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最近、現場復帰させたプラグイン 【コンプ編】

プラグインエフェクトの進歩は目覚ましく、毎年たくさんの製品がリリースされてますよね。マシンの性能向上に伴い、プラグインの性能や音質も確実に上がってきてます。けど、正直、新製品を全部追ってはいられないし、僕は性分的にも気に入ったものを長く使いたい派。とは言え、新しいものもデモ使用して気に入ったものは少数ですが買ってます。そんな感じで20年くらいやってると、中には存在すら忘れてたプラグインが出てきます(苦笑)。そういうものの中には、今でも良いな、使えるなと思えるものもあったりするんですよね。今回は、ここ半年くらいで現場復帰させたプラグインのコンプをいくつかご紹介しましょう!

・MacDSP CompressorBank CB101

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McDSPは、Pro Toolsがスタジオで使われ始めた頃からある老舗のメーカーですね。グリーンのパネルが特徴的で、見ればすぐに分かります。このCompressorBankも当時から続いてる定番プラグイン。バージョンが上がって見た目などがアップデートされてますが、基本は変わってません。ちなみに、CB101に低域がコンプに引っかからないようにするためのフィルターを追加したCB202、それに1バンドのスタティック/ダイナミックEQを追加したCB303もあり、これらがセットでCompressorBankとなります。

で、これがなぜ定番だったかというと、当時のDAW付属のコンプは音を計算的に処理をするデジタルコンプがほとんど。その挙動がカッチリしすぎててアナログに慣れた人には馴染めなかったんですね。音質的にも当時のデジタル音声は今ほど良くなかったので、そういう面でも不満があったのでしょう。そこに登場したMcDSPの製品は、操作感や音にアナログフィールを与えてくれるという触れ込みで人気を博しました。僕が導入したのは割と遅めですが、10年くらい前まではFilterBank(EQ)も含めて結構使ってたと記憶してます。

ここでいうアナログフィールというのは、良い意味でファジー(曖昧)な部分があるということ。アナログのハードウェアは動作にムラが出るというのを再現してるわけです。このCompressorBank特有のパラメーターとして「BITE」というのがありますが、これは圧縮漏れの再現に関するものだそうで、まさにアナログの曖昧さを象徴するような機能ですね。

久しぶりに使ってみたところ、操作性も良くて使いやすいなと。何より音が素直なところが、いまとなってはとてもありがたい(笑)。最近のプラグインはアナログ実機を再現したものが多く、昔よりもアナログ的な質感は得やすいんですが、それが逆に合わないことも多々あって。僕は音楽制作以外にも映像音声のMAを仕事にしてますが、ナレーションの処理なんかには、あまりキャラの濃いプラグインは合わないんですね。例えば、ARTURIA Comp FET-76OVERLOUD GEM Comp LAなんかの質感は好きなんですが、スタジオ録りのナレーションなんかに使ってみると歪っぽく聞こえちゃって外しちゃうことが多かったんです(苦笑)。とは言え、GEM Comp LAのLA-3Aは抜けが良いのでぬるい音には結構使ってますが、「もっと音が素直で、なおかつアナログ的な操作性のやつなかったかなぁ」と、プラグインリストを漁ってみたところ、これの存在を思い出し、試してみたら「イイじゃん!」ってなったというワケです(笑)。いまでも十分に使える万能コンプだと思います!

ARTURIA Comp FET-76

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OVERLOUD GEM Comp LA

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余談ですが、CompressorBankのプリセットの中には実在のハードウェアを再現したものがいくつかあります。正直、音が似てるというよりは、その機材の挙動に似せているという感じでしょうか。いまはもっと忠実に再現されたプラグインがたくさんあるので、特定機種の音を求めるならそっちを使った方がいいと思いますね(笑)。


・Bomb Factory BF-76

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これもかなり古くからあるプラグインで、いまはPro Toolsに標準で付いてきます。ネーミングや見た目からも分かる通り、1176のエミュレートですね。実は、McDSPよりも先にこちらを再発見して、実際に仕事でも使ってます。

で、どこが良かったのかと言うと、僕が持ってる1176系コンプの中で一番音が地味だったところ(笑)。前述の通り、ARTURIA Comp FET-76はちょっと歪っぽいし、IK MULTIMEDIA T-RackS 5 Black 76は一番派手な印象で。それに比べると、このBF-76は何というかちょうどいい感じ。ハイが削れて少しだけ暗めになるけど、歪っぽくないので使いやすいんです。挙動や操作性も違和感なくて「結構イイじゃん!」と(笑)。まぁMcDSPの方が音質変化が少ないので、最近はそっちを使うことが多いですが、音が明るすぎるマイクとかの場合にこちらを使うと、わざとらしくなく音が落ち着いていいかもですね。あとはベースとかの低音楽器にも合いそう。

IK MULTIMEDIA T-RackS 5 Black 76

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・WAVES H-Comp

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これは見た目の通りガッツリとアナログ的な歪みが得られるタイプのコンプですが、「ANALOG」ノブをOFFにすると音色変化の少ない素直な音が得られるので、結構万能に使えます。そもそもHシリーズのプラグインはデジタルとアナログのハイブリッドが製品コンセプトなので、さもありなんといった感じですね(笑)。

まず気になるのが前述の「ANALOG」というパラメーター。トランスや真空管、トランジスターなどの音を再現してるようですが、どれがどの音を再現しているのかは分かりません。僕が聴いた感じでは、「1」は中域の低めのところに倍音が乗って太くなる感じ、「2」は中域の高めのところに倍音が乗ってパンチのある感じ、「3」はあからさまに歪みが足されてアグレッシブ、「4」は中高〜高域あたりに真空管のような倍音が乗って明るい感じ……といったところでしょうか。もしナレーションに使うなら「1」か「2」、場合によっては「4」もアリかもしれませんね。「3」は確実にナシです(苦笑)。まぁ録り音が良ければOFFのままでいい気がします。

面白いのは「PUNCH」というパラメーター。文字通り音にパンチ感が出てきます。これをナレーションに使うとですね、音にアタック感が出てくるので滑舌が良くなったように聞こえます!フルテンにしても結構ナチュラルな感じなので、いまいち抜けてこないなという時に使うと良い結果が得られるかもしれませんね。


あとがき

今回はこんな感じで3つのコンプをご紹介しました。どれもリリースからそれなりに経ってるものですが、いまでも十分に使えるものだと思います。結局は、自分がどういう音を求めているかというのが重要なわけであって、それに合わせて機材を選ぶというのは至極当然のことだと思います。新しい製品も良いですが、断捨離がてら、ストレージの肥やし(失礼w)になってるプラグインを改めて使ってみると、新たな発見があるかもしれませんよ?

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