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超短編小説

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短い短い、それは短い物語。 より濃い内容を補完するのは、あなたにお任せします。
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#短編

超短編小説「擬人化」

擬人化「月・火・水・木・金・土・日」 月曜日:俺、みんなに嫌われてんねんなー。     月曜日、嫌やわぁとか言われんねん。     憂鬱やわーって。 金曜日:わたし、いいでしょ?     花金よ。みんながわたしのこと待ってるのよ。 火曜日:いいなぁ。僕も月曜日と一緒かも。     まだ、火曜日かって言われるもの。 木曜日:それなら、僕は金曜日と一緒さ。     あと1日で金曜日がくるーって言われるからさ。     最強なのは、土曜日じゃない? 土曜日:そうかな。金曜

超短編小説「すれ違う人」

わたしはひとり。 ひとり、目的地に向かって歩いていた。 比較的、大きな街。 普段、気にも止めなかったこと。 すれ違う人。 人。人。人。 すれ違う人もまた、目的地に向かって歩いているのだろう。 関わることのない人。 目に見えても関わることのない人。 ふと、立ち止まり、携帯に目を移すと、言葉が足早に流れていく。 目に見えなくても関わっている人。 また、目的地に向かって歩き出す。 ひとり、歩いている。 ひとりではないのかもしれない。 もしかして、目の前を

超短編小説「一言」

こんなに想いがあるのに、たくさん伝えたいのに、言葉に発するのは、たった一言。たった一言だ。 (想い)「なんでそんなこと言うんだよ、これまでもそう思ってたってことだろ?ずっとずっと、そう思ってたってことだろ?」 (一言)「わかれよう」 (想い)「まだかよ、行きたいところがあるのに。連絡もないし。」 (一言)「待ってないよ」 (想い)「だって、そんなこと言ったって、違うんだ。そうじゃないから、何もしてないから。」 (一言)「知らない」 (想い)「出会ったころから、ず

超短編小説「痛い」

頭が痛いよ。 お腹が痛いよ。 歯が痛いよ。 目が痛いよ。 肩も痛いよ。 腰も痛いよ。 体中が痛いんだ。 でも、一番痛いのは ココロなんだ。 なによりもココロが痛い。 そう言って君は眠った。 文:モノコト68 Twitter:https://twitter.com/monokoto68 Blog:https://monokoto68.com/about/ Instagram:https://www.instagram.com/monokoto68/

超短編小説「空を飛べるんだ」

電車の中で、出発を待つ。 疲れているのか、本を読むわけでも、スマホをいじるわけでもなく、ただ焦点の合わない景色を眺めていた。 意識もどこかふらふらしているのか、出発のベルは聞こえなかった。 ??? ふと見ると、景色が過ぎ去っていく。 動いているのは、電車ではなく、景色の方だ。 妙な感覚だ。 ??? この感覚、どこかで感じたな。 そうだ。 子供の頃、降りしきる雪を見上げていた。 ずーっと、見上げていると、雪の中に飛び込んでいくような感覚に襲われた。 いつ

超短編小説「透明」

「もし、超能力が使えるとしたら、透明になれればいいな。」 「透明。いいな。なんでも出来そうだ。」 「そうでしょ。」 「ああ。なんでもできる。」 「わくわくする。」 「透明になって何がしたいんだ?」 「鬼ご。」 「??」 「鬼ごっこをしたら、絶対に捕まんないし、絶対に捕まえられる。すごいことだよ。」 小学生の息子は、無邪気に語った。 透明になれたら・・・大人の邪(よこしま)な心が情けない。 今日も平和だ。 文:モノコト68 Twitter:https:/

超短編小説「会話」

調子が良くない。 いつもと違う身体に違和感を覚える。 風邪というわけでもないだろう。 頭では、まだまだ、いける、大丈夫だと言い聞かせている。 そんなときは自分の身体に聞いてみる。 会話をするのだ。 「どこがどう調子が悪いんだ?」 「昨日の自分とは、どう違うんだ?」 「動けるのか?」 「悪くなるのか?すぐに回復しそうか?」 これまでの経験と比較し、答えを探す。 「まだ、なんとかなるが、無理をすれば壊れる。」 「時間の問題だ。わかるだろ?」 「早く、手を

超短編小説「画面の向こう側」

画面の向こう側では、聞いてもいないし、求めてもいないが、活発な文字が流れては消えていく。 「おまえ、変わったな」 画面の向こう側では、励まし、励まされ、勇気づけてくれる仲間がいた。 「なんか、良いことでもあったのか?」 画面の向こう側では、落ち込み、うなだれ、見えなくなり、しばらくして、元気な姿を見せた。 「おまえ、さみしくないのか?」 画面の向こう側では、有り余るほどの人生があった。文字の中に魂が込められていた。 「たまには、顔だせよ。」 画面の向こう側が、

超短編小説「物語のはじまり」

今日も昨日と同じ今日の始まりだ。明日もきっと同じだろう。白い仮面の向こう側に見える景色は、いつも同じ・・・はずだった。​ ーーーーー 君が描いた未来と僕が思う未来は、違っていた。当たり前だった未来が、それぞれの未来へと変わった。5月にしては暑いあの日から。 ーーーーー 隠れろ!早くっ! サングラスに黒い帽子という、いかにもなやつらに、追いかけられている。なぜ、こうなってしまったのか。どこで間違えたのか、考えてる余裕はなかった。 ーーーーー この景色、最高だろ?覚