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新幹線の窓の冷たさに毎回少しびっくりする

新幹線はいつも自由席にする。
当たり前に座れない時が結構あるので指定席にしておけば…と思うこともあるけど、その逆もある。
発車ギリギリの新幹線にとりあえず乗りこみ、自由席の号車番号を調べる。自分がいるのは指定席の号車だったのでテクテクと通路を進み、進み、進み、進むと人がふっといなくなった。自由席の号車はがらんどうだった。
乗車率5%くらいのさっぱりした車内で周り10シートくらい誰もいない席を選んで座る。
静かな車内でふうと息を吐くと、その静かさに吸い込まれていく。今日はラッキーだ、と思う。

さて、新幹線に乗ってまずすることはスマホの充電。壁際にコンセントを探したが見当たらず、よくよく探していると、肘掛けの先端にコンセントが一口ついていた。最近の新幹線は親切なようだ。
スマホの栄養補給もでき安心したところで、コートを脱いだり、ロールスクリーンを下げたりちょっと上げたり、リクライニングを倒したりする。犬がベッドで眠る前にくるくるその場を回ったり床をほじったりするのと似ている。自分の落ち着くチューニングを合わせる。居心地が整ったところで喉がカラカラなのに気づいたが、走り出した新幹線の中、自販機もないのでどうしようもなかった。気を紛らわせようと、途中まで読んでいたウェブマガジンをスマホで読み始める。
おばあちゃんと孫に焦点を合わせた記事、自分と重ねたり、重ならなかったり、一つの家族の物語に心がひたひたになった。ぎゅっとなる心を持て余して、消化できなくて、窓の外を見やる。この気持ちを消化するのに1日くらいはかかるだろうなと思う。

たくさん車が停まっている場所があるなと思ったらコストコの駐車場だった。
石垣に囲まれた民家の庭。
5歳くらいの男の子と祖父らしき人の間にある柔らかな距離感を見る。
鉄塔を見る、青鈍色の川を見る、集落に点在する墓を見る、風に撫でられている駅のイスを見る。

喉の渇きはいつの間にか忘れていた。

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