走馬灯(第2話)
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私は自分のことを平凡な女子高生だと思っていた。
両親はそろっているし、生意気な弟もいる。別に周りのほかの子と何か特別に違った境遇にあるわけでもない。そのように考えて小学校を通ったし、中学校も通った。だけど、少しずつ、私は自分が周りとは違った種類の人間なのかもしれないと感じるようになっていたのだ。
私はずっと、この世界は死ぬまでの暇つぶしなのだと考えていた。どうせいつか死んでしまうのだから、そこで何かを頑張っても意味が無い。どうせ無くなってしまうのだから、始めから何もしないほうがいい。するだけ無駄なんだ。小学生の物心付いた頃から、世界をそのような場所だと感じていた。自分の周りの子も同じように考えているのだと思っていた。だけど、周りの大人たちが私たちに無邪気なイメージを押し付けているから、それを嫌々演じているだけなのだと。私もそのような考えの元、無邪気な「鈴木有希子」を演じていた。
だけど、周りの子達と接する中で、その考えは少しずつ変わっていった。
周りの子達は本当に無邪気に、その無邪気なイメージを信じているようだった。ちょっとしたくだらないことにも本当に熱くなって言い合いをしていたし、真面目な顔で、こっちが恥ずかしくなるくらい率直に青春について語ったりしていた。私は今までの演技の延長線上でその付き合いを続けていたのだけど、そのような周りの子達の心の中を知るにつれて、ますます自分の中の心が冷めていくのを感じた。
この子達は、何でこんなに熱くなっているのだろう。
不思議ですらあった。
でも、私はいつからそのような考え方をするようになったのだろうか。もともと物心が付いた頃からそのような考え方をするような子供だったのか。それとも、そのような考え方に自分を押し詰めるような何らかの事件が私の小さい頃にあったのだろうか。
そのことを考えると漠然とした不安に襲われた。
私は忘れてはいけない大切なことを忘れてしまっているのではないのだろうか。
頭が割れるような頭痛に襲われる。
これ以上、このことを考えるのが怖くて、いつも私はそこで思考を停止させた。思考を停止させてしまえば、同時に不安や恐怖からも眼をそらせることができた。だけど、不安や恐怖から眼をそらせると同時に、もっと大切なものからも眼をそらせることになるとはその時の私には分かっていなかった。