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無粋者でごめんなさい。

普段なら絶対入らないようなちょっと真面目なカフェに入って、信じられないくらいおいしいガトーショコラを食べた。20年以上日本で(うち2年は関西の都市部で)生きてきて未だにスターバックスやドトールに入ったことがないという程度には喫茶店やカフェに縁が薄いというのに。

何というか、申し訳なさすぎて、帰ってからテーブルマナーの解説動画を思わず見てしまったくらいには無粋者でごめんなさいって思った。

ブラウニーっぽくて、でもフォークで切れるぎりぎりの固さでずっしりしてて、食べたらすごくチョコレートだった。味が濃かった。他のコンビニスイーツとか食べられなくなるんじゃないかって思った。すごく甘いはずなのに全くしつこくない。

GODIVAは高級チョコレートの代名詞である。以前1度だけ食べたことがあるGODIVAのねっとり感は正直苦手で、高級チョコレートってあまり好きじゃないなと思っていたけれど、さすがに視野が狭すぎた。あのうっとうしさというか、あざとさが全然ない。ものすごく上品だった。味の濃密さと上品さは両立しうるのかと本気でびっくりした。

ホイップクリームは味も香りも恐ろしいほどラム酒のそれだった。もともとお酒は苦手ではなかったのと、その後の予定も特になかったのが幸いだった。付け合わせの果物の薄切りのシロップ漬けも甘味と酸味のバランスが完璧で、それとクリームとガトーショコラでくどさがすべて相殺されていた。

ケーキがすごすぎて紅茶の印象がどうしても薄くなってしまったのだが、あれを邪魔しないどころか引き立てているというだけでその非凡さが分かる。派手なソプラノソロとぎりぎりまで抑えたピアノ伴奏の関係のようなものだった。この場合ピアノがどんなに上手でも気に留める人は少ないけれど、わずかばかりの粗があればすぐに気づかれてしまうような難しい橋。

音楽も内装もアンティークで、私の他には老婦人1人だけが静かにケーキと珈琲を召し上がっていた。何というか、テーブルマナーすらガタガタな無粋者でごめんなさいとずっと心の中で唱えていた。

最近でここまで作法が気になったことなんてなかった。自分の呼吸音すらうるさく感じた。

でも味覚は比較的ちゃんとしてるので許して下さい。何あのホイップクリーム。あんなにラム酒を大量に使っているホイップクリームを実家以外で食べたことはなかったし、実家でラム酒を使っているのだってどちらかと言えば酒の方にうるさいからで、甘味の方にそこまでうるさいわけではないからだ。

たまには(そう、あまり財力に余裕があるわけではないので、本当にたまにはになってしまうのだけど)ちゃんとしたカフェでちゃんとしたお茶の時間を取るのも良いものだと思わせてくれた。知らない、禁断ですらある世界を覗いたような心持ちになった。本当にありがとうございました。

本来ならその店で撮った写真を入れるべきかもしれませんが、感動しすぎて撮りそびれました。フォトギャラリーの素敵な写真を使わせて頂きます。

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