『映像制作のための 自宅で整音テクニック』などでもナレーション処理については書いてきましたが、基本的に映像制作者や音声初心者に向けて書いていたので、突っ込んだことはあえて避けてきました。特にコンプの操作なんかは、アタックやリリースの設定などハードルの高い部分もあるので、「早め」「遅め」「耳で聴いて判断」など、ちょっと突き放し気味だったことは否めません(汗)。さすがにそれでは申し訳ないので(苦笑)、補習的な意味合いを込めて、中〜上級者向けの記事を書いておこうと思った次第です。というワケで、僕のナレーションの音作りの一連を詳細にお伝えしていきます!かなりボリューミーかつスパルタなので、心して読んでください(笑)。
なお、サンプル音声に関しては、VIDEO SALON編集部のご好意により、本誌2020年12月号のプライベートスタジオ特集でコンデンサーマイク比較の記事を書いた時に僕がスタジオで収録したナレーションを使わせていただきます。皆さんの練習用にDL可にしておきますので、ご自分の環境で処理にトライしてみてください!
◉モニタリング環境の重要性
実際の作業に入る前に、モニタリング環境を整えるのが前提条件です!なぜなら、スピーカーやヘッドフォンから聞こえてくる音を聴きながら作業するので、それらの音自体が整ってないと、判断に支障をきたすからです。趣味でやってる人ならとやかく言いませんが、仕事としてお金をもらってる人なら、この辺はちゃんとしましょう!特に映像制作の人の場合、音響機器にはお金かけづらいと思います。けど、音の処理まで含めて仕事としてやりたいんだったら、スピーカーやヘッドフォン、オーディオI/Fなどはある程度整えるべきだと思います。もちろん、機材の操作や判断する耳も鍛えなくてはならないので、生半可な気持ちでは出来ないことは覚悟してください。そのガッツがないなら、潔くプロに頼むべきです。むしろ、そのガッツを映像のクオリティアップに費やし、音は専門家に投げてしまう方が、全体としてのクオリティアップに繋がるし、業界的にも健全な仕事のスタイルだと思います。
そのプロのエンジニアの多くはスピーカーをメインに使って作業しますが、その場合、部屋の反響なども調整しなくてはならないので、自宅等でやるには少々敷居が高くなります。ヘッドフォンを使えば部屋の影響を受けないで済むのですが、数多あるヘッドフォンの中でこういった仕事に使えるなと思えるものは、そう多くはありません(あくまで僕がここ20年くらいで気になるものを片っ端から試聴してきた経験上の話ですがw)。加えて、聞こえ方もスピーカーとは異なるので、その差異を埋める音作りをするには経験を積む必要があります(ヘッドフォンは聴こえ過ぎるので、許容範囲のノイズなどに対しても不必要に神経質になりがち)。
いずれにせよ、なるべくフラットな周波数特性(高域から低域まで過不足なく、バランス良く鳴っている状態)のスピーカーやヘッドフォンを使い、それでいろんな音を聴いて、どういう音が適切な音なのか、自分の中に基準を作ることから始めなければなりません。じゃないと、どこをどういじったらいいいのか分からないですからね。具体的にどんな機材を選べばいいのかは、ここでは詳しく言及しません。それだけでも相当な文字数になってしまうので(苦笑)。まぁでも、ナレーターさんなどもこの記事を楽しみにしてくださってるようなので、手軽なものとして僕が愛用してるヘッドフォンを簡単にご紹介しておきますね♪
JVC HA-MX10-B
ビクタースタジオで開発された業務用モニターヘッドフォン。
SONY MDR-900STのビクター版。
個人的には900STよりこちらの方が好き。
低域はそこそこ、中高域あたりに少しキャラがあって、
声の帯域がすごく聴き取りやすい。
録音時のモニター、ノイズチェック用としての資質が高いので、
ここ10年くらい愛用している。
AKG K371-Y3
このBluetoothなしのモデルはディスコンで流通在庫限りっぽかったので、
つい最近買い足したもの(笑)
一番の特徴は超低域の聴き取りやすさで、これは素晴らしい!
上記MX10に比べるとレンジが低域方向に広く、それでいてバランスも良いので
ミックスのチェックにも向く。
全体的に近い音で、中域も引っ込まずに声が聴き取りやすい。
良い意味でいままでのAKGサウンドとは別物。
これで1.2万円ほどとは……BTなしが欲しい人はお急ぎを!(笑)
◉ナレーション録音について
本来、仕事としてのナレーション録音は、ちゃんとしたブースのあるスタジオで録るのが望ましいですが、このご時世、自宅などで録らざるを得ないケースも増えていることでしょう。そういう場合は、部屋の反響や環境ノイズを抑える工夫が絶対に必要です。遮音や吸音パネルの設置、簡易ブースの導入など音響的対策のほか、なるべくマイクに近づくとか、コンデンサーマイクではなくダイナミックマイクを使うというのも手です。ただし、マイクに近づくと近接効果が発生して低域が強調されるし、ダイナミックマイクだとコンデンサーマイクのような繊細でクリアな質感では録れないので、それらに対する後処理が必要になってきます。求めるクオリティを考慮して慎重に判断しましょう。また、そういった自宅収録をする場合は、スタジオ収録よりもそれなりにクオリティが劣るということをクライアントに説明して了承を得ておくことも重要です。
実際の録り方などについては、拙著MA本や他にも専門書籍が発売されているので、それらを参照してください(笑)。
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