器

                    ゆきひら

 それに名は無く、強いた役割も無い
 花を盛れば花器と言われ
 水を張れば水鉢となった

 それはある日、山に捨てられた
 すると、それは石になり
 周囲の光景に馴染んだが
 時に月明かりのもと
 艶々としていた

 月日が流れると
 底に雨を貯めた
 すると、それは雨水に月を称え 
 周囲の光景を
 一層引き立てた

 それに名は無く、強いた役割もない
 それをどう呼んだらいいか…
 強いて言うなら「器」
 
 そういう「人」になりたい
 そういう「器」に
 わたしはなりたい
 
 
 

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