チィちゃんのアヒル ー小さなお話
ーーーチリリリン
「あ、チィちゃん」
「ミヨちゃん、あんな、うちお風呂にアヒルを浮かべてん」
「え?ああ、おもちゃの…」
「そんでお湯かけてん」
「う、うん」
「浮いてくるねん」
「うん」
「そんでまたお湯かけてん」
「うん」
「浮いてきよるねん」
「うん…」
「すいません、豚バラ肉を、えーと300グラムください」
「あ、はいすいません。…294グラムでもよろしいでしょうか?はい。…211円のお返しです。ありがとうございました!」
「そんでな、なんべんかけても沈みよらへん。またすぐ上がってくんねん」
「え?…あ、アヒルだっけ?ああ、そうよね」
「なんでなん?」
「なんでかな…」
「なんべん沈めても浮かんでくる。アヒルはええな思てん」
「そ、そうだね」
「でもな、やっぱり思ってん。アヒルもたまには沈んでたいんちゃうん、て」
「…そうか、な?」
「…」
「…」
「ミヨちゃん晩のおかずにコロッケもろてきてな、っておばちゃんが言うとった」
「…それ言いにきたの」
― おしまい ―
読んでくださってありがとうございます!