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超短編小説「記憶媒体」

「お前にとっての最高の料理ってなんだ?」

「最高の料理?」

「これまで食べてきた料理でも、食べてみたい料理でも、なんでもいい。」

「そうだな、やっぱりあれだな。」

「なんだ?」

「母ちゃんの玉子焼きだ。」

「なぜ?」

「そりゃ、うまかったんだ。こどもの頃に食べた玉子焼きが。いつも勉強しろって口うるさかったけどさ、すごくあったかいんだ。大好きだった。」

「結局、料理が最高でもないんだ。誰が作ったか、誰と食べたか、いつ食べたか、どういう状況だったか、料理は記憶する媒体でしかない。味はもちろん、美味しいんだろう、だけど、取り巻く他の要素が大事なわけだ。その要素が最高と言わせてる。」

「小難しいな、とにかく母ちゃんの作った玉子焼きが最高だ。」

「だろうな。」

文:モノコト68
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